【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

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61.神格の恩恵−1

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 意外なことにアーロンは他の連中と直ぐに打ち解けた。
 何よりも鳥型の獣人にありがちな人間を見下すということがなかった。
 相手が下働きでも人間でも、分け隔てなく誰とでも仲良くやっている。

「コンドル型の獣人は排他的で人と交流したがらないと聞いてたんだけどな」
 俺が感心したようにそう訊いたら、アーロンがニカッと笑って答えた。

「そういう掟だったからな。でも自由にしていいなら、知りたいことは沢山ある」
「ふぅん。例えば?」
「人間は本当に神霊を持たないのか。コンドル族以外の女はあの病気に罹らないのか。平地の奴らがどんなものを喰ってるのか興味があるし、弱い奴がどうやって生きているのかも知りたい」

(ん~、意外とアーロンはまともなんだな)
 まともというか、機会さえあれば学ぶ意欲も能力もあって、高い知性を見せてくれる。
 彼があのまま狭い世界で一生を終えるのは勿体無かったな。

「コンドルの獣人たちが山で暮らすのは自由だけど、やっぱり一度は降りてきて世間を見て回った方がいいね。短期留学とか交換留学制度を作ろうか」
「短期留学? なんだそれは」
「勉強する為に他所の土地に行くことだね。王族とか貴族にはそういう制度がありそうなものだけど……」
 思わず言葉を濁してロクの方を見たら、こくりと頷かれた。

「王族は人質になる可能性を考慮して国外には出さないものだが、宰相や大臣の子息なんかは他国に留学したりする。ただ、半分は観光みたいな気楽なものも多いし、金もかかる」
 そうか、遠くまで行く旅費とか世話をする人や護衛をする人も必要だし、子供を他国に出すのは贅沢なことなんだね。

「山から降りて、ここの領地に来るだけならコストもそんなに掛からないだろ?」
 仕事を手伝って貰えば食費や滞在費はどうにかなる。

「費用は構わないが、ない腹を探られる恐れがある」
「それは、大昔に鷲型獣人と覇権を争ったコンドル一族を引き入れて、謀反か何か企んでいると思われるかもってこと?」
「そこまでは思わないだろうが、警戒はされるだろう」
 う~ん、放っておけばどうせ滅びるような一族をそこまで警戒するだろうか?
 それよりも、不治の病を治した薬の存在の方が余程に衝撃的だと思う。
 でも広めないことには宗教も広がらないし、そこは覚悟の上だ。

「いっそ、万能薬のことを前面に押し出してみようか」
「どうやってだ?」
「それは、神の薬で救われた一族が神兵となって俺の警護をしているって名目とかかな。一年任期とかにすれば若手の教育にも丁度良さそうだしね」
 まだ社会に出ていない学生の俺がそういうのも変だけど、気分はベンチャー社長ですからぁ。采配を振るっちゃってもいいよね。

「ならこの男も一年で帰すのだな?」
「ん? そういうことになるかなぁ」
 ロクの質問に首を傾げつつ頷いたら、当のアーロンから猛反対された。

「俺は帰らないぞ! 知りたいことは山のようにあるし、イチヤの側で生きると決めた!」

(んんっ、これはちょっとアウトかも……)
 アーロンは神様にコネのある人の近くにいたら自分もいい目が見れると思ったのかもしれないし、或いは純粋に俺が変わっているから興味深いのかもしれない。
 どちらにせよ、俺に執着していることは確かなのでロクを刺激してしまう。

「アーロン、物言いに気を付けろ。これは私のものだと館内にも周知してあるのだ、周りのものからはお前が主の想い人に手を出していると見られるぞ」
 ロクの諫言に隣で聞いていた俺も吃驚した。
 ちょ、聞いてない! 館内に周知したって、どういう風にだよっ!

「俺はっ、愛人とか囲い者に見られるのは嫌だから――」
「当たり前だ。私の番だと言ってある」
(ふぇっ? 番?)

「でもっ、俺はロクの子供を産めないよ? それに人間だし、異世界人だし、礼儀とかマナーとか何も知らないし、きっと社交界で受け入れられないし――」
 兎に角駄目な理由しか思い付かない。
 前にお嫁さんにしてって言ってしまった事もあるけど、でも冷静になればなるほどそれは無理だと思った。
 俺は表立ってロクの隣に立つことは出来ないだろうと諦めていた。でも。

「問題ない。お前がいればそれでいい」
 ロクにあっさりとそう言われ、ブワッと涙が盛り上がった。

「だって俺、女じゃな――」
「イチヤがいいんだ」
 そう言われて口の中を舐められ、俺はロクに縋り付いてぶら下がる。
 人前とかそんなのどうでも良くて、べろべろと口の中を舐め回されて啜られて全てを明け渡す。

「ロク、俺とシて……」
「今日は簡単には終わらないぞ?」
「ん。何をしてもいい」
「ふ、後悔するなよ?」
 甘ったるく囁かれてじんわりと股間が濡れる。
 恥ずかしいけれど服にまで滲み出してしまい、ズボンの前と後ろが濃く濡れた色に変わった。
 俺はロクに抱き上げられ、肩に赤くなった顔を伏せて隠す。
 こんな粗相をしたようなところを見られたくない。

「イチヤッ……」
 アーロンが悔しそうに俺の名前を呼んだが、ロクが気配だけで黙らせた。
 そして寝室に運ばれた俺はロクの前で服を脱ぐように言われる。

「恥ずかしい……」
「ならば私が脱がそうか?」
「……自分で脱ぐ」
 俺はにちゃあ……と糸を引く下着を引き摺り下ろした。
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