【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

文字の大きさ
上 下
128 / 194

64.儀式の前の-1(R−18)

しおりを挟む
 貴族が、しかも大身の貴族が人間を伴侶に迎える場合、人間は決して同等の立場で嫁ぐのではない。半ば持ち物の扱いになることで、漸くその家のものと見做される。
 だから薄物を身にまとって、人前で性的な関係を匂わせる。
 この人間は自分に種付けされているのだと、他の雄に見せ付けることで手出しをさせないようにした。
 ある意味ではそうすることで弱い人間を他の獣人から守っているとも言えるが、所有権が確かでない人間は少々強引に手を出してもいいって考え方は本当にどうかと思う(それを自由恋愛と言い張るのもな)。
 昔の習慣とはいえ、マーキングして周囲を牽制するのはいかにも獣らしい。

「流石に昔ほどあからさまではないが……嫌なら止める」
「ははっ、昔は人前でアレを擦り付けたりしたんだろぉ? 今は腰を抱いたりするぐらいだって言うし、人からどう思われようと構わないさ」
 人間の番は娼婦扱いって訳じゃないけど、身も心も服従させてこいつは俺にメロメロなんだぜって周りに思わせる必要があった。
 馬鹿みたいだけど、あくまでも獣人が人間よりも上の立場なんだと明確にしなきゃ傍に置くことも出来ない。またレオポルトみたいに、「自分に可愛がられて満更でもないだろう」なんて本気で思う獣人も多かった。
 まぁ、それ以前に人間を好まない獣人の方が多いから、わざわざ “人間と対等に” なんて考える奴もいない。
 平民で獣人と人間のカップルが普通にいるのは、人間の数が多い為だ。数が多ければ見慣れるし、慣れれば好意だって愛情だって湧く。

「男同士だってのはそんなに問題にならないのにな」
「血さえ残せば良いからな」
 ここで言う『血』とは外見のことだ。
 ロクサーン侯爵家なら次の跡取りに黒豹型の獣人を用意できればそれでいい。
 一族の中から見繕っても、ロクが側室を持っても愛人を持っても構わない。
 ただ黒豹の姿かたちさえ次代に残せばいいのだ。

「それって、獣神の影響だったりするのかな」
「兎に角獣の姿は尊い、という思想は王家に近いほど強い。ひょっとしたら、王家には獣神の言葉か何かが残っているのかもしれない」
 自分たちに都合の良い、自分たちが正統だと思えるような言葉。それがあるから獣人至上主義なんだろうか?

「俺もロクの見た目は凄く好みだけど、やっぱり好きだからこんなに萌えると思うんだ」
「萌える?」
「んっと、ロクの牙とか毛皮の下で脈打つ筋肉に興奮しちゃうってこと」
 獣だったらなんでも良いってなったら流石に俺は変態だと思う。

「私は獣人の中でも容貌が恐ろしい方なんだが……」
 ロクが戸惑ったようにそう言った。
 そう、本当に不思議なんだけど、ロクは同じ獣人からもちょっと恐れられていたんだよね。館の人たちは平気だけど……育ちが特殊で、貴族にしては粗野ってことがあるにしてもこんなに格好良いのに。

「俺は最初っからロクの身体にそそられてたよ。知ってるだろうけど」
「いや、だがそれは甘味を味わえるから、甘いのが好きだから錯覚していると思っていた」
「確かに、甘いのとエッチなのは一緒にしちゃってたけどね。でも甘いからって、最後までしたいなんて思わないよ」
 だって自分よりもずっと大きな男の身体だよ? 牙を剥き出しにした黒い獣に突っ込まれたいなんて、ちょっとやそっとで思うわけが無いじゃん。

「ロクが甘い物を嫌いだから、俺に触るのを嫌がってるから安心してこっちからいけたってのもあるけどさ、甘くなくても……俺はあんたに惚れてたと思うよ」
 何故だかロクの事を嫌いになるところが全く想像出来ない。
 多分俺は、どうしたってロクが好きなんだ。

「ならば私がお前を大事にしているところも見せなくてはな」
 そう言ってロクがフッと鼻から息が抜けるように笑った。
 俺はフラフラとロクに近付いていき、両手を首に巻き付けてうっとりと見つめる。

「チヤ?」
「あのね、したくなっちゃった。俺を可愛がって?」
「念入りにしてもいいか?」
「凄く、しつこくがいい」
 俺は体中に這うロクの手を感じながら、口付けを受け入れた。
 身体の細部まで確認するように撫でられ、窪みを擦られ、指で服の上から蕾をグリグリされるだけで腰がへこへこと動いてしまう。

「ロク、たっぷり濡らして……」
「もう濡れてる」
 耳朶を噛まれて耳の穴に舌を入れられ、クチュクチュといやらしい音が立つのが恥ずかしい。
 ロクは俺が好きで、俺を触るのが好きで、俺がロクの手で乱れていやらしい姿を見せるのを歓ぶ。
 最近ではロクの分身を舐めても口に入れても嫌がらないし、先っぽを俺の勃起した乳首に擦り付けて自慰みたくしても怒らない。やっとロクの性器に興奮するんだって信じてくれたみたいだ。

「えっと、擦られながら、舐めたい」
「後で恥ずかしいって文句を言うなよ?」
 そう言うとロクは膝の上にぺたりと腹ばいになった俺をくるりと逆向きにして、腰を持ち上げた。
 所謂シックス◯インって体位だ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...