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64.儀式の前の-1(R−18)
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貴族が、しかも大身の貴族が人間を伴侶に迎える場合、人間は決して同等の立場で嫁ぐのではない。半ば持ち物の扱いになることで、漸くその家のものと見做される。
だから薄物を身にまとって、人前で性的な関係を匂わせる。
この人間は自分に種付けされているのだと、他の雄に見せ付けることで手出しをさせないようにした。
ある意味ではそうすることで弱い人間を他の獣人から守っているとも言えるが、所有権が確かでない人間は少々強引に手を出してもいいって考え方は本当にどうかと思う(それを自由恋愛と言い張るのもな)。
昔の習慣とはいえ、マーキングして周囲を牽制するのはいかにも獣らしい。
「流石に昔ほどあからさまではないが……嫌なら止める」
「ははっ、昔は人前でアレを擦り付けたりしたんだろぉ? 今は腰を抱いたりするぐらいだって言うし、人からどう思われようと構わないさ」
人間の番は娼婦扱いって訳じゃないけど、身も心も服従させてこいつは俺にメロメロなんだぜって周りに思わせる必要があった。
馬鹿みたいだけど、あくまでも獣人が人間よりも上の立場なんだと明確にしなきゃ傍に置くことも出来ない。またレオポルトみたいに、「自分に可愛がられて満更でもないだろう」なんて本気で思う獣人も多かった。
まぁ、それ以前に人間を好まない獣人の方が多いから、わざわざ “人間と対等に” なんて考える奴もいない。
平民で獣人と人間のカップルが普通にいるのは、人間の数が多い為だ。数が多ければ見慣れるし、慣れれば好意だって愛情だって湧く。
「男同士だってのはそんなに問題にならないのにな」
「血さえ残せば良いからな」
ここで言う『血』とは外見のことだ。
ロクサーン侯爵家なら次の跡取りに黒豹型の獣人を用意できればそれでいい。
一族の中から見繕っても、ロクが側室を持っても愛人を持っても構わない。
ただ黒豹の姿かたちさえ次代に残せばいいのだ。
「それって、獣神の影響だったりするのかな」
「兎に角獣の姿は尊い、という思想は王家に近いほど強い。ひょっとしたら、王家には獣神の言葉か何かが残っているのかもしれない」
自分たちに都合の良い、自分たちが正統だと思えるような言葉。それがあるから獣人至上主義なんだろうか?
「俺もロクの見た目は凄く好みだけど、やっぱり好きだからこんなに萌えると思うんだ」
「萌える?」
「んっと、ロクの牙とか毛皮の下で脈打つ筋肉に興奮しちゃうってこと」
獣だったらなんでも良いってなったら流石に俺は変態だと思う。
「私は獣人の中でも容貌が恐ろしい方なんだが……」
ロクが戸惑ったようにそう言った。
そう、本当に不思議なんだけど、ロクは同じ獣人からもちょっと恐れられていたんだよね。館の人たちは平気だけど……育ちが特殊で、貴族にしては粗野ってことがあるにしてもこんなに格好良いのに。
「俺は最初っからロクの身体にそそられてたよ。知ってるだろうけど」
「いや、だがそれは甘味を味わえるから、甘いのが好きだから錯覚していると思っていた」
「確かに、甘いのとエッチなのは一緒にしちゃってたけどね。でも甘いからって、最後までしたいなんて思わないよ」
だって自分よりもずっと大きな男の身体だよ? 牙を剥き出しにした黒い獣に突っ込まれたいなんて、ちょっとやそっとで思うわけが無いじゃん。
「ロクが甘い物を嫌いだから、俺に触るのを嫌がってるから安心してこっちからいけたってのもあるけどさ、甘くなくても……俺はあんたに惚れてたと思うよ」
何故だかロクの事を嫌いになるところが全く想像出来ない。
多分俺は、どうしたってロクが好きなんだ。
「ならば私がお前を大事にしているところも見せなくてはな」
そう言ってロクがフッと鼻から息が抜けるように笑った。
俺はフラフラとロクに近付いていき、両手を首に巻き付けてうっとりと見つめる。
「チヤ?」
「あのね、したくなっちゃった。俺を可愛がって?」
「念入りにしてもいいか?」
「凄く、しつこくがいい」
俺は体中に這うロクの手を感じながら、口付けを受け入れた。
身体の細部まで確認するように撫でられ、窪みを擦られ、指で服の上から蕾をグリグリされるだけで腰がへこへこと動いてしまう。
「ロク、たっぷり濡らして……」
「もう濡れてる」
耳朶を噛まれて耳の穴に舌を入れられ、クチュクチュといやらしい音が立つのが恥ずかしい。
ロクは俺が好きで、俺を触るのが好きで、俺がロクの手で乱れていやらしい姿を見せるのを歓ぶ。
最近ではロクの分身を舐めても口に入れても嫌がらないし、先っぽを俺の勃起した乳首に擦り付けて自慰みたくしても怒らない。やっとロクの性器に興奮するんだって信じてくれたみたいだ。
「えっと、擦られながら、舐めたい」
