【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

文字の大きさ
上 下
191 / 194

95.獣神降臨ー1

しおりを挟む
(酷い目に遭った……)
 儀式を終えた俺は竜の心臓を手に入れ、滅多なことでは死ななくなった。
 でも宝珠というのを持っていないので、神通力は使えないらしい。

(死ななくなったって言われても、特に自覚症状は無いんだよな)
 見た目も大して変わっていないし、相変わらず体力はそこそこしか無い。
 それに比べて、ロクは凄い。
 体表から金粉みたいなキラキラと光る粉が舞い散っていて、明らかに神格が上がっている。

(これってもう神になったんじゃないの?)
 そう思ったけど、お師匠様いわく隠せないようではまだ三流なのだそうだ。
 まぁ、そう簡単に神様になれたらありがたみも無いもんね。
 いや、三日三晩抱かれ続けるのはちっとも簡単じゃなかったけどさ。


「お前が女ならば良かったのになぁ」
 俺たちを羨ましがってハヌマーンがそう言った。
 でも勿論、俺にだって相手を選ぶ権利がある。

「例え女でもお断りだよ! 人間は普通は複数人と寝ないんだからな!」
「しかし神霊とロクサーン侯を交互に相手したではないか」
「そ、それは……例外って言うか、仕方がなかったから」
「ならば俺だって例外にすればいい」
「簡単に言うな!」
 俺にしたら結構な覚悟をもってしたことだった。
 幾らロクと同一の魂だと言われても、ロクの一部なんだと思っても黒豹の姿をしたものと交わるのは怖いし勇気がいった。
 しかも一度だけでなく、何度も何度も繰り返し抱かれてナカに出されて奥に擦り付けられもした。
 あれはきっと、体験した人にしかわかって貰えない。

「チヤ、お前が苦しむとわかっていたら他の方法を考えた」
 俺以上に苦しげなロクを見て、思わず苦笑する。

「苦しい訳じゃないんだ。ただ、何ていうか……困ったな」
 俺はロクにも上手く言えなくて困ってしまった。
 それに後悔しているのでもない。

「あのね、ロクは悪くないよ。それに神霊も悪くない。多分……俺も悪くない」
 これは誰が悪いって話じゃない。
 だからこの話はここまでにして貰おう。

「それより、猩々たちが神霊の言うことを聞くなんて思わなかったね」
「ハヌマーンを見限ったのではないか?」
「神霊の方が賢そうだもんねぇ」
 口々に好き勝手なことを言う俺たちに向かってハヌマーンが吠える。

「猩々どもは俺の手下だ! 神霊の言うことはムリヤリ聞かされたんだっ!」
「無理矢理ぃ? そうかなぁ、かんっぜんに服従してたと思うんだけど」
「なんだとッ!」
 ハヌマーンはショックを受けているけど、それが強くなった神霊の力なんだと思う。
 森に棲むものを屈服させるとか、支配するとかそういう力があるのだろう。

「三人とも――神霊は人じゃないけど、獣神と戦う為に頑張ったんだ。強くなっていて当然だろ」
 これでもまだ足りるかわからない。
 幾ら強くなっても俺たちは神じゃないから。

「イチヤ、そんなに気負うことはありません。負けてもそなたたちは天界へ来れば良いのです」
 お師匠様は珍しくこちらを気遣ったセリフを言ってくれたけれど、残念ながら的外れだ。
 俺は苦笑しながら答える。

「負けても自分たちだけは大丈夫って思えるくらいなら、俺は最初から天下を取るなんて言わないよ」
「それは大した覚悟ですが、神には勝てませんよ?」
「わかってる。勝てなくても、噛み付いて追い返して見せるさ」
 それが出来なきゃ俺たちはいつまでたっても神同士に取り合いをされる駒でしか無い。
 結局、自分自身が前に立つしか無い。そこに逃げ道は無いんだ。

「チヤ、神が来た」
 お師匠様がいるのに、遠くの空から包囲するように獣神たちが飛んできた。
 円心上に空に配置する半人半獣の神は、悔しいけれど神々しくもカッコイイ。

「ちょ、あれ格好良すぎじゃない?」
 ロクに負けないくらいイケてる獣メンズが俺たちを睥睨していて、思っていたのと違う姿に俺は慌てた。

「人間は、やはり人の神よりも獣の神の方が好ましいのですね?」
 悔しそうなお師匠様の声にハッとする。
 うんまあ、どれだけ威厳があっても人の姿では神様っぽくないというか、雄々しい獣の姿には憧れちゃうんだよ。でもバカ正直にそんなことは言えないので、俺は別の言葉を探す。

「見慣れないからちょっと吃驚しただけ! でももう大丈夫! 見慣れちゃえば獣人たちと変わらないし」
 嘘だ。獣人とは全く違う。それはもう、雑種の捨て犬と血統書付きの高級犬くらい違う。

「それより跪いた方が良いのかな?」
「必要ありません。そなたは天下人になるのですから」
 お師匠様の言葉にそうだったと顔を上げる。
 自分とは格の違う生き物だからって降らないからな。

『純血の人間がどうして此処にいる?』
 立派な角を持った白山羊が問い掛けてきた。
 俺は気後れしそうになりながらもハッタリをかます。

「異世界から君臨する為に来た。俺は人として、この地の権利を主張する」
『……異世界? 大神の手下ではないのか? そこに人の神もいる』
「違う。大神とは協力関係にあるだけだ」
『……』
 怪しまれているのか、沈黙にプレッシャーを感じる。
 でも嘘は言っていない。

『まさか、大神以外に勢力がいたとは……。それでお前、神霊を従えているのか?』
 彼らにとっては一番の関心事が神霊なのだろう。
 別の獣神にそう訊かれて俺は迷わず頷いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

処理中です...