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戦の終結に向けての相談2
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魔族達が投げ込んだ矢文で聖都ウィルドレルの第一軍は大混乱になった。
俺達から同時攻撃を受け、まともに軍として機能しているのは自分達だけであると知らされたのだから当然だろう。
「私が行って皆を説得してきましょうか?」
「いや、お前みたいなマトモな奴に死なれたりしちゃあこっちが困るんだよ!リーダーになる資質のある奴をむざむざ死地に送れるか!!聖都ウィルドレルの国民にとってもそれは損失だろう?自分の国の人間達のその後を少しは考えてやれ。」
目の前にいる第三軍の司令に俺はそう言い放つ。
魔王が返って来た後にセレナが捕虜として連れ帰って来た第三軍の司令と話をしたのだがなかなかの人物だった。
開口一番に「私はどうなっても良い!私についてきてくれた部下達を私の命でどうか助けて欲しい!」と俺に懇願してきたのだ。
興奮していたので落ち着かせてからよくよく話を聞いていくと、この第三軍の司令は元から国のやり方に疑問を持っていたそうだ。
だが自らは国から雇われている身、それに自分の家族の事を考えると上層部の命令を幾ら自分が疑問に思っても命令を聞くのが軍人の責務だと思っていた俺に語った。
俺は第三軍の司令に「どうしてこの様な事を言う気になったのか?」とそう尋ねると「見捨てる事も出来るのに船から投げ出された部下を数多く助け出してくれた。敵にここまでの温情を掛けてくれる人物が上層部の言う神に背く異端者だとは思えない。」と俺に懇々と自分の心情を説明してくれたのだ。
...セレナにあんまり殺すなって伝えてて良かったぜ!まあ3分の1は助けられなかったがな。
うーん、しかしどうすっか。
下の人間がこっちに靡いてくれたらそこから反乱を起こせそうだが...
「第一軍に居る奴隷達は犯罪奴隷なのか?」
「いえ、おそらく全員が聖都ウィルドレルが他国に侵攻した際、我々に敗北した国々の人間達をベヒモスの餌用に連れてきた者達でしょう。犯罪奴隷は鉱山などに送る労働力にするので餌には使わない筈です。」
心苦しい様子で俺にそう語る。
ふーん、犯罪奴隷じゃねえのなら....
「おい、魔王!今、魔族領では労働力は足りてんのか?」
一緒に同席して話を聞いていた魔王が苦笑を浮かべながら「実のところ全然足りていません。ガレア高地が肥沃すぎて植物の育成が早すぎるのです。...まさか肥沃すぎて困る事になるとは思ってもいませんでしたよ。フォルティーナ殿がこれを聞いて来ると言うことは...」と途中で真顔になり俺が喋るのを待っているようだ。
「たぶんお前の考えている通りだと思うぜ。お前が大丈夫だと思えばだがあちらさんの奴隷達を魔族領で保護しよう。...魔族領の国民に反発が生まれない様に...そうだな、移民と言う形で来る人間は引き受ける事にしよう。」
魔王が腕組みをして深く思考している体勢を取った暫く後に徐に口を開く。
「...そうですね。フォルティーナ殿に会う前の魔族ならば不可能でしたがファメルテウス民主国とクラルフェラン共和国と言う人間達国の支援で困窮から立ち直るきっかけになったのは今の魔族達の中では強く恩に感じています。...労働力になってくれる上に人間が魔族領に住む...より我らは身近な関係になれて良いかもしれません。細かい問題は後々出ては来るのでしょうがそこは私の仕事ですから...うん、大丈夫です!私は良いと思います!!」
おっ、魔王の了承は取れたか...じゃあ
「ほんじゃああちらさんの奴隷達は魔族領で引き取って奴隷から解放しよう。...よっしゃ!あと2日以内に話し合いに乗って来ないのなら即ぶっ潰す!生きたいのなら出てきやがれって矢文を投げ込んでこい!」
「ええ、わかりました。...話し合いの場は何処にしましょうか?」
場所な~。
こっちに来いって言っても確実に嫌がるだろうからな~。
「こっちからあっちの陣地に行くぞ!それなら俺を近くで狙えるチャンスだからアイツ等も乗ってくるんじゃねえか?」
「フォルティーナ殿!それは!!」
魔王が焦った表情で俺の肩を掴んで止めようと頭を左右に振っている。
「あん?何を心配してんだ?テメエは!!お前ら魔族の軍勢を一発で瀕死に追い込んだのは誰だと思ってんだ?しかも今回はヴァランティーヌも万全な状態だし結界の得意なセレナも居るんだ、心配いらねえよ。...どうせベヒモスもついて来るんだろうしよ!」
「そこまで言われると....フォルティーナ殿が危険な状態に陥るのを想像する事が出来ないですね。」
俺にぶっ飛ばされた時の事を思い出したようで魔王が顔から変な汗を流しながらそう言う。
「...フォルティーナ殿が一人で魔族と戦って勝利を納めたという噂話は本当だったのですか!?...御迷惑をお掛けするかも知れないですが私も同行しても宜しいでしょうか?我が国の行く末なのです!是非とも!!」
俺と魔王の会話を聞き、驚きの表情になった後に俺と魔王に詰め寄ってくる。
