【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

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㊵妄想シチュエーション−2(R−15)

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「イチヤ、ここはどうするんだ? ちょっと教えろ」
 ハヌマーンにちょいちょい作業を邪魔されて俺はイライラした。
 でも人に教える為に手順の再確認をすると、不思議と薬を扱うのが容易になる。
 そして本能的にこれで正しいんだ、という手応えを感じる。

(この感覚を覚える事が修行っていうか練習なんだろうけど、これを誰でも身に付けられるようにマニュアル化したら売れるんだろうな~)
 ハウツー本、マニュアル本は異世界では散乱していたけど、ここでは自分で苦労して身に付けるのが当然なんだろう。
 修行に早道はないとか楽しちゃいけないと言われても、ゲームのレベル上げや生産性の向上って考えに余りにも慣れてしまっている俺には無駄に思えてしようがない。
 努力が大事ってのはわかるんだけどさ。
 そんな事をツラツラと考えていたら、俺の作った薬を鑑定した白妙が可愛らしい声で鳴いた。

『レベル五』
 俺はハフッと気の抜けたような息を吐いた。
 とうとう最後までレベルが上った(いや、もしかしたらこの上もあるのかも知れないけど、お師匠様の指示はレベル五だった)。

「イチヤ! やったな! 早速試しに俺が飲んでみよう!」
 お前が飲むのかよ、とは思ったけど嬉しかったし神薬を飲み慣れたハヌマーンの感想も聞きたかったので素直に薬を渡そうとした。
 そこへドロドロとした塊のような物がなだれ込んで来た。


「ロクッ!? それは――神霊なのっ!?」
 ロクが天界には入る事が出来ないと言われている神霊を背負っていた。
 神霊は緑の苔か泥のような物でベッタリと汚れ、息も絶え絶えに見えた。

「何がどうなってんだよっ!?」
「それよりも万能薬を!」
 お師匠様の言葉に慌てて従う。
 俺の作った薬なんかで効くのかとか、神霊が病気になるのかとか色々と疑問に思ったけど後で聞こう。
 今は兎に角、目の前の神霊を元気にしなくては。

「ロクも飲んでおいてっ! いっぱいあるから!」
「私は平気だ。それより何故、効かないっ!」
 ロクがお師匠様に噛み付いたら、お師匠様が難しい顔でなよやかな指を唇に当てた。

「イチヤの作った薬ならば或いはと思ったのですが……材料が天界の物では駄目でしたか」
「他に方法はっ?」
「その方が神格を得た方法ならば、恐らくは効くでしょう」
「……」
 お師匠様の言葉にロクがグッと口を引き結んだ。
 えっと、ロクが神格を得た方法って言うと――。

「他の方法を考えよう」
 俺の顔を見ないまま立ち上がったロクの腕に慌ててしがみつき、強く引っ張った。

「ロク、ちゃんとこっちを見て! 俺は平気だから! 神霊を助けるから!」
「だが言葉も通じない、傷付いて殺気立っている獣だぞ!」
 例え自分の神霊とはいえ、そんな物に俺を預けられない。
 そう目の色で語っている男を俺が放って置ける訳がないじゃん。
 あれはロクの神霊なのに。

「俺は神霊に気に入られてるんだろう? それにあれはロクの分身だ。だから怖くないよ」
 俺が怖がったら甘いのが出なくなる。
 甘くないと多分、効かない。

「怖くない訳がないだろう」
「絶対に怖くない!」
 だから早く、と急かしたらロクが神霊の口に拳を突っ込んだ。

「これなら噛み殺される事はない」
「ロク! 自分の神霊を殺す気かっ!?」
 苦しそうな神霊を見て俺は眉を釣り上げた。
 今は自分で口を開ける力も無いんだからとロクに拳を引かせる。

「お師匠様、多分、バレてるんでしょうけど見られていると集中出来ないので、離れて貰っていいですか?」
「わかりました。終わったら呼んで下さい」
「はい」
 俺が頷いたらお師匠様はハヌマーンも一緒に連れて行ってくれた。
 後は――。

「ロクも恥ずかしいから出ていって」
「駄目だ。見張っている」
 強張った顔がメチャクチャ怖くて、ロクが真剣だって事はわかったけど俺だって譲れない。
 俺は不貞腐れたような態度で言った。

「他の、黒豹に……食べられてるところを見られんのがイヤなんだよ!」
「……ならば益々私がいた方がいい。でないと辛いばかりだろう?」
 慰めてやる、と囁かれてそんな場合じゃないのにカッと頬が熱くなった。
 なんだか惚れた男の為にこれから身体を売ろうとしていて、それを男に見られている……という不思議なシチュエーションを想像してしまった。
 しかも好きでもない男に抱かれるのは辛いだろうから、俺が一緒にいて慰めてやると言われて(そんな事はロクは言っていないが)3Pになだれ込もうとしている。
 いかん、妄想の上に妄想を組み立ててしまって訳がわからない。

「チヤ?」
「あっ、ごめん。直ぐに始めるから――」
 俺は混乱したまま身に着けている物を全て脱いだ。
 裸になったら益々ドキドキして、いけないことをしているような気分になりながら神霊に寄り添うように寝そべった。
 そして甘い物を沢山想像し、アーモンドがたっぷりのハチミツヌガーが口の中から溢れ出したところで神霊の口に舌を押し込んだ。
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