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第四章 緑石の力に潜む意思

監視という名の深い愛

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 大地の姫が元の髪の色を取り戻したという発表はすぐに国民や国外、あちこちに伝わった。そしてまた、空側の第ニ王子も本来の力を取り戻したことも伝えられた。
 
 喜びがティラード国に広がる中、王子達の姿をみかける者はなく、何かあって、2王家が慎重になっていることは皆容易に想像できた。



           *



 「やっほー、カイルス。」

 東の屋敷にアーバスが訪れた。

 「やっほー・・・って、いやいやいや、お前どうしたの?顔が泣きそうだけど?フォリーはどうなんだ?」

 東王の書斎に連れてきたジョシュアが説明をする。

 「西のお館様、先程到着されていたようなのですが、モーセの子が気がついて、服をクチバシで引っ張って、甘えていたようです。」

 「甘えてたって・・・・・いくら幼鳥とはいえ、あの馬鹿力。俺が困る。」

 西王が愚痴をこぼす。

 「そもそもあの子保護したのが私の兄で、しかも側に姫様が居たわけですが。2人の匂いが貴方様から感じられたのではないでしょうか。」

 「ジョシュア・・・お前、やはりジョーンズの弟だな。」

 西王がため息をつく。

 「今更何を。」

 ジョシュアが乾いた笑いをする。

 「で、遊びに来た訳だはなさそうだが?親友よ?」

 東王が突っ込む。

 

           *



 「え?ステラが?」

 東王が驚きの声をあげる。

 「そうなんだ。今までにあんな様子はなかった。とにかくフォリーが屋敷か城の、どこに居るのかわからないとなると、不安がって姿を探す。妊娠中だから心が不安定なのはわかるが、それだけじゃなさそうだ。妊娠中でも教鞭に立つと言っていたが、あの様子では休みが終わっても学校に向かわせずしばらくは休ませて、代理の講師を頼もうと思う。」

 「フォリーは?」

 「母親の様子に少し驚いてる。もっともフォリーも泣きたしたりして落ち着かないからこいつも休ませる。その間は家庭教師を呼ぶ。アレックスは?」

 「あいつは・・・いや、あいつも残念ながら休ませる予定。目を覚ましたら自宅に戻っていた事実に一瞬固まっていたが、フォリーの事が気になったようで、“西の屋敷に戻る”と言い出して、とりあえずディランが説教して抑え込んだ。自分のことを解決してからにしろ!って怒られてたよ。どのみち学校休ませるから、あいつのフォリーと一緒に登校計画は延期だな。何で今更一緒に登校なのか知らんが。こっちも家庭教師依頼だな。」



           *



 「フォリーの様子はどうなの?」

 王妃の質問に侍女のジュリエッタが答える。

 「ソファーで泣きながら目を覚まされ、側にいたジョーンズが自室に戻るよう声をかけ、付き添い、今ハーブティーを飲ませてるようです。」

 「そう。自室にいるのね。」

ステラは娘の部屋に向かった。

 ステラが部屋に入ると、フォリーが確かにジョーンズとお茶をしていた。

 「お母様?どうかされましたか?」

 フォリーが母親に質問すると、ステラは娘の側に寄り、そっと抱きしめる。

 「お母様?」

 ステラは娘の頬に手を添える。

 「涙を思い出したお嬢さん、側にお母様がいるからね?勿論お父様もお兄様も。他の皆も。」

 「はい。わかってます。大丈夫ですよ、お母様。見ての通り、私は人形みたいにはなってません。」

 やたらと不安がる母親に娘は優しく微笑む。ステラは再度娘を抱きしめる。その手が僅かに震えている。
 ステラが話す。

 「あなたのお母様は心配症になってしまったようだわ。フォリーはここに居るのに、何を不安になっているのか、フォリーもお母様にびっくりよね。」

 ステラが退室すると、ジョーンズがフォリーに声をかけ、ステラの後を追う。

 「奥方様、どうなさったのです?まるで監視してるかのようにフォリー様の所在を何度も確認して。」

 「ジョーンズ・・・あの子、いきなり居なくなったりしないわよね?ルーカスも、テオも、ディランもアレックスも。フォリーは大丈夫よね?」

 ジョーンズは大丈夫と声をかけたものの、妊娠による不安定さだけではなさそうなその様子に、首を傾けるのであった。

 一方のアレックスもまた、ある意味監視されていた。急に戻った多い魔力が時折暴発する。この瞳特有の幼い頃と違い、周囲から受ける刺激には普通に対応できるのだが、力の感覚が上手く掴めず、同等の魔力量かそれ以上の者が付き添い、抑え込む形になっていた。必然的に役目は父親と兄に。これが予測できたからこそ、気絶してる間に東へ連れ戻したのであった。
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