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第一章
沈黙の森とフォルガイア
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※
申し訳ありません。グロに近いショッキングな表現が入ります。
※
「テオが私に気付いてくれた時、攻撃していた男の人が突然、私の側の大木に風魔法を当てたの。木は私に向かって倒れてきた。避けようと走ったら転んでしまった。手のひらを地面につけて、助けてと念じたら大きな岩が地面からあらわれた。魔法はまだ上手くコントロールできなかったけど、大きな岩が私と倒れてきた木の間に隙間を作り、そこから私は抜け出したの。でも、咄嗟とはいえ、所詮幼い子供の防御。しかもあの人笑ってた。笑って避けれることはわかっていたと言ったわ。そして次々木を倒してきたの。そんな怖い思いしたことがなかったから、泣きながら逃げたの。目の前が暗くなったと思ったら耳のそばでものすごい音がして、気付いたらテオを抱いていた人が私を庇い、倒れた木がその人の足を挟んでいた。」
話しながらフォリーの視線は大きな古い切り株を見つめていた。今いるこの場所がひらけていた場所になった理由が、聞き手にはわかりやすい話だった。
クルーが話し始めた。
「その男の名前は知ってます。小物とはいえ、我が国でちょっとした悪者だったと聞いています。弱い物虐めも好むタイプだったとか。クリスタルのようなものに閉じ込められているのがそいつだ。」
「そうだったのですね。ではあの人は今隣国に。もし、テオと同じ状態にされていたのだとしたら生きてるかもしれません。」
フォリーは悲しげに答えた。
「助けられた時、テオは私の側に転がっていた。痛かったのでしょうけど、助けてくれた人が倒れてることの方に驚いて泣かずに起きて近寄ってきたわ。
風魔法が男の人の体にどんどん傷を増やした。かまいたちみたいに。そして岩も砕け、足を挟んでいた木も割れた。木から開放されたと気付かれた瞬間、攻撃していた人が私達2人に近寄ろうとしてきたの。倒れていた人は足が痛いのに上体を起こして、私達を守ろと上から被さり、結界のような魔法が発動したわ。でも、守ろうとしてくれた人の魔力はとても弱かった。そしてあの不思議な言葉で『一度しか持たないからあいつが攻撃を放ったら二人で走りなさい、逃げるんだ』と。」
フォリーが泣きたい様子が兄達に伝わってきた。でも彼女は泣けない。人形から戻った時に泣いたきり。完全な元の姿に戻らない限り、涙が流せないのではないかと彼女を知るものは感じていた。
「守ってくれた人を置いていっていいのか困った時に、森に入った時の声が聞こえたわ。自分も力を貸すから、走り出したらさっきみたいにスピードはあげられるって。でも、でも、私は嫌だった。テオも泣かずに相手を睨みつけていた。確かにあの人の結界は一度は守ってくれた。そして壊れた。次々にあの人の体に傷が増えた。助けなきゃと思ったら手のひらに力が宿るのを感じた。神力はあの時まだ習ってなかった。でも、咄嗟に治癒の力が発動して、流血を止めたの。そうしたら余計なことをするな!って怒鳴って、怖い男の人がこちらに魔法を放ったの。声に驚いて固まった時、防御魔法が。いつ私達のことに気付いたのか、アレックスが走ってきていて防御魔法を放ったの。」
ディランが眼を閉じた。あの事件の後、アレックスはしばらく目覚めなかった。仲良しの弟であり、親友でもあるアレックスが目覚めない恐怖は、昨日のことのように覚えている。そして覚醒めた後のアレックスの魔力に変化があった。変化が元に戻るのはおそらくフォリーの姿が元に戻った時。
