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第二章 光でも闇でもなく
自らを恐れるな
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「髪の色が・・・。」
「ある程度意識すれば短時間、自らの意思で色を変えられる。普段俺の持ってる力を使ったところで必ず漆黒になるわけではないんだ。ある程度の限界を超えてくると勝手にこの色になる。」
クルーの目の前でルーカスの髪色は白金に戻った。
「確かに光の系統は得意とする。確かに光魔法は俺はコントロールしやすい。でも今、君は何かが違う事に気付いたのでは?」
クルーにルーカスが問いかける。
「心?精神?なんて表現したら良いのかわかりませんが、オーラから触れてはいけない力が隠れてるように感じました。心に直接影響してきそうな。見てくれればわかるけど、僕の腕、鳥肌がたっている。」
クルーは袖をまくり、腕をみせる。
「俺の力は『煌きの能力』と、昔お世話になった師匠に名付けられた。魔法を使う感覚ではない、本能的に使えるような感じだよ。
光には何が寄り添う?」
「光に寄り添う?」クルーが眉をひそめる。
「光につきものは?」
「あ・・・影。影のことですか?」
「そう。そして煌きの能力は人の心への能力。人の心の中にある何かしらの光を強くすることも出来るし、風前の灯火にもできる。その気になれば凶気を、恐怖を招く可能性もある。俺一人で立派な武器になってしまう。こんな力、望んでないのにな。」
「人の光にも闇にも近い・・・ですか?
では僕は?貴方の力と性質が近いとさっき・・。」
クルーは自身の力は思い出せないが、本能が告げていた。人の心に作用するという話を疑わず、『その通り!』と心の中で本能が叫んでいた。すると、あの変な空腹感と嫌悪感が湧いてきた。
急に自分自身に不安を感じ、クルーは両腕で自分自身を抱きしめる。
コミヒが語り始めた。
「貴方のお母様は、周囲の人間の変化にある日気付いた。長男が傷つくような言動をとった者が『悪夢を見た』と翌日寝不足だったり、貴方にとって喜ばしく思う事をしてくれた者がよい夢をみたり。
振り返ってみればそれは、昨日今日始まった事ではないと気付いたそうよ。そして魔法訓練を受ける前の有りがちな無意識な魔力の漏れでもなかったと。
ファイアル国の歴史の中におとぎ話のように語られる話があるわよね?」
「ナイトメア使い・・・。」
「そう、それ。ある日、赤ちゃんの泣き声が聞こえ、ある村人が声の聞こえるほうを探したら、命の尽きた女性と、その傍らに魔導お包みで守られていた赤ちゃんを見つけた。魔導お包みのバリアで獣や魔物は寄り付けないようにされていたことでこの赤ちゃんが女性に大事にされていた事は明確だった。残されたメモで親子と判明。しかも火の鉄鉱石の生まれる岩場の付近での発見。
そして女性が生まれつき人の夢に入り込める力があった事が書かれていた。そして生まれた子供に何か感じたとも。自分が倒れた後の心配と子への愛が震える文字で書かれていた。
報告を受けた王は、その子を保護し自分の娘のように大事に育てた。その成長の中で王妃は娘が悪夢を使う能力があることに気付いた。本人は力を使う自覚があまりなく、コントロールできない。王家は養い姫のためにも秘密にした。しかし、恋愛をし、成就し心が満たされると能力は眠った。王子と養い姫の婚姻は皆に祝福された。」
クルーが続けた。
「でも、時折子孫に不思議な力を持つものがあらわれた。必ず夢が関連してくる。」
クルーの額に汗が滲み始める。
「そうね。でもここ数十年はそういう者は現れなかった。能力は消えたかもしれないと思う王家の者もいた。貴方が生まれるまでは。」
