どうか僕のことを、忘れて

あか

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ごめんなさい

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次に目を覚ました時、僕はてっきり建物から追い出されるものだと思っていた。
でも、そうはならなかった。
起きてしばらくすると、白い髭の先生がやってきて。その後ろには、あの時僕が突き飛ばしてしまった子供が、ついてきていた。その顔は、眉が下がっていてなんとなく元気もなさそうだった。


「……お前、大丈夫なの?」
「僕は、寝てただけ。君こそ、痛くない?」

こちらを心配するような言葉をかけられたのは意外だったが、問題ないのでそう返事する。それよりも、彼と別れた時に突き飛ばした怪我がないかどうかが心配だった。見たところ、血の匂いはしないし、動きもとくに動きにくそうとか、そういうところはなさそうだ。

「……俺も平気。けど、先生に治してもらうまでは、痛かった」
「……ごめんなさい」

やっぱり、痛い思いはさせてしまったみたいだ。
前にも、同じことをしたことがある。あの時は、その子の親がひどい剣幕で僕に怒鳴ってきて、怖かったな。まあ自業自得だし、仕方ないけど。その後は、別のとこにいたおじさんに謝らせちゃったな。
そう考えると、僕はどこに行ってもダメな奴だとまた気付いてしまって、なんとなく気分が沈んで下を向いてしまう。



「素直かよ。……まあ、いい。許してやる。俺も、悪かった」
「え?」

予想外の言葉に、僕は顔を上げて、その子供の表情をマジマジと見た。
いつもなら僕を揶揄っては、口元を歪めてくる彼が、今日はやけに神妙そうにして、ぷいと横を向いた。

「……別に!レイア達に言われたからじゃねーもん。俺が言い過ぎたから、お前が手を出したのは、わかるし」

「……。ごめんなさい」

「あーもー、いいって!俺が、いいって言ってんの!だからもう謝るの、なし!!」


これで今度こそ終わりだからな!と、その子は怒ってるような、でもなんだか、今までと違って、嫌な気分じゃないような。

不思議に思って首を傾げれば、近くにいた先生の白い髭が目に入る。その髭が、いつもよりも心無しか上に盛り上がったように、見えた。

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