「あの時のできる限りの強烈な防御だったと思う。その防御範囲から倒れていた人の左腕がはみ出ていた。腕は引きちぎられた。その手には緑の石があったの。石は相手に渡ってしまったわ。痛みを堪えてながら返せとあの人が叫んだ。いえ、それまでに流血しすぎて、もう痛みはわからなくなってしまっていたのかもしれない。防御魔法発動させながら力を使い過ぎたのかアレックスが倒れた。私は治癒の力を無意識にアレックスとあの人に使っていたのね。私も意識がぼーっとしてきていた。
怖い男の人が私達に近寄ってきた時、チビひとりのつもりが3人になるとはと呟いたわ。嬉しそうだった。その時物凄いオーラをあの人から感じたの。怖い男の人が慌てて振り返った。そしてその人が放った力に飛ばされた。石が欠けたのが見えた。怖い男の人の持っていた小さな欠片から突然メキメキっと音がして手からドンドン男の人の体に薄く暗い緑のガラスのようなものが広がりはじめた。そして男の人が消えたの。でも、同時に明るい優しい色のガラスのようなものがテオを包みだした。テオに触れようとしたけど弾かれた。そして完全にクリスタルのようなものの中にテオが閉じ込められた。呼べと叫べどテオは中で動かない、声もない。助けてくれた男の人の方を見たら、身体がちぎれかかっていて、血だらけで、虫の息なのは幼い私でもわかったの。そして倒れてる地面から暖かい優しい光があらわれて、あの人も消えてしまった。自分の手を見て、あの人の血でまみれていたことまではおぼろげな意識の中で見た景色として覚えている。私が見た事件はここまで。あとは噂で聞いたとおり、私は生きる人形になった。」
「小さい子には衝撃が強すぎなのだから仕方がない。いや、大人でさえ、血まみれの身体がボロボロ状態の人なんか見たら卒倒する者はいる。ましてや自分を助けてくれたとなるとな。心を閉ざすには十分だよ、フォリー。何度聞いても俺もショックだ。」
ルーカスが言った。
クルーとフーリーはその話を何とか心の中で消化しようとしたくなったが、この話は今自分たちがティラードにきた事に繋がる。途方も無い体験談から眼をそらすわけにはいかなかった。
申し訳ありません。グロに近いショッキングな表現が入ります。
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「テオが私に気付いてくれた時、攻撃していた男の人が突然、私の側の大木に風魔法を当てたの。木は私に向かって倒れてきた。避けようと走ったら転んでしまった。手のひらを地面につけて、助けてと念じたら大きな岩が地面からあらわれた。魔法はまだ上手くコントロールできなかったけど、大きな岩が私と倒れてきた木の間に隙間を作り、そこから私は抜け出したの。でも、咄嗟とはいえ、所詮幼い子供の防御。しかもあの人笑ってた。笑って避けれることはわかっていたと言ったわ。そして次々木を倒してきたの。そんな怖い思いしたことがなかったから、泣きながら逃げたの。目の前が暗くなったと思ったら耳のそばでものすごい音がして、気付いたらテオを抱いていた人が私を庇い、倒れた木がその人の足を挟んでいた。」
話しながらフォリーの視線は大きな古い切り株を見つめていた。今いるこの場所がひらけていた場所になった理由が、聞き手にはわかりやすい話だった。
クルーが話し始めた。
「その男の名前は知ってます。小物とはいえ、我が国でちょっとした悪者だったと聞いています。弱い物虐めも好むタイプだったとか。クリスタルのようなものに閉じ込められているのがそいつだ。」
「そうだったのですね。ではあの人は今隣国に。もし、テオと同じ状態にされていたのだとしたら生きてるかもしれません。」
フォリーは悲しげに答えた。
「助けられた時、テオは私の側に転がっていた。痛かったのでしょうけど、助けてくれた人が倒れてることの方に驚いて泣かずに起きて近寄ってきたわ。