クルーの顔色が青くなってくる。自分で自覚したことはあったのだろうか?何故自覚できない?母上が気付いていたのに、と。
「恐れるな。言ったろう?使い方次第だと。自覚できればコントロールだって学べる。俺がその生き証人みたいなものだよ。君は一人じゃない。俺たち以外にもこういった性質の力を持つ人が世界のどこかにはいる。相談にものるよ。」
ルーカスがクルーに優しく語りかけた。
「コミヒ様。フォルガイア姫に自分は力を使った事があると言ってましたよね?」
コミヒが頷きながら話をする。
「あの頃、あの子が可愛がっていた小鳥が死んだの。かなりショックだったみたいで、夢でちょくちょく小鳥が死ぬ夢をみていたそうよ。そんな時に隣国の王妃と王子が訪れた。数日の滞在の中であなた達は仲良く遊んだそうね。その中である日フォリーが夢の話を貴方にした。貴方は怖い夢をやっつけてあげたいと言ったそうよ。そうしたら夜、何か温かいものに包まれた感じがしたのですって。以後、その夢を見る回数が減ったようね。」
「言われてみればそんな会話をしたような気もしますが、力を使おうとしたという記憶はありません。」
「王妃に確認したわ。あなた、力を使うのは無意識だった可能性があるわ。思うままに力が作動したのね。純心な子供だからなおさら。」
「では使えない状態になったというのは?姫が関係してるとは?」
クルーがフォリーの方を見つめ、質問した。
「王妃から聞いた話よ。フォリーが心を閉ざし、人形のようになったという話がこの国にも届いた。仲良く遊んだ友達が、人形のようになったから暫くは遊びに行くことができない、と貴方は王妃から聞かされたの。貴方はあの当時一人っ子で、年齢の近い子達と思いっきり遊べた事がとても楽しかったらしいの。帰国してからも楽しそうに王や侍女に話していたそうよ。それなのに遊びに行くことを禁じられ、泣いた。また遊びに行くと約束したんだって何度も親にお願いした。そのうち、子供なりに考え、想像したのね。もしかしたら怖い夢を見て怯えてるのではないのかって。王妃にそう訴えたそうよ。僕が助けに行くと。力を自覚してないのに本能的にわかってるみたいだったと王妃が当時の事を言ってたわ。でもどれだけダダをこねても許可は降りず、毎日泣いた事で泣きつかれ、また落ち込んでしまった。何も出来ないんだと。自分は何も出来ないと。その頃から貴方の周辺で夢に関する不思議な話は聞かなくなったそうよ。」
「ある程度意識すれば短時間、自らの意思で色を変えられる。普段俺の持ってる力を使ったところで必ず漆黒になるわけではないんだ。ある程度の限界を超えてくると勝手にこの色になる。」
クルーの目の前でルーカスの髪色は白金に戻った。
「確かに光の系統は得意とする。確かに光魔法は俺はコントロールしやすい。でも今、君は何かが違う事に気付いたのでは?」
クルーにルーカスが問いかける。
「心?精神?なんて表現したら良いのかわかりませんが、オーラから触れてはいけない力が隠れてるように感じました。心に直接影響してきそうな。見てくれればわかるけど、僕の腕、鳥肌がたっている。」
クルーは袖をまくり、腕をみせる。
「俺の力は『煌きの能力』と、昔お世話になった師匠に名付けられた。魔法を使う感覚ではない、本能的に使えるような感じだよ。
光には何が寄り添う?」
「光に寄り添う?」クルーが眉をひそめる。
「光につきものは?」
「あ・・・影。影のことですか?」
「そう。そして煌きの能力は人の心への能力。人の心の中にある何かしらの光を強くすることも出来るし、風前の灯火にもできる。その気になれば凶気を、恐怖を招く可能性もある。俺一人で立派な武器になってしまう。こんな力、望んでないのにな。」
「人の光にも闇にも近い・・・ですか?
