【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

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66.お披露目−2(R−15)

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「俺の恋人はあんただけだよ?」
「当たり前だ。だが、私よりも他の者と一緒にいる時間の方が長い」
 確かに、二人で旅をしていた時はずっと一緒にいたのに、今は互いの仕事が忙し過ぎて離れ離れになることも多い。

「あんたにとっては俺のお守りが仕事だったじゃん? 今までは趣味と実益を兼ねていたから何も不都合が無かったけど、これからは領地経営っていう本来の仕事をやらなきゃいけないから仕方がないよ」
「仕方がない……か」
 俺の言葉にロクが何事かを考え込んだ。
 元の世界の常識から考えれば、職場に恋人を同伴しないのは当たり前のことなので何の疑問も無かった。
 でもロクは違ったらしい。

「私はそうは思わない。三ヶ月で私がいなくても良い体制にする」
「えっ? じゃあ、あんたは何をするんだよ?」
「お前のサポートだ」
 は? 何を言っちゃってるの?

「イヤイヤイヤ、勿体ないでしょ。ロクに俺の付き人みたいなことをさせるとかあり得ないって!」
 大慌てで否定したけどロクは本気だ。

「私はお前の側で過ごす時間を勿体ないとは思わない。寧ろ何よりも大切な時間だ」
「お、れだって……あんたと一緒にいるのは楽しいし、嬉しいし、大好きだけど……」
「ならば楽しめばいい」
 いつの間にか腰を抱かれ、顎を持ち上げられて口を覆われた。
 ペロペロと舐められて開いた唇の隙間にぬるりとした舌が入ってくる。
 ロクはエッチだから、舌を性器のように出し入れして一気に俺の官能を掻き立てる。

「んむ、ふ……」
 ぬるぬると擦れるのが気持ちよくて、ボーッと口を開けたままロクのされるがままになる。
 こんなにエッチの上手い男に愛されたら、爛れちゃってもしようがないよな、と自分を許す。

「ふあっ……」
 ロクのキスがいつの間にか手での愛撫を伴うものになっていて、俺ははしたなく脚を開いていた。
 もっと奥まで触るように、指を誘導するように自分から身体を開く。

「チヤ、最後までしてやりたいが、時間がない」
「……時間?」
「お前を披露しなくてはな」
「ハッ!」
 俺は自分たちがここへ来た目的を思い出した。
 そうだよ、エッチして~なんて思ってる場合じゃない。

「急いで着替えないと!」
「そう慌てなくても大丈夫だ」
 ロクはそう言ってくれたけれど、今回の衣装は一人で着られないので早々に侍女たちに着付けて貰う。
 相変わらずキラキラしていて透けていて、深く入ったスリットとか飾り紐が妙にエロい。
 俺が飾り立ててもなぁと思うんだけど、ロクにソワソワした目で見られちゃうとこれはこれで悪くないかもしれないと思う。

「ロク、ヒゲがピクピクしてるよ?」
「む……済まん。そういう紐やらヒラヒラした布にはいたくそそられてしまうのだ」
「猫みたい」
「獣人はほぼそういう性質だぞ」
「それは楽しみ」
 俺は本当にこんな格好で獣人の気を引けるのかなと半信半疑でいたが、パーティー会場に脚を踏み入れたら突き刺さるような無数の視線を感じて体温が上がった。

「ウヒィ~、恥ずかしいよぅ」
 ロクの腕に軽く手を置いてエスコートされて歩く俺を、獣人たちがジロジロと見る。
 数少ない人間の視線は余り感じないのは、眼力が弱い所為だろうか?

「ロクサーン侯爵、お久し振りですなぁ」
「アルシェンタ伯爵、そちらこそ珍しい」
 太った……タツノオトシゴ?  小さな恐竜?
 種族がよくわからないが、トリケラトプスみたいなおじさんとロクが挨拶をしている。

「中央に来るのは難儀ですが、たまに来ると珍しいものが見られます」
「珍しいものとは、この、私の番のことですか?」
 そう言って俺を抱き寄せるロクがいつもの三割増しで格好良い。
 まるで貴族みたいに優雅でノーブルだ(あ、こいつはホンモノの貴族だった)。

「ロクサーン侯爵? まさか本気で――」
「アルシェンタ伯爵。私は本気でなければこんなことはしません」
「……なるほど」
 改めてじろりと見られて、俺はビビリつつもニコリと笑った。

「柚木一哉です」
「まさか異世界人の?」
「はい。召喚されて、帰れなかった異世界人です」
「これはなんと!」
 う~ん、驚いているトリケラトプスが新鮮だぜ。

「前代未聞ですなぁ」
 確かに、これまでの召喚された異世界人は数分から数日で帰還していたそうだからね。
 こっちに残る、おまけに獣人と情を交わすなんて前代未聞だろう。

「私がこれまで番を持たなかったのは、私の運命が異世界にあったからなのです」
 しゃあしゃあとそんな事を言ったロクに、アルシェンタ伯爵が感心したように頷く。

「得心しましたぞ。堅物で通っておられたあなたにも、こんな出会いがあったのですなぁ!」
「ええ。ですから誰にも譲る気はないと、伯爵からも言って下さい」
「わかりました。あの一派は私が抑えましょう」
 何やら密約を終えて、トリケラトプスは俺の手の甲に口付ける真似をして離れていった。

「ロクぅ? 今のって――」
「お前が気にすることはない。馬鹿な若者たちを牽制して貰っただけだ」
「ふぅん。ならいいけど」
「それより、いよいよ国王陛下のお出ましだ」
 ロクに耳打ちをされ、俺は視線で示された奥の扉を見た。
 開かれた扉の隙間から光が溢れ、影になったシルエットが目に飛び込んでくる。

(まるで神の降臨だな)
 凝った演出にうへぇ……と思っていたら猛禽類の瞳に射抜かれた。

(やべぇ、目を付けられてる)
 俺は寄り添うロクにしがみついた。

「必ず守る。心配するな」
「うん」
 負ける訳にはいかない。ここを切り抜けて領地に帰るんだ。
 俺はそう強く思いながらしっかりと顔を上げた。
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