18 / 22
衝突
しおりを挟む「……。そのまま弾けて、《水魔法》」
桶に佇む狼を水に戻したついでに、ありったけの水量でそのままビシャリと勢いよくウィズに顔面から水をぶつけていく。
「冷た!?いきなり何すんだよ!」
「……なんか、イラッとした」
「だからってなんも言わずに攻撃してくる奴があるか!」
「じゃあもっと静かにして」
「今は俺のターンだったからいいじゃん!」
「知らない。嫌なもんは、いや」
「理不尽!」
「あー、こらこら。とりあえず2人とも、落ち着いてねー?」
ギャーギャーと僕らが口喧嘩してしまっていると、頃合いを見計らって止めに入られた。
お人好しな先生は、さっき僕がぶつけた水で濡れてしまったウィズを風魔法で乾かしてからこちらに向き直り、困ったように眉を下げてから、視線を合わせてきた。
「今のは、傍から見ているとエトが悪く見えちゃうよ。先に手を出すのは、ダメ」
「……知らない。ウィズがうるさいのが、悪い」
「教室ではいつもこっち無視する奴が何言ってんだよ」
「何か嫌だなぁ、と思ったら、まずは話し合いをしなきゃダメだよ。いきなり攻撃したら、そうした人が悪く見られる」
「……」
先生からもお小言を貰って。なんか、面白くなくて、拳を強く握って俯く。
……最近、こんなんばっか。
僕がウィズにつっかかると、こんな風に、先生はウィズの味方ばかりしてくる。
2人でいる時は、そんなことないのに。
「エト。ウィズにごめんなさいしよ?」
「……嫌だ」
せっかく先生が話しかけてくれたのに、胸のムカムカが止まらなくて、視線を逸らしてしまう。こんなんじゃ、僕の方が子供みたいだ。
「いーよ、先生。こんなの、兄貴達とするのに比べたらじゃれ合いみたいなもんだって」
先生も気にしすぎー、と言ってヘラヘラとウィズが何故か仲介してきた。子供のくせに、生意気だ。
「大体、コイツがこんなメンドくせー奴になんの、先生の前だけだから。教室だと何言わせてもされてもスルーするんだから」
だから俺はわりと楽しんでる、とにっかりとイヤらしい笑みでこちらを見てきた。……イヤな奴。そっちが先につっかかってきたくせに。
「……じゃあ、ここに来ないで。邪魔しないで」
「いいじゃん、居残りして勉強すれば?って言ったのはお前だし」
「1人でやればいいでしょ」
「毎日は来てねーじゃねぇか。むしろそのことに感謝してほしいくらいだけど?」
「じゃあ改めて。もう二度と先生に教えを請わないで」
「ヤだよロニ先生の説明分かりやすいし」
「あー、待って待って!2人とも、喧嘩の続きしないの!」
お互い言い合いになれば、先生また間に入って、慌てて制止してくる。
「してない」
「大丈夫だよ、ただのコミュニケーション、ってヤツ」
「えっと、うーん……」
先生は困った顔するし。
それにウィズは、悪巧みを考えてるかのようにほくそ笑む。
……はぁ。もう、ヤだ。
「……帰る」
「エト?」
「さよなら」
戸惑う先生の声が聞こえたけど、知らない。
僕は俯いたまま、そのまま駆け出して、教室から出ていった。
今はアイツとも、先生とも。
一緒に、いたくなんかなかった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

物語なんかじゃない
mahiro
BL
あの日、俺は知った。
俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。
それから数百年後。
俺は転生し、ひとり旅に出ていた。
あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。


楓の散る前に。
星未めう
BL
病弱な僕と働き者の弟。でも、血は繋がってない。
甘やかしたい、甘やかされてはいけない。
1人にしたくない、1人にならなくちゃいけない。
愛したい、愛されてはいけない。
はじめまして、星見めうと申します。普段は二次創作で活動しておりますが、このたび一次創作を始めるにあたってこちらのサイトを使用させていただくことになりました。話の中に体調不良表現が多く含まれます。嘔吐等も出てくると思うので苦手な方はプラウザバックよろしくお願いします。
ゆっくりゆるゆる更新になるかと思われます。ちょくちょくネタ等呟くかもしれないTwitterを貼っておきます。
星見めう https://twitter.com/hoshimimeu_00
普段は二次垢におりますのでもしご興味がありましたらその垢にリンクあります。
お気に入り、しおり、感想等ありがとうございます!ゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる