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第三章 植物という名の命 石という名の子供

進め!(どこに向かってる?)

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 遅めのお茶の時間を楽しもうとした時にその知らせは入ってきた。

 「姫様、多分、姫様のお客様で合ってるとは思うのですが・・・。」

 お茶菓子を運びつつ困ったように侍女が声をかける。
 「?・・多分?・・・・私の、お客様で合っている?」

 フォリーが目をパチパチさせながら聞き返す。

 侍女がルーカスの様子をビクビクとチラ見しながら話を続ける。

 「今、屋敷ではなく、城の入り口のところにお客様がいらっしゃるのですが、『髪の毛真っ白な偽物姫を呼びなさい!』と。」

 「あ“?今何と言った?」

案の定、ルーカスの声が低くなる。

 「偽物姫って・・・ちょっと待って、ディラン。どこへ行くつもり?」

 アレックスが声をかけ、そそくさとソファーから立ちあがった兄の動きを止める。

 「いや、周りの説明もきかず、事実を伝えられても理解せず、未だに思い込みでフォリーの事を酷く言ってるやつ、一人しかいないだろ?」

 そう返事をしながらディランが頭を垂れ、ソファーに座り直す。

 「ディラン、そもそも我が国の人たちでフォリーの事を酷く言ってるやつ、俺は少なくともそんなやつがいると耳にしたことはないぞ。他国は一部では変な噂が広まったが、王家がきちんとその噂を訂正して、髪の色は病で一時的に変わったと伝達してその噂も落ち着いたはずだ。」

 「つまり、ライア壌ね。」

 フォリーが顔を引きつりながら突っ込む。
 
 「・・・姫様、どうなさいます?」

 侍女が困惑した表情で指示を待つ。

 「・・・はーい、とりあえず、顔を出してきますね、ディラン兄。」
 
 「ゔゔっ。」ディランが声をつまらせた。






 「来たわね、白髪女!」

 フォリーは密かにこめかみに怒りマークを浮かびあがらせていたが、冷静な対応を心がけようとした。偉そうにしているがライアは自分よりは年下。挑発に乗ってはいけない。

 「お久しぶりですね。ライアさん。以前もお話したと思いますが、この髪は好きで白髪になった訳ではありません。ある日突然白髪なのですから、ある日突然金髪に戻るかもしれません。私は正真正銘本物のフォルガイアです。ライアさんのご両親からも説明があったのでは?」

 とは言ったものの、戻るかもしれませんではなく、切り離されたチビの自分があっちから完全に本体である自分に帰ってくれば金髪に戻るのは予想できる。

 とりあえずライアの返事を待とうと彼女の顔をみつめる。

 「きーっ!何よ、その表情。自分は綺麗とでも言いたいの?」

 は?何故そういう解釈になるの?

 「貴方はアレックス殿下を手籠めにしてるくせにディラン殿下まで隠さないでよ!私はあの人の妃になるのよ!ひと目見てわかったの!あの人が私の運命なのよ!」

 色々突っ込みたい。まず、『手籠め』なんてしてない。と、いうか、真っ昼間からそんな言葉を大きな声で叫ぶ令嬢って怖いんですが。
そして別にディラン兄様を隠してないというか、むしろ本人自ら隠れてる。そしていつ貴方がディラン兄様の相手になったのか?仲良くしようと互いに努力するならともかく、一方的に威張り倒すようなご令嬢、残念ながら、少なくとも私達側は誰も望んでないけれど。

どれから突っ込もうか考えていると、ライアがフフンと笑い、話を続ける。

 「図星で声も出ないのね。自称本物さん。いえ、貴方が本物だったとして、どれだけ美人だったとしてもね、ディラン殿下に似合うのはこの私!さぁ、早く彼を開放しなさい!せっかく私が会いに来たのに東王のところには不在だなんて。貴方がつるんでるのはわかってるのよ、彼はこっちにいるんでしょう?」

 ある意味読みは鋭いが、その読みを有意義なもの等、別の方向に使ってくれないだろうかとフォリーは残念に思う。

 近くに隠れて聞いていたルーカスが眉をピクピクしながら小声で「あの女、絞めていいか?」と呟き、アレックスが自分も気持ちは同じだけどもう少し様子をみようと返事をしてルーカスを抑え込む。

 「この、影武者女!私の言うことが聞けないの?あなたなんて姫様に似てなければ、位なんて大したことがないんじゃないの?私は他国とはいえ、公爵令嬢よ!殿下とも遠縁よ!」

 「ちょっ・・・痛い。止めてください。痛っ。」

ライアがフォリーの髪を引っ張る。ブチ切れかかった門番が動こうとするがフォリーが目で制すが、

 このっ!
 本気になれば楽に倒せるライアに、フォリーが思わず懲らしめようとする。でも何とか思い留まる。だが、調子づいてライアがさらに強く髪を引っ張りながら

 「顔だけで私に勝ったつもりの勘違い女!」と叫んだ。


 ドカーン!!!!!!!!!!!

 突然物凄い音がライアの真後ろで響いた。
 振り返ると、後方の地面が黒くなっている。誰かが雷撃系の魔法を使ったようにも見えるが、それとは違うことは真っ黒地面の上の空が物語っていた。真っ黒地面の上限定で白い雲の中に雷を呼んだであろう黒い雲が見えた。

 「いい加減にしろよ。お前。変な方向に妄想が育ちすぎだ!」

 ブチ切れかかったディランが姿を見せた。

 憧れの王子の登場に一瞬喜びの笑顔を浮かべたライアだったが、ディランのみたこともない冷たい視線に顔が固まる。

 「昔から何の思い込みか知らないが、フォリーは妹同然の大事な幼なじみだ。偽物でもない。今度何かやらかしたら勘当される可能性もあることを親に言われた事も都合よく忘れたか?ええ?しかも、顔、顔、顔って。コンプレックスの塊か!顔が平凡でもな、何かの魅力があれば好かれる人もいるんだよ!わかってるのかお前は!」

 言葉が徐々に崩れて汚くなってくるディランの様子にもショックを受けたのか、ライアの顔から血の気が引けてきている。
 改めて後方に見える真っ黒地面を見つめる。

 「地面のように真っ黒になりたいか?」

 ライアはフォリーの髪から手を離し、白目を向いて気絶した。

 「はぁー、切れると大気から雷呼んじゃう兄と雹を降らせちゃう弟って・・・ああ、嫌だ。敵に回したくない。」

 ルーカスが呟き、

 「人のこと言えるのかよ?ルーカスも充分ヤバいくせに。」

 とアレックスが言い返した。

 その頃、西王はドガーンの音に、誰?久しぶりにあいつ怒らせたのは?とジョーンズに突っ込んでいた。
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