「後で恥ずかしいって文句を言うなよ?」
そう言うとロクは膝の上にぺたりと腹ばいになった俺をくるりと逆向きにして、腰を持ち上げた。
所謂シックス◯インって体位だ。
だから薄物を身にまとって、人前で性的な関係を匂わせる。
この人間は自分に種付けされているのだと、他の雄に見せ付けることで手出しをさせないようにした。
ある意味ではそうすることで弱い人間を他の獣人から守っているとも言えるが、所有権が確かでない人間は少々強引に手を出してもいいって考え方は本当にどうかと思う(それを自由恋愛と言い張るのもな)。
昔の習慣とはいえ、マーキングして周囲を牽制するのはいかにも獣らしい。
「流石に昔ほどあからさまではないが……嫌なら止める」
「ははっ、昔は人前でアレを擦り付けたりしたんだろぉ? 今は腰を抱いたりするぐらいだって言うし、人からどう思われようと構わないさ」
人間の番は娼婦扱いって訳じゃないけど、身も心も服従させてこいつは俺にメロメロなんだぜって周りに思わせる必要があった。
馬鹿みたいだけど、あくまでも獣人が人間よりも上の立場なんだと明確にしなきゃ傍に置くことも出来ない。またレオポルトみたいに、「自分に可愛がられて満更でもないだろう」なんて本気で思う獣人も多かった。
まぁ、それ以前に人間を好まない獣人の方が多いから、わざわざ “人間と対等に” なんて考える奴もいない。
平民で獣人と人間のカップルが普通にいるのは、人間の数が多い為だ。数が多ければ見慣れるし、慣れれば好意だって愛情だって湧く。
「男同士だってのはそんなに問題にならないのにな」
「血さえ残せば良いからな」
ここで言う『血』とは外見のことだ。
ロクサーン侯爵家なら次の跡取りに黒豹型の獣人を用意できればそれでいい。
一族の中から見繕っても、ロクが側室を持っても愛人を持っても構わない。
ただ黒豹の姿かたちさえ次代に残せばいいのだ。
「それって、獣神の影響だったりするのかな」
「兎に角獣の姿は尊い、という思想は王家に近いほど強い。ひょっとしたら、王家には獣神の言葉か何かが残っているのかもしれない」
自分たちに都合の良い、自分たちが正統だと思えるような言葉。それがあるから獣人至上主義なんだろうか?
「俺もロクの見た目は凄く好みだけど、やっぱり好きだからこんなに萌えると思うんだ」
「萌える?」
「んっと、ロクの牙とか毛皮の下で脈打つ筋肉に興奮しちゃうってこと」
獣だったらなんでも良いってなったら流石に俺は変態だと思う。
「私は獣人の中でも容貌が恐ろしい方なんだが……」
ロクが戸惑ったようにそう言った。
そう、本当に不思議なんだけど、ロクは同じ獣人からもちょっと恐れられていたんだよね。館の人たちは平気だけど……育ちが特殊で、貴族にしては粗野ってことがあるにしてもこんなに格好良いのに。
「俺は最初っからロクの身体にそそられてたよ。知ってるだろうけど」
「いや、だがそれは甘味を味わえるから、甘いのが好きだから錯覚していると思っていた」
「確かに、甘いのとエッチなのは一緒にしちゃってたけどね。でも甘いからって、最後までしたいなんて思わないよ」
だって自分よりもずっと大きな男の身体だよ? 牙を剥き出しにした黒い獣に突っ込まれたいなんて、ちょっとやそっとで思うわけが無いじゃん。
「ロクが甘い物を嫌いだから、俺に触るのを嫌がってるから安心してこっちからいけたってのもあるけどさ、甘くなくても……俺はあんたに惚れてたと思うよ」
何故だかロクの事を嫌いになるところが全く想像出来ない。
多分俺は、どうしたってロクが好きなんだ。
「ならば私がお前を大事にしているところも見せなくてはな」
そう言ってロクがフッと鼻から息が抜けるように笑った。
俺はフラフラとロクに近付いていき、両手を首に巻き付けてうっとりと見つめる。
「チヤ?」
「あのね、したくなっちゃった。俺を可愛がって?」
「念入りにしてもいいか?」
「凄く、しつこくがいい」
俺は体中に這うロクの手を感じながら、口付けを受け入れた。
身体の細部まで確認するように撫でられ、窪みを擦られ、指で服の上から蕾をグリグリされるだけで腰がへこへこと動いてしまう。
「ロク、たっぷり濡らして……」
「もう濡れてる」
耳朶を噛まれて耳の穴に舌を入れられ、クチュクチュといやらしい音が立つのが恥ずかしい。
ロクは俺が好きで、俺を触るのが好きで、俺がロクの手で乱れていやらしい姿を見せるのを歓ぶ。
最近ではロクの分身を舐めても口に入れても嫌がらないし、先っぽを俺の勃起した乳首に擦り付けて自慰みたくしても怒らない。やっとロクの性器に興奮するんだって信じてくれたみたいだ。
「えっと、擦られながら、舐めたい」
「後で恥ずかしいって文句を言うなよ?」
そう言うとロクは膝の上にぺたりと腹ばいになった俺をくるりと逆向きにして、腰を持ち上げた。
所謂シックス◯インって体位だ。
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