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第二章 光でも闇でもなく

ルーカスを召喚

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 西王が城の横の屋敷に戻って、夕飯の席についた頃にそれは到着した。

 「お館様宛にファイアルから魔郵人です。いかが致しましょう?」

 「ファイアルから?向こうの王には急ぎの連絡を取りたい時は、ディランに声をかけるよう東王から伝えられてるはずだけど。ディランから直にルーカスに連絡が入るし。その内容は俺から東王にやはりピアスを介して伝えるし。魔郵人の急ぎ手紙なんて誰だ?」

 「コミヒ姫だと魔郵人が申してます。」

 「ひぃぃっ!」

 西王は変な悲鳴をあげ、思わず椅子の後ろに隠れる。

 「お館様、どうされたのですか?って、魔郵人の手紙どうします?」

 王妃が返事をした。

 「ごめんなさいね、この人子供の頃の悪戯で、物凄くコミヒ様に怒られたことがあったみたいで・・・早くお通しして。」

 「かしこまりました。」

 侍女が返事をして数秒で目の前の空間に魔郵人があらわれた。ぷかぷか丸い体を浮かせながら。

 「どうもー、魔郵人でーす。王様宛に時限付きスモッグ手紙をお持ちしましたっキュ。」

 テーブルの隅に可愛らしいもふもふした雲のような人形が置かれた。

 「はーい、確かにお届けしたっキュ。お手紙の話を聞き漏らさないよう気を付けてっキュ。では夕飯時に失礼致しました。またのご利用お待ちしてますー。」

 魔郵人は消えていった。

 恐る恐る、王がスモッグ人形のスイッチを押す。すると、人形がコミヒの声で喋りだす。

 「こんにちはかしらこんばんはかしら。
 連絡を受けただろうから、わかってるでしょうけれどフォリーが倒れたわ。実際に彼女の様子を見たけれど、これはちょっとファイアルのクルー王子の能力が必要になると思うの。でもクルー王子は能力のことは覚えてないのよね。あ、意味不明かしら?とにかく、クルー王子の能力使うためにはルーカスが必要なの。と、いうことでディランとルーカス、チェンジして。ディランには後で同じ事を直接言いに行くわ。」

 その後、声はスモッグ人形特有の声に変わる。

 「以上、確かに手紙をお届けしました。尚、これは時限付きのため、消えます。」

 それだけ言うと、もふもふな体はパッと煙のようになって消えた。
 
 「・・・クルー王子の能力に関して俺が必要?アレの事か?」

 ルーカスは彼から感じる『何か』について思い出す。
 どのみちルーカスにとっては召喚は好都合だった。留守番で気を揉むより、妹の姿を確認したかったから。



          *



 「王妃様、コミヒ姫が面会を求めておられますがいかが致しましょう?」

 「お通しして。この度の御礼も直接言いたいわ。」

 ファイアル王妃はベッド上で何とか自分で上体を起こし、そう言った。ほんの数日前は誰かの手を借りないと上体を起こすのもやっとであった。それが今は自力で何とかなる。コミヒ姫の面会を素直に喜んでいた。

 数分後コミヒが入室してきた。

 「賢者、コミヒ姫。ご無沙汰しております。この度は足をお運び下さり、誠に感謝致しております。」

 「こちらこそご無沙汰しております。いつもこの国の皆様から良くして頂き、私の方こそ感謝致しております。」

 2人はお互いに素直な笑顔を浮かべた。

 「まだ完全に回復されてない貴方様に、こんなお願いをするのは気が引けるのですが、事が事なので直接伺いに参りました。」

 コミヒが視線を下に向け悲しそうに瞳を揺らす。

 王妃が再度笑顔を浮かべ、

 「今の状態の私が貴方様の助けになるのならば、勿論協力しますよ。」

 と思いを伝えた。


 言葉を選んでいるのか、コミヒが少し間をおいてから話し出す。

 「クルー王子のある能力の件です。今その能力を使わせてよいのかどうか。意味はおわかりですよね?
王に伺うより、母の貴方様のほうが能力の件に関しては記憶にありますでしょう?」
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