名を忘れた悪役令嬢

御伽夢見

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壁をぶち壊せ

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 「けじめです。それにこんな事態を招いた以上、今まで通りにはいきません。幼なじみという形が互いの甘えを招くのならばその幼なじみですらも終えるのですよ?」

 「「幼なじみを終えることはないだろう!そもそも幼い頃から一緒にいるのだから!」」

 王子二人の大きな声が重なった。

 流石にテーミスは驚いてマジマジと二人を見つめる。

 「僕も二人に賛成だ。」

 不意にドアの近くから声が聞こえた。もうひとりの王子、第二王子だ。話に夢中で入室に気付けなかった。

 「アドニス殿下。」
 
 「テーミス。元気で良かった。それと、非常に申し訳なかった。本当にすみません。許さなくても構わないけど、どうしても謝罪したかった。」

 「・・もういいのですよ、アドニス殿下。」

 「・・・ねぇ、何で公式な呼び方なの?ここは僕達だけだからわざわざ殿下呼びしなくても?」

 「安心してよ、兄上。僕達も殿下呼びされてる。」

 シリウスが悲しげにアドニスに話しかける。

 「テーミス、僕が言うのもなんだけど、前みたいに呼んで。さっきも言った通り、幼なじみは変えられない。テーミスが僕達に壁をつくるのならば僕達はその壁を乗り越えるよ。いや、拒否されてもぶち壊すよ?」

 ジュスターが語りかける。

 「ぶち壊す・・?」

 「「「当然。」」」

 兄弟3人の声が重なった。

 テーミスは黙って下を向いてしまった。正式に命令されれば従う。でも、非公式であるならば従う必要はないと思える。でも、ぶち壊すと言った。つまり、逃げ出したとしても追いかけられる可能性もあるし、引きこもれば毎日だって自分と面会しようと突撃される可能性もある。

 アリーに話したら何て答えるのだろう?怒って怪我までした彼女の事だ。

 必要ない

 そんな言葉が浮かんだ。

 そう、相手が誰であろうとも対等な言動を過去もとってきたアリーだ。

 「両陛下に会わせて下さい。」

テーミスは真っ直ぐ三人を見つめて希望を伝えた。
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