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第五章 闇の胎動と2つの王家

隠しておきたかった者 共に歩みたい者②

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 アーロンの妻が2人の夕飯を用意し、運んでくれた。
 アーロンは妻に2人は本日泊まると伝えておいた。

 その肝心の2人といえば、お互い無言で向かい合わせに座った状態。
 アレックスは視線反らせることなくフォリーを見ている。フォリーはフォリーでやや下を向き、たまにちらっとアレックスの顔を見て、小さくため息をついてまたうつむき加減になる。

 用意された夕飯は冷めつつある。

 「ねぇ、君たち。そのにらめっこは君たちなりの喧嘩なのか知らないけど、せっかくうちの奥さんが作ってくれた夕飯が冷めかかってるよ?
私が言うのも何だけど、美味いよ?」

 2人同時にはっとなり、食事に目をむける。

 「申し訳ありません。せっかく奥様がお心配りをしてくださったのに。」

 慌ててフォリーがアーロンに話しかける。

 「本当に申し訳ありません。お心がこもった食事を冷めさせてしまうところでした。
 ありがとうございます。」

 フォリーに続いてアレックスが話す。

 喧嘩なのかよくわからない状態は一旦中断し、2人は食事を始めた。

 食事が終わればまたにらめっこ。
アーロンが湯浴みの声掛けをし、一旦中断。

 結局寝た方がいい時刻となり、診療所の簡易ベッドとソファーでお互い背を向けて横になる。
 アーロンの妻が異性の若者が2人きりはまずいだろうと部屋を用意しようとしたが、にらめっこしていた二人に声がかけにくく、2人は幼馴染とも聞いたため、アーロンも多分大丈夫じゃないかと妻に伝え、それでも念の為とパーテーションを設置した。

 アレックスにとっては幼馴染以上の感情を持っているが、怒っていて現在そんなもの吹き飛んでいる。最も、そんな状況でなくても、恋愛行動を移すとなると奥手人間のため、その手の問題は起きにくい。

 そしてフォリーは何が最善か悩み、寝付けない。でも、隠し事が何かを伝えない限り、アレックスは繰り返し聞いてくるだろう。
 それに、もと居た場所に2人ともすぐ戻れるのかという不安もあった。少なくとも今回は2人とも実体だ。意識体の一部がアーロンのいる世界に来たわけではない。
 それに、何故か静まり返った緑石も気になった。

 一方のアレックス。
怒りよりも不安が強くなってきて、寝付けない。
生きる力をどこかに流しているというのはどういうことか。今まで大丈夫だったのにフォリーが最近体調崩しやすいことは明らかにそれが影響しているのではないのか。
始まったのはいつだ?隣国のクリスタルに触れた後?その体験がフォリーの中の何かを刺激して違った流が起きた?それとも他にも何か?
 その流れは何を産む?何が起きる?
アレックスは最愛を失うかも知れない恐怖を感じ始めていた。


 「・・・フォリー。起きてるよね?
怒らないから教えて。誰にも言いたくないのかもしれないけど。皆に知らせたくないなら俺は言わない。でもフォリーの苦しみを一緒に背負いたい。俺を否定しないで。今更俺に隠し事しないで。」

 アレックスの声が徐々に泣き声に変化してきたことにフォリーは気付いた。
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