世界征服へと至る愛

鳴海

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 言うなり石神から噛みつくようなキスをされて、その荒々しさに驚きつつも気持ち良さに逆らえず、西島は必死になって自分の舌を石神のそれに絡みつけた。

「あっ……ん、くちゅ、あふぁ……」


 石神の手が西島の制服のブレザーのボタンをはずし、ワイシャツの上から乳首をきゅっと摘まんだ。

「んんんっ!」

 西島の善がり声と硬くなった乳首に気を良くした石神は、自分の膝を西島の足の間に割り入れて股間に触れた。そこは既にはち切れんばかりに硬く自己主張していて、石神が膝でごりごり擦ってやると、キスをしながら西島がたまらず喘ぎ声を上げる。

「んあっ……はぁ……う、んむぅ……」

 キスも気持ちよければ指で愛撫される乳首も気持ちよく、脳が溶けそうなほど股間も気持ちがいい。西島は自分でも気づかない内に、石神の膝に股間を必死になって擦りつけていた。

「石神っ、きもちー……気持ちいいよぉ、あ……ンああっ」

 生まれて初めて他人から与えられる性の快感に夢中になる西島は、いつもの平凡で面白味のない純朴な雰囲気の彼とはまったく別人のようで、もっともっとと快感を強請るその淫靡な姿に石神の発情も煽られていく。

「くそっ、たまんねーなぁ」

 石神は自分の唇についた西島の唾液を、ぺろりと舌で舐め取った。



 西島の存在を石神が初めて認識したのは、二年生になって同じクラスになった時である。

 見た瞬間にこう思った。なんてつまらなそうなヤツなんだろう、と。

 勿論、他にも西島みたいなタイプの人間はたくさんいる。その中でも、ダントツに平凡であり、人生を無駄にしてそうに見えたのが西島だった。

 なんのために生きているんだろう。生きていて、コイツにはなにか楽しいことがあるのだろうか。

 幼い頃から石神は頭が良かった。運動神経にも恵まれていたし、容姿もかなり、いや、ものすごく良かった。更には家柄も良く、母親は代々政治家の家系だし、祖父は大企業の会長を務めている。どの角度からどう見ても、あらゆる点で恵まれて生まれきた人間、それが石神だった。

 中学二年の最初にセックスを知り、しばらくは女と遊ぶことにはまった。そういった乱れた生活の中、ほとんど勉強なんてしていなかったせいで、高校はそこそこの進学校でしかない今の学校に通うことになった。

 とはいえ、先を見据える目を持っている賢い石神は、高校に入ってからは女や男友達とは適度に楽しく遊びつつ、それなりに勉強もしていた。おかげでこれまでずっと学年ではトップの成績を維持している。全国模試でも十位以下に落ちたことがない。

 もしも本当にこの世に神という存在がいるとして、その神から愛されて生まれてくる人間がいるとするならば、石神は間違いなくその中の一人であると言えるだろう。
 将来、なにかを成すことを期待されるがゆえに、多くの加護をもらって生まれてくる。そういった人間が実際にいるのだと、そう信じたくなるような存在が石神だった。

 そんな選ばれし者である石神にとって、西島という人間は、まったくもって理解できないというか、存在意義さえも理解できないような相手だった。

 必死になって大きな荷物を持ち、仲間の待つ巣へと帰ろうとしている働き蟻。
 それを足元で見かけた時と、同等程度の印象しか持てない相手。それが石神にとっての西島だったのである。


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