【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

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69.恋人自慢-2

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「は? なんで笑うんだよっ」
「だって、大真面目に言っているのがおかしくて……本気ですか?」
「当たり前だ」
 俺はこの世界で育ったんじゃないからね、価値観が違っていて当然なんだよ。
 偉そうにふんぞり返った俺に、嘘だったらなんとしても殺すと脅された。

「あんたなぁ、どうしてそう物騒な手段しか考えられない――」
「本気なら私を使って下さい。どんな汚れ仕事でも引き受けましょう」
 なんだよまた似非敬語かよ。その口調は嘘だってもう知っているんだからな。

「汚れ仕事なんてさせないよ。そんなことをしなくたって、あんたは優秀だろうが」
 実際に彼の仕事ぶりを知っている訳ではなかったけど、ロクが目を掛けていたのなら優秀に決まってる。
 それにあのロクデナシマキシム卿の面倒を見ていたんだから、忍耐力だってあるだろうしね。

「あなたが私の何を知っているんですか?」
 ヨカナーンの皮肉気な態度にだって傷付かないよ。

「俺は知らないけど、ロクが良いって言うなら良いに決まってる」
「団長を――」
「信頼してる。ロクは俺のヒーローだから、ロクが言うことに間違いはない」
 なんて言いつつ、さっきは対立しちゃったけどね。
 でもロクは俺のこととなるとちょっと目が曇るからな。番としてそこは修正してやらないと。

「どうしてそんなに団長がいいんですか? 人間にとったら、恐ろしい獣のようなものでしょう?」
 不可解そうなヨカナーンに、俺は照れながら答える。

「……綺麗だし」
「綺麗!?」
「漆黒の天鵞絨みたいな毛皮も、その下で躍動する筋肉も綺麗でかっこいいだろう? それに宝石みたいな青い目に見つめられるとドキドキするし、濡れた鼻も可愛いし、ハァハァする口も好き。深い牙が突き刺さるのを想像するとイキそうになるし、ペロペロと舐められると自分から服を脱ぎたくなる。つまりロクは俺にとってドストライクで、いつどれだけ求められても断れないくらい好きだってこと。あ、あとあの腰にくる声もいいしクソ真面目で融通が効かないところも好き。でも意外とお茶目なところもあるんだよ」
 うふ、と笑ったらヨカナーンがドン引きしていた。

「団長殿に……求められたら何でも差し出す覚悟はありましたが、自分からどうこうしたいとは……」
「え? 自分でロクのを挿れたら駄目なの?」
「いれっ……!?」
 目を白黒させるヨカナーンを見て、俺はちょっとだけ安心する。

(良かった。どうやら幾ら好きでもヨカナーンからロクの貞操を奪う気はないみたいだ)
 それだけで本当に気持ちが軽くなるんだから、俺も即物的な男だよなぁと苦笑してしまう。
 その時、呼んでもいない白妙が急に袖口から顔を見せた。

 “チヤ様、それ、欲しい”
「それ?」
 可愛らしく舌をチロチロと泳がせて強請られて、何でもしてやりたくなるが『それ』というのが何のことだかわからない。

 “私が呪った、白い人間”
「えっ? もしかしてヨカナーン!?」
 白い……と言われたら確かに白いのか?
 ヨカナーンは色白で、目の色も薄いし髪色も淡いグリーンで樹の精霊みたいな雰囲気がある。
 でも猫型獣人の血が入っているのになぁ。

「蛇なのに猫が怖くないの?」
 “白妙は蛇じゃない。小さい竜”
「は? そりゃあ、竜になるかもとは言ってたけど……蛇だろう?」
 “小さい竜”
「……」
 まぁ、いいけどさ。でも欲しいってどういうこと? ヨカナーンが気に入ったの? まさか俺のお供を辞めてヨカナーンに付くってこと!?

 “違う、おもちゃ”
「白妙?」
 “気に入ったから、遊ぶ”
 う~ん、おもちゃにするって言われて、与える訳にはいかないよなぁ。

 俺がウンウンと唸っていたら、白妙が勝手に俺から離れていきヨカナーンの布団に潜り込んだ。

「あの、ヨカナーン? その蛇は、実は俺の使い魔みたいなもので――」
「ひっ!」
 急にヨカナーンが声を上げたので俺は焦った。

「ちょ、白妙? 何をやってんの? 出てきなさいっ!」
 布団を捲ろうとしたら、ヨカナーンがさせまいと上から押さえた。

「ヨカナーン?」
「見ないで、下さ――くふっ!」
 ヨカナーンが目を大きく見開いてブルブルと震えた。
 布団の中で何をされているのか知らないが、見られたくないようなので俺はそろそろと後ろに下がった。

「あの、本当に白妙を引き離さなくて平気?」
「出て……って、下さ……」
「んーと、白妙、呪ったり酷いことをしちゃ駄目だよ? ちょっとだけだからね!」
 俺は見えない白妙にそう声を掛けると、そうっと部屋から出ていった。
 白妙にヨカナーンを害する気はないみたいだし、ちょっと遊ぶだけなら平気だろう。

(多分ね)
 俺は扉の前から離れながら、どうしても白妙がヨカナーンの後ろに潜り込む妄想をしてしまうのだった。 
 
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