名を忘れた悪役令嬢

御伽夢見

文字の大きさ
上 下
5 / 22

第二王子と第一王子

しおりを挟む
(第二王子)

いつからだ?
いつから『悪女』だと思い込んだ?

幼い頃はあんなにみんな仲良しだったのに。

むしろ兄上はとても彼女の事を気に入っていたはずだ。もちろん僕だって。それに弟も。

思い出せ。いつから彼女は孤立した?いや、責められるようになった?

優しかった。本来の行動を考えれば、誰かが邪魔をしただけと気付けたはずなのに。

弟だけが彼女のそばに居続けた。弟は簡単には騙されない。僕も同じだったはず・・


彼女を突き落として兄上は今何を思っている?






(第一王子)


部屋に食事が運ばれてきても食欲がわかない。

部屋の外には待機している者たちがいる。
事実上の監視・・・監禁だ・・・いや、元々待機している者たちは昔からいた。だが、昔と今現在とでは意味合いが違う。


何故止められなかったのだろう。

元々は自分の行動から始まっているのはとうに自覚していた。

まさに愛と憎しみは表裏一体。

何故末の弟あいつなんだ。
はじめは僕と君が仲良しだった。

僕は漠然とはいえ将来の自分の横に君がいてくれたらと感じていた・・・思っていた。

そう、君の行動読んで邪魔をし始めたのは紛れもなく僕だ。


廊下ですれ違う時にたまたま令嬢がバランスを崩し、君が咄嗟に支えた。

でも、あの頃イライラしていた僕は、少しだけいじわるしようと思い、お前が足を引っ掛けたのかと大きな声で言った。

予想に反してその声につられた人々が廊下に姿をみせた。

怖くなった僕は嘘だとは言えず、むしろ煽った。

あれが始まり・・・。


君はただバランス崩した令嬢を心配しだけなのに。僕はそれをわかっていたのに。

末っ子が駆けつけ、皆の前で事実確認をし、誤解として集まった人々は元の場所へ戻っていった。

僕も彼女も立場は守られた。でも、僕は気に入らなかった。なんで僕ではなく彼なんだと。

そう、本当は八つ当たりなんかせず、いつものように対応してればよかったのに。

そして八つ当たりから始まったソレは周囲を巻き込んていく。

先生から受け取った書類を君は確かに僕に手渡した。僕はそれを後でごみ箱に。そして数日後攻撃をした。皆の前で。

僕は受け取っていない、お前、どこに隠したんだと。

気づいたらすぐ下の弟がいじめに参加するようになっていた。

あいつは洗脳されやすい。今回の件で自覚したから今後は慎重になるだろう。

だけど本当は・・・助けてほしかった。僕の心を、行動を止めてほしかった。

巻き込まれた事でもうひとりの幼なじみも怪我を負った。
あの日、君は助けようとしていたのだろう。だから全力で否定したんだ。

誰か止めて止めて止めて。僕を止めて。

でも、実際は・・・君を突き落とした。

ゴキっと鈍い音が聞こえた。

ああ、もし彼女が死んだなら僕も沙汰を待たずに命を絶とう。それがせめてもの・・・。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アヤカシ少年は素直じゃない

ぴぴみ
キャラ文芸
室町時代から続く武家の家系に生まれた美華子。 彼女は巫女の血筋もひいていた。昔から霊感はあったが気配を感じ取れるのみ。あやかしを見ることは叶わなかった。 しかしあの夏の日、全てが変わってしまって…。

婚約破棄をしたいので悪役令息になります

久乃り
BL
ほげほげと明るいところに出てきたら、なんと前世の記憶を持ったまま生まれ変わっていた。超絶美人のママのおっぱいを飲めるなんて幸せでしかありません。なんて思っていたら、なんとママは男! なんとこの世界、男女比が恐ろしく歪、圧倒的女性不足だった。貴族は魔道具を使って男同士で結婚して子を成すのが当たり前と聞かされて絶望。更に入学前のママ友会で友だちを作ろうとしたら何故だか年上の男の婚約者が出来ました。 そしてなんと、中等部に上がるとここが乙女ゲームの世界だと知ってしまう。それならこの歪な男女比も納得。主人公ちゃんに攻略されて?婚約破棄されてみせる!と頑張るセレスティンは主人公ちゃんより美人なのであった。 注意:作者的にR15と思う箇所には※をつけています。

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。  読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。 「私は君を愛することはないだろう。  しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。  これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」  結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。  この人は何を言っているのかしら?  そんなことは言われなくても分かっている。  私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。  私も貴方を愛さない……  侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。  そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。  記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。  この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。  それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。  そんな私は初夜を迎えることになる。  その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……    よくある記憶喪失の話です。  誤字脱字、申し訳ありません。  ご都合主義です。  

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

以水救水ヒロイズム

まめ
ホラー
「救い」がテーマです。クトゥルフ神話TRPGっぽい雰囲気(あくまで雰囲気)のお話。 不登校になった生徒を心配した教師の鵜山は、腐れ縁の雑誌記者の川瀬と共に山奥の村を訪れる。 元教え子、教え子の住むその村には鬼の伝承がのこり、さらに恐ろしい秘密があった。村で怪奇事件に巻き込まれた二人はーー? 以水救水(いすいきゅうすい)……間違った手段で盛んな勢いを強めてしまうこと ヒロイズム……英雄主義。英雄的な行動。英雄的な行動を賛美すること。

死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。

拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。 一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。 残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...