「うーん、お前は来ねえ方が良いと思うけどな...。まあいいか。ほんじゃあ好きにせいや。」
俺達から同時攻撃を受け、まともに軍として機能しているのは自分達だけであると知らされたのだから当然だろう。
「私が行って皆を説得してきましょうか?」
「いや、お前みたいなマトモな奴に死なれたりしちゃあこっちが困るんだよ!リーダーになる資質のある奴をむざむざ死地に送れるか!!聖都ウィルドレルの国民にとってもそれは損失だろう?自分の国の人間達のその後を少しは考えてやれ。」
目の前にいる第三軍の司令に俺はそう言い放つ。
魔王が返って来た後にセレナが捕虜として連れ帰って来た第三軍の司令と話をしたのだがなかなかの人物だった。
開口一番に「私はどうなっても良い!私についてきてくれた部下達を私の命でどうか助けて欲しい!」と俺に懇願してきたのだ。
興奮していたので落ち着かせてからよくよく話を聞いていくと、この第三軍の司令は元から国のやり方に疑問を持っていたそうだ。
だが自らは国から雇われている身、それに自分の家族の事を考えると上層部の命令を幾ら自分が疑問に思っても命令を聞くのが軍人の責務だと思っていた俺に語った。
俺は第三軍の司令に「どうしてこの様な事を言う気になったのか?」とそう尋ねると「見捨てる事も出来るのに船から投げ出された部下を数多く助け出してくれた。敵にここまでの温情を掛けてくれる人物が上層部の言う神に背く異端者だとは思えない。」と俺に懇々と自分の心情を説明してくれたのだ。
...セレナにあんまり殺すなって伝えてて良かったぜ!まあ3分の1は助けられなかったがな。
うーん、しかしどうすっか。
下の人間がこっちに靡いてくれたらそこから反乱を起こせそうだが...
「第一軍に居る奴隷達は犯罪奴隷なのか?」
「いえ、おそらく全員が聖都ウィルドレルが他国に侵攻した際、我々に敗北した国々の人間達をベヒモスの餌用に連れてきた者達でしょう。犯罪奴隷は鉱山などに送る労働力にするので餌には使わない筈です。」
心苦しい様子で俺にそう語る。
ふーん、犯罪奴隷じゃねえのなら....
「おい、魔王!今、魔族領では労働力は足りてんのか?」
一緒に同席して話を聞いていた魔王が苦笑を浮かべながら「実のところ全然足りていません。ガレア高地が肥沃すぎて植物の育成が早すぎるのです。...まさか肥沃すぎて困る事になるとは思ってもいませんでしたよ。フォルティーナ殿がこれを聞いて来ると言うことは...」と途中で真顔になり俺が喋るのを待っているようだ。
「たぶんお前の考えている通りだと思うぜ。お前が大丈夫だと思えばだがあちらさんの奴隷達を魔族領で保護しよう。...魔族領の国民に反発が生まれない様に...そうだな、移民と言う形で来る人間は引き受ける事にしよう。」
魔王が腕組みをして深く思考している体勢を取った暫く後に徐に口を開く。
「...そうですね。フォルティーナ殿に会う前の魔族ならば不可能でしたがファメルテウス民主国とクラルフェラン共和国と言う人間達国の支援で困窮から立ち直るきっかけになったのは今の魔族達の中では強く恩に感じています。...労働力になってくれる上に人間が魔族領に住む...より我らは身近な関係になれて良いかもしれません。細かい問題は後々出ては来るのでしょうがそこは私の仕事ですから...うん、大丈夫です!私は良いと思います!!」
おっ、魔王の了承は取れたか...じゃあ
「ほんじゃああちらさんの奴隷達は魔族領で引き取って奴隷から解放しよう。...よっしゃ!あと2日以内に話し合いに乗って来ないのなら即ぶっ潰す!生きたいのなら出てきやがれって矢文を投げ込んでこい!」
「ええ、わかりました。...話し合いの場は何処にしましょうか?」
場所な~。
こっちに来いって言っても確実に嫌がるだろうからな~。
「こっちからあっちの陣地に行くぞ!それなら俺を近くで狙えるチャンスだからアイツ等も乗ってくるんじゃねえか?」
「フォルティーナ殿!それは!!」
魔王が焦った表情で俺の肩を掴んで止めようと頭を左右に振っている。
「あん?何を心配してんだ?テメエは!!お前ら魔族の軍勢を一発で瀕死に追い込んだのは誰だと思ってんだ?しかも今回はヴァランティーヌも万全な状態だし結界の得意なセレナも居るんだ、心配いらねえよ。...どうせベヒモスもついて来るんだろうしよ!」
「そこまで言われると....フォルティーナ殿が危険な状態に陥るのを想像する事が出来ないですね。」
俺にぶっ飛ばされた時の事を思い出したようで魔王が顔から変な汗を流しながらそう言う。
「...フォルティーナ殿が一人で魔族と戦って勝利を納めたという噂話は本当だったのですか!?...御迷惑をお掛けするかも知れないですが私も同行しても宜しいでしょうか?我が国の行く末なのです!是非とも!!」
俺と魔王の会話を聞き、驚きの表情になった後に俺と魔王に詰め寄ってくる。
「うーん、お前は来ねえ方が良いと思うけどな...。まあいいか。ほんじゃあ好きにせいや。」
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