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第五章 闇の胎動と2つの王家
アーロンとの再会
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フォリーの眼から大粒の涙がポタポタと落ち始める。そしてコミヒの手を自分の頬から離し、少し後ろに下がる。
その変化に気付いたのは暁の力を従えしルーカス。
「フォ・・」
ドン!!!
ルーカスが名を呼ぼうとしたのとほぼ同時にフォリーから何らかの力が放出される。それは白い光と黒い光が混ざった形でフォリーの身体を湯気のように纏わりついている。
しゃがみ込んだフォリーは自分自身を抱きしめる姿勢で涙を流している。
フォリーの姿が時折透ける様子がみられた。
纏わりついている湯気のようなものがどんどんフォリーの姿を見えにくくする。
「魔力暴走?」
ディランが呟く。
「いいや、違うと思う。」
ルーカスが答える。
「フォリー!!」
アレックスがフォリーに駆け寄ろうとする。
「待ちなさい!アレックス!!」
コミヒが叫ぶ。
制止を聞かず、アレックスはフォリーに触れる。
次の瞬間、大きな光が発生し、光が消えた時には2人の姿は消えていた。
「・・・姉様とアレックス兄上はどこへ行ったの?」
泣きそうな顔でセステオが呟いた。
*
2人は暗い空間にいた。
アレックスは離れないようフォリーの腰を抱きよせている。
静寂が支配したかのような空間。
「・・フォリー、何を思い出したの?あの日森にいた僕の知っていること?」
「・・アレックスは知らない。アレックスが到着する前だもの。
・・・この間貴方を避けるつもりではないのにそんな行動取ったのが何故か今ならわかる・・わかるけど、でも・・。」
フォリーはそれだけ言うと、大きな呼吸を繰り返し、アレックスの優しいオーラに意識を向け、心を落ち着かせようとした。
あの日の森の記憶に繋がる人物を避けたかっただけで拒否のつもりはなかったのだ。
フォリーの頬の涙をアレックスが指で拭う。
「俺はいつでもフォリーの味方だよ。」
「セステオ・・・・・。」
「うん?セステオがどうかした?」
「セステオは・・・ううん、『テオ』はとっくに亡くなっているはずの運命だった・・・あの森の事件の件関係なく、成長できずに命の灯は消えている運命だったの。」
「フォリー?何・・言って?
確かにテオは病弱で、何度も静養が必要になることがあったけど、皆が必死に守っていたでしょう?医師だって寿命の期限は言ってなかったのではないの?それとも本当は西王夫婦は宣告されていたの?
それに今は病弱が嘘のように健康体じゃない。クリスタルから保護された時、既に病の欠片もセステオにはみられなかった。」
「あの悪い人が言ってたの。ううん、黒いモヤがあの人に言わせてたのかもしれない。だから私は嘘だと思ったの。でも魔塔の石が私の希望を否定した。事実だと。」
そんなの、信じない!信じないもん!!
だから叫んだ。認めたくなかった。
アレックスがフォリーの額に優しく口づけ、話を続ける。
「聞いてフォリー。確かに当時それを皆が知れば、ショックで誰もが傷ついたと思う。大人になったテオの姿を見れないかもしれない恐怖は皆が心の奥で抱えていたはずだから。でも、フォリーが、小さな女の子がたった一人で抱え込むものじゃないんだよ。皆もフォリーと一緒に傷付くことを選んだと思う。
第一、クリスタルに閉じ込められたり色々変な事があったけど、結果的に何故か健康体質になっているんだからセステオは。」
「そうね・・・。」
でもごめんなさい。アレックス、本当はそれだけではないの。もう一つ思い出したの。これだけは貴方にも言えない。
もし私が消えることがあったら貴方が耐えられるのか怖くて考えられない・・・。
あの場面の会話には続きがある。続きがあるのよ・・・。
『アレックスとフォリー、向こうへ進んで。』
フォリーの服から声が聞こえる。
「うん?あ、小部屋の緑石?」
アレックスが聞く。フォリーは石を持ったままだった。
『うん。あっち。』
「あっち、ってどっちだよ。」
視線をあちこち動かすと先程は見えなかったのに、微かに光がみえた。
「あの光のこと?」
『アレックス、そう。大丈夫だから向かって。』
2人は顔を見合わせ、手を繋いで緑石の誘導通りに弱い光に向かって歩き始める。
しばらく進むと、突然光が強くなり、2人とも目を閉じる。そして強い光の気配がなくなり、優しいひだまりのような光を感じ、2人は目を開けた。
そこはとても見覚えのある場所だった。
「君達は・・・。」
馴染みのある知らない言葉で話しかけられるが、不思議なことに今も何を言われたのかわかる。
声の方を振り向くと男性が立っていた。2人に驚き、花束を地面にバサっと落としていた。
「久しぶりだね。成長した姿は初めて見るけど、君達はあの子達なんだろう?
