はじめましては処刑台の上で。

 これは、裏切りの神子と呼ばれた男と悪辣無慈悲と呼ばれた公爵令嬢の運命のお話。















 
『ーーねぇ、貴方はどうして処刑されるのかしら』


 断頭台に拘束され、国民の晒し者になった俺に話しかけてきた1人の少女。両親であろう男女が慌てたように処刑台を駆け上がって来ようとするのを振り返るでもなく、少女は舞台にしゃがみこんで俺の顔を覗き込む。

 ざわざわと国民達が騒ぐのも、国王や王子が慌てたように騎士を動かすのも。雑踏の視線など高貴な少女には一切目に入らぬのか、彼女はただ俺の目を見つめ、コテンと首を傾げた。


『不思議だわ。とっても不思議』
『ーーぁあ、?』
『だって、私には貴方が国を傾ける悪者には思えないんですもの』


 そう言って、神秘的な真紅の瞳を純粋に輝かせた少女は、ボロボロで汚い俺をただ真っ直ぐに見つめて。


『私にもっと力があれば、貴方のような人を断頭台から立ち上がらせることが出来るのかしら』


 【裏切り者】の1人が少女を抱き竦めるようにして俺から遠ざけ、俺を冷めた目で見下ろす。賢明にも、少女はその手から無理に逃げ出そうとはせずただ俺を見つめ続けた。



『ご本で読んだわ。神の寵愛を受けた【神子】様は、死と共に生まれ変わるのですって』
『……ーーーーーぁ、あ、神よ、神よ、どうか』
『私、アストリア・シンビジウムよ』


 ……よりにもよって、【ソイツ】のかよ。


『貴方が再びこの地この場所に戻ってくるその時までに、私がこの国を正してみせるわ。

 ーー忠実の神子、【ガーネット】様に誓って』


 …………。

 世界一、信用ならねぇよ。ばーか。

 
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