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第六章 ゲート

沈黙した煌めきを携えし者

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 コミヒからの報告で二人の王はその晩話し合いとなった。
 一方で目が冴えて眠気もふっ飛んているディラン。逆に横で不思議なくらい静かに眠っている義弟セステオ
 ベッドから身体を起こし、しばし窓から沈黙の森の方向をみつめる。

 フォリー義兄アレックスが姿を消し、時折地面が揺れる現象に不安を抱えていたセステオは余程疲れたのであろう、自身の部屋に戻らずディランにくっついて眠っていた。そのディランが起きても静かに眠っている。

 そういえばルーカスは?

 ディランは上着を羽織ると廊下に出て、二人が消えた場所に向かって歩を進める。

 あいつも眠れてないのかな?それとも疲れ果てて眠っているのかな?

 ・・・・・そして二人は大丈夫何だろうか?

 ん?


 前方の暗闇に人の気配。

 「誰だ?」

 ディランが呟くが人影は静かに佇んでいた。

 髪が黒いことに気付く。

 「え?え?・・・ルーカス?」

 そこにいたのは漆黒の髪に変化していたルーカスであった。

 「どうしたの?ルーカスも眠れないんだね?」

 ディランが話しかけるがルーカスからは一言も返答がない。いや、むしろ表情が虚ろな様子が見られた。

 「ルーカス?」

 再度ディランが声をかけるとやっとルーカスの視線がこちらを向いた。

 「・・・・・・ではない。」

 「え?」

 「は、私の名はルーカスではない。」

 明らかに他の何か・・がルーカスの身体を借りて返答してきた。

 「お前、だ?」

 ディランの顔が険しくなる。

 「私は・・・「ディラン?!」」

 ルーカスの身体を借りたものが話し始めるとほぼ同時にコミヒの声が聞こえた。

 「コミヒ様?!」

 ディランが声の方向を振り返る。

 「また、お前か。気に入らん!」

 コミヒめがけてルーカスの身体から何かが飛ばされた。
 ピシッ!!!

 「・・・痛っ。」「コミヒ様!!」

 コミヒの頬から血が流れ、慌ててディランが傷を癒す。
 ディランが視線をルーカスの方へ向けるとすでにルーカスの姿は消えていた。

 「何なんだよ、これは。」

 ディランは誰に怒っていいのかわからない感情をもて余す。

 「ありがとう。ディラン。それから・・・何故ルーカスが憑かれてるのかしら?この力、記憶にあるわ。過去視した時に攻撃を受けた時と同じと思うの。だとしたら・・・。」

 「ルーカスが憑かれてるって余程のことがないとありえないよ?それに何処へ消えたんだ?」

 「それは・・・わかる。多分だけれど。霊廟よ。過去視した時にみえていたのも霊廟。モヤの本体がいるところ。二人の王の許可が降りたのよ。タイミングがいいのか悪いのか。」

 コミヒの頬からはすでに傷は消えていた。

 「セステオはどうしますか?」

 「今のセステオに用はないと思うわ、あのモヤは。ルーカスを手に入れたとするならばだけどね。」









 ガターン!ドサッ!

 「いっっ・・・痛っ。」

 アレックスは倒れた床から身体を起こす。

 「ちょっとさぁ、石ころ!落ちる場所くらい・・・・え?何、ここ?」

 アレックスは薄暗い空間・・いや、建物の中にいた。周囲を見渡すがフォリーの姿がない。

 「フォリー?!フォリーどこなの?」

 アレックスの声掛けは虚しく響き渡るのみ。

 「ここは・・・・・霊廟?」
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感想 4

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みんなの感想(4件)

2021.08.24 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

御伽夢見
2021.08.24 御伽夢見

ありがとうございます。よろしくお願い致します。

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スパークノークス

お気に入りに登録しました~

御伽夢見
2021.08.18 御伽夢見

ありがとうございます。よろしくお願い致します。

解除
花雨
2021.07.08 花雨

面白かったです

御伽夢見
2021.08.18 御伽夢見

誠に返信遅くなり申し訳ございません。感想、励みになりました。ありがとうございます。

解除

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