私はアーロン。お帰り、小さな友人たち。」
その変化に気付いたのは暁の力を従えしルーカス。
「フォ・・」
ドン!!!
ルーカスが名を呼ぼうとしたのとほぼ同時にフォリーから何らかの力が放出される。それは白い光と黒い光が混ざった形でフォリーの身体を湯気のように纏わりついている。
しゃがみ込んだフォリーは自分自身を抱きしめる姿勢で涙を流している。
フォリーの姿が時折透ける様子がみられた。
纏わりついている湯気のようなものがどんどんフォリーの姿を見えにくくする。
「魔力暴走?」
ディランが呟く。
「いいや、違うと思う。」
ルーカスが答える。
「フォリー!!」
アレックスがフォリーに駆け寄ろうとする。
「待ちなさい!アレックス!!」
コミヒが叫ぶ。
制止を聞かず、アレックスはフォリーに触れる。
次の瞬間、大きな光が発生し、光が消えた時には2人の姿は消えていた。
「・・・姉様とアレックス兄上はどこへ行ったの?」
泣きそうな顔でセステオが呟いた。
*
2人は暗い空間にいた。
アレックスは離れないようフォリーの腰を抱きよせている。
静寂が支配したかのような空間。
「・・フォリー、何を思い出したの?あの日森にいた僕の知っていること?」
「・・アレックスは知らない。アレックスが到着する前だもの。
・・・この間貴方を避けるつもりではないのにそんな行動取ったのが何故か今ならわかる・・わかるけど、でも・・。」
フォリーはそれだけ言うと、大きな呼吸を繰り返し、アレックスの優しいオーラに意識を向け、心を落ち着かせようとした。
あの日の森の記憶に繋がる人物を避けたかっただけで拒否のつもりはなかったのだ。
フォリーの頬の涙をアレックスが指で拭う。
「俺はいつでもフォリーの味方だよ。」
「セステオ・・・・・。」
「うん?セステオがどうかした?」
「セステオは・・・ううん、『テオ』はとっくに亡くなっているはずの運命だった・・・あの森の事件の件関係なく、成長できずに命の灯は消えている運命だったの。」
「フォリー?何・・言って?
確かにテオは病弱で、何度も静養が必要になることがあったけど、皆が必死に守っていたでしょう?医師だって寿命の期限は言ってなかったのではないの?それとも本当は西王夫婦は宣告されていたの?
それに今は病弱が嘘のように健康体じゃない。クリスタルから保護された時、既に病の欠片もセステオにはみられなかった。」
「あの悪い人が言ってたの。ううん、黒いモヤがあの人に言わせてたのかもしれない。だから私は嘘だと思ったの。でも魔塔の石が私の希望を否定した。事実だと。」
そんなの、信じない!信じないもん!!
だから叫んだ。認めたくなかった。
アレックスがフォリーの額に優しく口づけ、話を続ける。
「聞いてフォリー。確かに当時それを皆が知れば、ショックで誰もが傷ついたと思う。大人になったテオの姿を見れないかもしれない恐怖は皆が心の奥で抱えていたはずだから。でも、フォリーが、小さな女の子がたった一人で抱え込むものじゃないんだよ。皆もフォリーと一緒に傷付くことを選んだと思う。
第一、クリスタルに閉じ込められたり色々変な事があったけど、結果的に何故か健康体質になっているんだからセステオは。」
「そうね・・・。」
でもごめんなさい。アレックス、本当はそれだけではないの。もう一つ思い出したの。これだけは貴方にも言えない。
もし私が消えることがあったら貴方が耐えられるのか怖くて考えられない・・・。
あの場面の会話には続きがある。続きがあるのよ・・・。
『アレックスとフォリー、向こうへ進んで。』
フォリーの服から声が聞こえる。
「うん?あ、小部屋の緑石?」
アレックスが聞く。フォリーは石を持ったままだった。
『うん。あっち。』
「あっち、ってどっちだよ。」
視線をあちこち動かすと先程は見えなかったのに、微かに光がみえた。
「あの光のこと?」
『アレックス、そう。大丈夫だから向かって。』
2人は顔を見合わせ、手を繋いで緑石の誘導通りに弱い光に向かって歩き始める。
しばらく進むと、突然光が強くなり、2人とも目を閉じる。そして強い光の気配がなくなり、優しいひだまりのような光を感じ、2人は目を開けた。
そこはとても見覚えのある場所だった。
「君達は・・・。」
馴染みのある知らない言葉で話しかけられるが、不思議なことに今も何を言われたのかわかる。
声の方を振り向くと男性が立っていた。2人に驚き、花束を地面にバサっと落としていた。
「久しぶりだね。成長した姿は初めて見るけど、君達はあの子達なんだろう?
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