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第五章 闇の胎動と2つの王家

コミヒは手段をかえ、ルーカスの暁の力は反応する

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 コミヒがフォリーの様子を見て決心したことは再度、黒いモヤを探る事。前回、頬から血を流す事態が起きた。今回は黒いモヤの出処には焦点を当てない。別の角度で隠された何かを調べようと考えた。別の角度・・・つまり、フォリー自身の過去に焦点をあてる。沈黙の森で何があったかの過去は視ている。今回は、フォリーがどんな言動をとったのかについて目標を定める。

 問題は・・・フォリーがそれを許すかどうか。
 急がなくてはならないような気がする。自分の残された時間のことではない。何かが動き出す前に急がなくてはという強迫観念。
 そう、今と昔の止まっていた運命がどちらも動き出してるかのよう・・・・

 
           *


 「こんにちは、フォリー。今お話しても大丈夫かしら?」

 ピアスにコミヒからの連絡が入る。

 「こんにちは。お手紙でもなく、ピアスを介しての連絡をコミヒ様がしてくるなんて珍しいですね。」

 「そうね。貴方は今1人?」

 「はい。部屋にいます。元気ですよ?でも、倒れた事でみんなが大人しくしてなさいって。
 私、倒れた時の事を覚えてないので、気になるんです。でも、教えてもらえない。コミヒ様もその場にいたはずですよね?あの後何があったのかやはりコミヒ様も教えてはくれないのでしょうか?」

 「・・・その件なんだけど、貴方が嫌でなければ、沈黙の森の出来事があった時の貴方・・について過去視をしたいの。貴方に断らずに勝手に行ったところでたかが知れてる。でも。もし貴方が一緒に波長合わせてくれれば・・あの時の事を思い浮かべた状態でみせてくれれば、曖昧な部分も視えるかと思ってね・・・。」

 「?。構いませんよ。だって過去は消えない。思い出すと今も恐怖や悲しさや焦りが蘇ってきます。でも、なかった事にはできないじゃないですか。何かの謎が解けるなら・・・。」

 「そう。そうね、貴方は本来前向きな子。でもね、倒れた時の貴方はむしろ逆だったの。知ることに否定の方向だったの。だから、許可を求めてるの。」

 「・・逆?申し訳ありません。わからない・・・・・。」

 「いいのよ。それだけ辛い事を貴方は当時味わったということ。もう一度聞くけど、いいのかしら・・・・・・?」

 「はい。」

 「このまま行うわ。私に意識を向けて。辛いかもなんてもう聞かない。人形みたいになるほど辛くて当然・・な事だったのだもの。」


         *


 結局、過去視は無駄に終わった。フォリー本人は協力してるが、どうしても特定の場面は視えない。本人が当時を思い出してる中での過去視なら普段の過去視よりはるかに鮮明に視えるはずだった。実際、過去行った時に視えなかった場面もチラチラ視えた。だが、幼いフォリーが何かに驚いた顔をした後からバサっと何も視えなくなる。その場面に集中してみるが、何度やっても視えない。フォリーは協力していても、無意識下で拒否している部分がある。

 何に・・驚いたの?
 何があったの?

 再度手段を変えねばならなかった。勿論、まだ手段はあった。セステオだ。少なくとも石に取り込まれる前に何かあったと思われる。

 だが、セステオ自身、記憶がかなり曖昧。漠然としている状態だ。ましてや当時3歳。

 でも、コミヒは実行する気であった。

 セステオなら、耐えられる・・・・・。長い間閉じ込められ、救出された後、自分の年齢と実際の年齢が違う事実も、幼い頃の友達や兄達が記憶していた姿より成長している事実も受け入れた。甘えん坊だったセステオが泣くことなく、それを受け入れた。

 コミヒはセステオの2人の父王に話しを持っていくことにした。


          *


 ルーカスは何とか復活した。
フォリーがあの日見たものはコミヒの言うとおり、悲惨だった。


 幼い子どもがあんな悲惨なものをみせられたら・・いや、実際にフォリーはその場面を生で見ているんだ。

 狂ってもおかしくないのに、人形のようになって、自力で戻ってきた。

 あの子は強い。弱くて強い。強くて弱い。

 何故あの日にテオは森へ行ったのか・・
いや・・・・・行かされたのか?

 偶然フォリーが気付いたとはいえ、何故周りにいた者たちは気付けなかったのか・・・

 ルーカスは無償に妹の顔をみたくなった。
ルーカスが自室に行った後、妹が倒れたという話はルーカスには伝えられてなかった。
 ルーカスは復活するまで自室で過ごしていた。
 そんな時に不安にさせる事を伝えないように指示が出ていたのだった。

 そこで初めてルーカスは気付く。自分が不調で休むときや病気の時、必ずフォリーはルーカスの部屋に顔を出す。だが、今回は無い。フォリー自身が絡む内容なだけに、顔を出しにくかったのか?だが、兄妹喧嘩した時でさえ、不調なら心配して顔を出してきた妹・・・
 何か起きたか、それとも急な役目でも入ったのか?

 不安は余計に妹の顔を見たくさせる。

ルーカスは自室を出た。すると扉の側でジョーンズが静かに立っていた。

 「そろそろ復活する頃かと思いまして。」

 「心配かけてすまなかった。何か用か?」

 「その前に、どちらへ向かおうとされてます?」

 「フォリーのところに・・・何かあったのか?」

 「実はルーカスが休んだ後、フォリーが倒れた。」

 ジョーンズが幼馴染の口調となった。

 「・・何故?」

 「その場にいたけど、コミヒ様から沈黙の森での事で他に何か知ってるのではないかと聞かれ、倒れた。」

 「何か知ってる?」

 「テオとクリスタルの関係の事だと・・・
あ、フォリーは倒れた時の事は覚えてないぞ。
一見、元気だ。外へ行きたくてうずうずしてるだろうがな。」

 ルーカスはフォリーの部屋に向かって歩き出した。

          *

 「フォリー、俺だ。入るぞ。」

 ルーカスの姿をみて、フォリーはホッとした。

 「お兄様。大丈夫ですか?あの・・気持ち悪くない?」

 「いつまでも凹んでる訳にはいかないよ。お前、倒れたんだって?」

 「はい。でも、何故なのかわからないし、直前の事を覚えてないんです。」

 「そうか、それは大変だっ・・・」

 話しかけながら妹の頰に手を触れかけた時、ルーカスはそれ・・に気付いた。

 何だ、この闇は?

 誰でも影の部分はあるし、それぞれ各自で心のバランスを取っている。
 でも、いつものフォリーの状態ではない。

 何で急にバランスがおかしくなっている?

 それに、フォリーの闇に隠れてもうひとつ闇が隠れている。これはだ。

 暁の王子は自身の湧き出た怒り・・を飲み込んだ。
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