どうか僕のことを、忘れて

あか

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面倒ごと

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そんなふうに。あの人しかいない、あの場所が唯一、僕の心休まるところになっていた……のだけれど。


その、場所ですらも。
最近、変な視線が送られてくるようになって、気がそわそわするようになってしまった。


「……」
「……」
「……?」


視線が、うるさい。
相手に気付かれないように、気配を探る。
その主は、おそらく僕が怪我させてしまった子で、前まで何故かキャンキャン文句を言ってた子だ。
とはいえ、僕が魔法出来るようになってから……いや、それよりも前かな?話しかけてくることもなくなって、静かになってたな、と今更になって気付く。
そんな子供が、僕に何の用だろうか?
2、3日は、様子を見ていたけど。
そろそろ、限界だった。


「……先生」
「ん?どうしたの、エト」
「今日は、帰るね」
「おや?珍しいね。いつもなら夕暮れまでやるのに。何か用事でも……」
「それじゃ、また明日」
「って、行動早すぎない!?」

何か言ってた先生には悪いけど、僕は片付けもせずすぐにそのまま外へ向かう。
あの子供が、離れようとしていたからだ。

いい加減、よく分からない視線を向けられるのも、嫌になってきた。

後を追おうとすれば、僕が近づくことに気付いたその子は、身体をビクッとさせてそのまま走って逃げてしまう。


「……」

僕は、この建物の中の様子を頭に思い浮かべて。
そのまま、彼と反対の方向から走って行ってみた。









「……は~~。これで撒けた、かな……」


気配を探っていると、そんな独り言が聴こえきた。ので、その方向に向かって足音を忍ばせてみる。想定通り、そこにはあの子供がいた。子供は、僕がいないと思ってすっかり気を緩ませて、座り込んでしまっているようだった。そう言えば、僕が近づこうとするとすごい勢いで走ってたもんね。これくらいで疲れるなんて、やっぱり子供だな。
というか、目の前にいるのになんで気づかないんだろうか。


「ねえ。この前から、なに?」

「……は!?」



僕のことに今更気付いたのか、こちらを見上げて、立ち上がろうとして、失敗してしまっていた。ちょっと痛そうだ。


「やっとうるさくなくなったと思ったら。ここのところ、居残りしてる僕のことを探して、ずっと見てくるし。何?僕に用があるなら、早く言って」
「いや俺何も喋ってないけど!?うるさいってなんだよ!大体、足音しなかったぞ……なんだよ、お前」
「気づかない方が悪い」
「それにしたってもう、なんか……もっとあるだろ、音!!」
「僕は、できるよ」

ギャーギャーうるさいなぁ。僕の邪魔しといて、まだ何も言わないつもりだろうか。

「文句があるなら、今言って。邪魔されるの、ホントに困る」
「はぁ?最近は調子よさそうなのに、何言って、」
「あの人が見てくれるから、僕は魔法が出来るんだ。邪魔されたら、魔法が出来なくなる」
「……はぁ?誰が見てようが、別に関係なくね?」

僕の言葉に、顔をしかめてまた文句を言う。
そう言われてしまうのは、そうかもしれない。

でも、僕にとっては。
本当に、大事なことだから。


「関係、あるよ。あの人がいるから、魔法も出来るようになった。
だから、邪魔されるのは、迷惑。だから、早く、言って。


僕に、何の用なの?」


「………っ」


まだ言わないんだ。

変なの。子供って、本当によくわからない。









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