どうか僕のことを、忘れて

仲直り

「先生、もう大丈夫？」
「あー、大丈夫だいじょうぶ……ホントだよ？心配かけちゃって、ごめんね」



しばらくしたら、やっと先生が顔を上げて笑いかけてくれたので、ほっとした。
まだ顔は赤いままだけど、いいのかな？



「あー……そうだ、それでね？さっきの続き、なんだけど」

少しだけ顔の横を軽く掻きながら、続けてくれる。

「多分ね、それは、ウィズにそのまま話して、大丈夫だと思うよ」
「……そう、なの？」
「うん。……いや、ボクが言うのもまあ、アレだけど」

ちょっとボソボソ言ってから、また頭を優しく撫でてくれる。

「多分、ウィズなら笑ってくれるんじゃないかな。ウィズも、君のこと好きだろうしね」
「……好きなのに、イヤなことするの？」
「うーん…それを言ったら、君も好きだけど、ウィズのこと、水魔法かけちゃったでしょ？それといっしょ、かもね」
「……」


それを言われると、辛いけど。
まあ、事実だけ見ると、そうかも。


「相手のことが大事でも、間違えてイヤなことをしてしまうことも、あるから。
だから、その時はお話してみよう。そしたら、案外受け入れてくれるかもしれないよ」

「……そう、かなぁ」



こんな、モヤモヤした気持ちになって、一方的に嫌な思いをさせたのに。
あの子は、許してくれるのだろうか。


「うん。きっと、そうだよ」


信じて、と、優しく笑ってくれる先生に、胸がぐっと絞られるような感覚になって。


眩しくて、でも、縋りたくて。


先生の袖を思わず掴みながら、俯いてしまった。







……そして。


先生の、言ってた通り。
結論から言うと、大丈夫だった。


「へー、そっかそっかぁ、なるほどなぁ？
先生が俺にとられるの、そーんなに嫌だったんだ？ふーん？？」


……大丈夫、だったけど。


僕が素直にごめんなさいと伝えてから、モヤモヤも一緒に説明したら。
最初こそふんふんと真面目に聞いてくれたけど、だんだんニヤニヤしてきて、そこまで嫌じゃないけど、やっぱりなんか、腹が立つ、感じというか。

とにかく、イラッとしたのでとりあえず脛を蹴飛ばしみた。痛いって！と少し涙目になってはいたけど。
なんでか、笑ってたので。ちょっとだけ、ホッとしてしまった。


「でも俺だって、先生にはちゃーんと、知識として？自分のこれからの学びとして？教えてもらいたいからさー。少しは譲ってくれよ？まあ、せめてお前がいっぱい甘えられるように行く日はあらかじめ伝えるようにするわ」

「……うん。ありがとう」


なんだか、前よりも更に下に見られてるような、気がしなくもないけど。
でも、何故だろう。笑ってくれて、僕の気持ちを受け入れてくれたことが、嬉しかったのは。

……アイツには、ずっと内緒だ。