では僕は?貴方の力と性質が近いとさっき・・。」
クルーは自身の力は思い出せないが、本能が告げていた。人の心に作用するという話を疑わず、『その通り!』と心の中で本能が叫んでいた。すると、あの変な空腹感と嫌悪感が湧いてきた。
急に自分自身に不安を感じ、クルーは両腕で自分自身を抱きしめる。
コミヒが語り始めた。
「貴方のお母様は、周囲の人間の変化にある日気付いた。長男が傷つくような言動をとった者が『悪夢を見た』と翌日寝不足だったり、貴方にとって喜ばしく思う事をしてくれた者がよい夢をみたり。
振り返ってみればそれは、昨日今日始まった事ではないと気付いたそうよ。そして魔法訓練を受ける前の有りがちな無意識な魔力の漏れでもなかったと。
ファイアル国の歴史の中におとぎ話のように語られる話があるわよね?」
「ナイトメア使い・・・。」
「そう、それ。ある日、赤ちゃんの泣き声が聞こえ、ある村人が声の聞こえるほうを探したら、命の尽きた女性と、その傍らに魔導お包みで守られていた赤ちゃんを見つけた。魔導お包みのバリアで獣や魔物は寄り付けないようにされていたことでこの赤ちゃんが女性に大事にされていた事は明確だった。残されたメモで親子と判明。しかも火の鉄鉱石の生まれる岩場の付近での発見。
そして女性が生まれつき人の夢に入り込める力があった事が書かれていた。そして生まれた子供に何か感じたとも。自分が倒れた後の心配と子への愛が震える文字で書かれていた。
報告を受けた王は、その子を保護し自分の娘のように大事に育てた。その成長の中で王妃は娘が悪夢を使う能力があることに気付いた。本人は力を使う自覚があまりなく、コントロールできない。王家は養い姫のためにも秘密にした。しかし、恋愛をし、成就し心が満たされると能力は眠った。王子と養い姫の婚姻は皆に祝福された。」
クルーが続けた。
「でも、時折子孫に不思議な力を持つものがあらわれた。必ず夢が関連してくる。」
クルーの額に汗が滲み始める。
「そうね。でもここ数十年はそういう者は現れなかった。能力は消えたかもしれないと思う王家の者もいた。貴方が生まれるまでは。」
クルーの顔色が青くなってくる。自分で自覚したことはあったのだろうか?何故自覚できない?母上が気付いていたのに、と。
「恐れるな。言ったろう?使い方次第だと。自覚できればコントロールだって学べる。俺がその生き証人みたいなものだよ。君は一人じゃない。俺たち以外にもこういった性質の力を持つ人が世界のどこかにはいる。相談にものるよ。」
ルーカスがクルーに優しく語りかけた。
「コミヒ様。フォルガイア姫に自分は力を使った事があると言ってましたよね?」
コミヒが頷きながら話をする。
「あの頃、あの子が可愛がっていた小鳥が死んだの。かなりショックだったみたいで、夢でちょくちょく小鳥が死ぬ夢をみていたそうよ。そんな時に隣国の王妃と王子が訪れた。数日の滞在の中であなた達は仲良く遊んだそうね。その中である日フォリーが夢の話を貴方にした。貴方は怖い夢をやっつけてあげたいと言ったそうよ。そうしたら夜、何か温かいものに包まれた感じがしたのですって。以後、その夢を見る回数が減ったようね。」
「言われてみればそんな会話をしたような気もしますが、力を使おうとしたという記憶はありません。」
「王妃に確認したわ。あなた、力を使うのは無意識だった可能性があるわ。思うままに力が作動したのね。純心な子供だからなおさら。」
「では使えない状態になったというのは?姫が関係してるとは?」
クルーがフォリーの方を見つめ、質問した。
「王妃から聞いた話よ。フォリーが心を閉ざし、人形のようになったという話がこの国にも届いた。仲良く遊んだ友達が、人形のようになったから暫くは遊びに行くことができない、と貴方は王妃から聞かされたの。貴方はあの当時一人っ子で、年齢の近い子達と思いっきり遊べた事がとても楽しかったらしいの。帰国してからも楽しそうに王や侍女に話していたそうよ。それなのに遊びに行くことを禁じられ、泣いた。また遊びに行くと約束したんだって何度も親にお願いした。そのうち、子供なりに考え、想像したのね。もしかしたら怖い夢を見て怯えてるのではないのかって。王妃にそう訴えたそうよ。僕が助けに行くと。力を自覚してないのに本能的にわかってるみたいだったと王妃が当時の事を言ってたわ。でもどれだけダダをこねても許可は降りず、毎日泣いた事で泣きつかれ、また落ち込んでしまった。何も出来ないんだと。自分は何も出来ないと。その頃から貴方の周辺で夢に関する不思議な話は聞かなくなったそうよ。」
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