どうか僕のことを、忘れて

あか

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変わったこと

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あの後。ようやく先生が部屋に入ってきたわけだけど。なぜか、ちょっとだけ目元を赤くしていた。
帰ってくるの遅かったね、と聞いてみたら、いっぱいお菓子があったからね、時間かかっちゃった、と困ったように笑みを浮かべていた。

それにしても。
持ってきてたお菓子の数、そんなに多いようには、見えなかったのに。なんで、部屋の中になかなか入らなかったんだろう。途中から、ドアの前で先生の気配ずっとあったのは、わかってたけど。
すぐに戻らない振りをした理由が、結局。
よく、わからないままだ。

子供は、僕と同じ違和感に気付いてなさそうで。口の先を尖らせて、お菓子待ちくたびれたー、と呑気に催促していた。
こういうところは、やっぱり子供なんだな。


その後は、特別なことは何もなく。
先生の部屋でお菓子を食べて、少しだけお喋りして。特に何事もなく、お開きとなった。
先生がなぜあの時あの子も呼んだのか、やっぱり、よくわからないままだったけど。
でも、次の日からあの子が強い視線を僕に向けてくることは、なくなったから。先生の提案は、無事成功したみたいだ。
よくわからないけど、よかった。

そうして、僕の周りは平穏を取り戻した。
やっと、視線を気にせず先生に魔法を見せられるようになった。

……いや、正確には、少し賑やかになった。かもしれない。


※ ※ ※ ※ ※


「なー、俺も混ざっていーい??」
「……声、うるさい」
「ふふ。いいよ、おいで?」

あれからウィズは、週に2、3回、放課後僕らがいる教室に割り込んでくるようになった。

1番になりたい、とか言ってたから、ちゃんと努力をしにきたつもりなのかもしれない。
それはそっちの勝手だけど、なんで僕と先生の間に入り込むのか。1人でやればいいのに。先生は先生で、嬉しそうにおいでと招き入れてしまうし。
幸いなのは、来ない日もあるくらいだ。
面倒だけど、それはそれで、よしとしよう。僕にしては、だいぶ譲歩した方だと思うな、うん。

子供ーーウィズは、軽口を叩くことはあるけど、僕が真面目に魔法の練習してる傍で先生に質問して、色々ノートに書き込みをしているようだった。ノートも大分使い込んでるのか、全体的によれよれになってるように見えた。
前までは、口うるさい子供、としか思ってなかったけど。あれからきちんと努力をして、真面目に先生の話を聞く態度は、僕も見習うべきだと思ったし。それこそ、必要以上に向こうから突っかかってくることもなく、意味なく視線を向けてくることもなくなった。
それは、先生の前だけではなく、教室の中でもしなくなった。今までの突っかかってきた態度が嘘のように大人しくなり、冷静に話しかけられるようになった。ついでに、僕に好奇心で話しかけてくる子供に対しても、代わりに対応してくれるようになった。とても、有難い。

だから、ウィズという子供は、悪いヤツでないことは、理解してきたつもりだ。僕自身も、傍にいられても、困る気持ちは、前より薄れてきた。


でも。だからこそ。
またしても、問題が発生することになる。








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