風魔法が男の人の体にどんどん傷を増やした。かまいたちみたいに。そして岩も砕け、足を挟んでいた木も割れた。木から開放されたと気付かれた瞬間、攻撃していた人が私達2人に近寄ろうとしてきたの。倒れていた人は足が痛いのに上体を起こして、私達を守ろと上から被さり、結界のような魔法が発動したわ。でも、守ろうとしてくれた人の魔力はとても弱かった。そしてあの不思議な言葉で『一度しか持たないからあいつが攻撃を放ったら二人で走りなさい、逃げるんだ』と。」
フォリーが泣きたい様子が兄達に伝わってきた。でも彼女は泣けない。人形から戻った時に泣いたきり。完全な元の姿に戻らない限り、涙が流せないのではないかと彼女を知るものは感じていた。
「守ってくれた人を置いていっていいのか困った時に、森に入った時の声が聞こえたわ。自分も力を貸すから、走り出したらさっきみたいにスピードはあげられるって。でも、でも、私は嫌だった。テオも泣かずに相手を睨みつけていた。確かにあの人の結界は一度は守ってくれた。そして壊れた。次々にあの人の体に傷が増えた。助けなきゃと思ったら手のひらに力が宿るのを感じた。神力はあの時まだ習ってなかった。でも、咄嗟に治癒の力が発動して、流血を止めたの。そうしたら余計なことをするな!って怒鳴って、怖い男の人がこちらに魔法を放ったの。声に驚いて固まった時、防御魔法が。いつ私達のことに気付いたのか、アレックスが走ってきていて防御魔法を放ったの。」
ディランが眼を閉じた。あの事件の後、アレックスはしばらく目覚めなかった。仲良しの弟であり、親友でもあるアレックスが目覚めない恐怖は、昨日のことのように覚えている。そして覚醒めた後のアレックスの魔力に変化があった。変化が元に戻るのはおそらくフォリーの姿が元に戻った時。
「あの時のできる限りの強烈な防御だったと思う。その防御範囲から倒れていた人の左腕がはみ出ていた。腕は引きちぎられた。その手には緑の石があったの。石は相手に渡ってしまったわ。痛みを堪えてながら返せとあの人が叫んだ。いえ、それまでに流血しすぎて、もう痛みはわからなくなってしまっていたのかもしれない。防御魔法発動させながら力を使い過ぎたのかアレックスが倒れた。私は治癒の力を無意識にアレックスとあの人に使っていたのね。私も意識がぼーっとしてきていた。
怖い男の人が私達に近寄ってきた時、チビひとりのつもりが3人になるとはと呟いたわ。嬉しそうだった。その時物凄いオーラをあの人から感じたの。怖い男の人が慌てて振り返った。そしてその人が放った力に飛ばされた。石が欠けたのが見えた。怖い男の人の持っていた小さな欠片から突然メキメキっと音がして手からドンドン男の人の体に薄く暗い緑のガラスのようなものが広がりはじめた。そして男の人が消えたの。でも、同時に明るい優しい色のガラスのようなものがテオを包みだした。テオに触れようとしたけど弾かれた。そして完全にクリスタルのようなものの中にテオが閉じ込められた。呼べと叫べどテオは中で動かない、声もない。助けてくれた男の人の方を見たら、身体がちぎれかかっていて、血だらけで、虫の息なのは幼い私でもわかったの。そして倒れてる地面から暖かい優しい光があらわれて、あの人も消えてしまった。自分の手を見て、あの人の血でまみれていたことまではおぼろげな意識の中で見た景色として覚えている。私が見た事件はここまで。あとは噂で聞いたとおり、私は生きる人形になった。」
「小さい子には衝撃が強すぎなのだから仕方がない。いや、大人でさえ、血まみれの身体がボロボロ状態の人なんか見たら卒倒する者はいる。ましてや自分を助けてくれたとなるとな。心を閉ざすには十分だよ、フォリー。何度聞いても俺もショックだ。」
ルーカスが言った。
クルーとフーリーはその話を何とか心の中で消化しようとしたくなったが、この話は今自分たちがティラードにきた事に繋がる。途方も無い体験談から眼をそらすわけにはいかなかった。
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