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㊲お供が出来た- 2
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「お師匠様、俺はお師匠様の言う人参果にならないと大神と話せないんですか?」
「いいえ、そなたは特別だと言いましたよ。そなたは自身が上がるよりも、周りに力を貸したり借りたりする方が良さそうです。お供を見つけましょう」
「お供?」
西遊記っぽくなってきたなぁ。それか桃太郎?
「そなたの甘い匂いにつられて供をしても良いというものが、早速来たようです」
お師匠様の言葉のあとで、ブーンと何処からかモーターでも唸っているような音が聞こえてきた。
(え、なに?)
俺が戸惑っている間に、音が大きくなり近付いてきてその正体を現す。
「虫とか怖ぇんですけど!」
黒と黄色のツートンカラー。
毛に覆われた胴体は虫の癖に動物感があるというか、なんか獰猛そう。
複眼は考えを読めないし、これ、襲われそうになってんじゃないよね?
「お師匠様っ!」
「蜂は頭が良く、働き者で、良く仕えます」
「意思の疎通が出来ませんっ!」
「疎通? そんなものは必要ありません。一方的に命じれば良いのです」
蜂は俺の周りにいられるだけで満足するって、俺は砂糖水かよっ。
「蜂の次は白蛇です。蛇は長じて竜になると言われています。それから狐。尾がまだ二本しかありませんが、そなたの妖術の師に丁度良いでしょう。それから――」
「も、もう結構ですっ!」
俺は慌ててお師匠様の言葉を遮った。
動物遣いじゃあるまいし、何が悲しくてこんなに連れ歩かなきゃいけないんだよ。
大体、目立ってしようがねぇわ。
「お供は多ければ多いほど良いですよ?」
「でも、そんな団体がいたら下界で目立って仕方がありません。それに俺はもういっぱいいっぱいです」
奴らは神のお供だから普通のペットのようには世話が要らないのかもしれない。
それでも自分が何を飼っているのかもわからない、なんてのは嫌なんだよ。
「後から増やすのでも構いません。そなたは助けを受ける星の定めにあるようです」
お師匠様の言葉におおっ! と感心する。
困った時には誰かが俺を助けてくれる。
なんてラッキーな定めだろう。
但し俺自身が超人になれる訳ではなくて、そこはちょっと残念だけれどね。
「え~と、蜂さんたちは呼ぶまで少し離れていてくれる? 耳元でブンブンされるとちょっと他の音が聴こえないからさ。白蛇は――あっ、俺の懐に入ってくるんだ。うん、別にいいけど、くすぐったいからじっとしていてね」
俺は蛇は好きでも嫌いでもない。
毒さえなければ問題は――。
「お師匠様っ、この蛇に毒はありませんよね?」
「ええ、毒など不要です」
「不要?」
毒が無いじゃなくて不要?
「白蛇は祟り神でもあります。害しようとすれば呪われるでしょう」
おおぅ、こんなに小さいのに怖い存在なんだね。
っていうか、神を従者にしちゃっていいの?
「自ら降ってきているので構いません。飽きたら自分から離れるでしょう」
そっか。彼らは俺を助けに来てくれたけど、見限られる事もあるんだね。
それは肝に命じておこう。
「最後は狐だけれど、尻尾が二本あるね? 二股じゃなくて、二尾だよね?」
「ケーン!」
二尾の狐は器用にくるりと回って襟巻きに化けた。
なんか洒落になってない気がしたけど、気にしないフリをして襟巻きを首に巻いてみた。
「うわ、もっふもふ! 暖かい! 君の事を一番気に入ったんだけど」
俺が喜んで頬を擦り付けていたら、背後から忍び寄ったロクが俺のうなじに頭を擦り付けて言った。
「私の毛よりも暖かいのか」
「ちょ、ロクはマフラーじゃないだろっ!」
「お前が望むなら、全身を暖めてやるぞ?」
「今はいいってばぁ!」
ふんふんとロクの鼻息が首筋に当たってくすぐったい。
くすぐったいだけならいいんだけど、妖しい気持ちになってきてしまうので困る。
(ロクってばなんで対抗心を燃やしてんの? モフモフで負けたくないって事?)
俺はロクの態度が不思議でしようがなかったけれど、眠る時はロクだけを側におくと約束してなんとか二尾を巻くのを許して貰った。
でも仕方なくといった感じだったので、後でまた宥めないといけないかもしれない。
こうして俺は、ロクの意外な一面を知ってしまった。
「いいえ、そなたは特別だと言いましたよ。そなたは自身が上がるよりも、周りに力を貸したり借りたりする方が良さそうです。お供を見つけましょう」
「お供?」
西遊記っぽくなってきたなぁ。それか桃太郎?
「そなたの甘い匂いにつられて供をしても良いというものが、早速来たようです」
お師匠様の言葉のあとで、ブーンと何処からかモーターでも唸っているような音が聞こえてきた。
(え、なに?)
俺が戸惑っている間に、音が大きくなり近付いてきてその正体を現す。
「虫とか怖ぇんですけど!」
黒と黄色のツートンカラー。
毛に覆われた胴体は虫の癖に動物感があるというか、なんか獰猛そう。
複眼は考えを読めないし、これ、襲われそうになってんじゃないよね?
「お師匠様っ!」
「蜂は頭が良く、働き者で、良く仕えます」
「意思の疎通が出来ませんっ!」
「疎通? そんなものは必要ありません。一方的に命じれば良いのです」
蜂は俺の周りにいられるだけで満足するって、俺は砂糖水かよっ。
「蜂の次は白蛇です。蛇は長じて竜になると言われています。それから狐。尾がまだ二本しかありませんが、そなたの妖術の師に丁度良いでしょう。それから――」
「も、もう結構ですっ!」
俺は慌ててお師匠様の言葉を遮った。
動物遣いじゃあるまいし、何が悲しくてこんなに連れ歩かなきゃいけないんだよ。
大体、目立ってしようがねぇわ。
「お供は多ければ多いほど良いですよ?」
「でも、そんな団体がいたら下界で目立って仕方がありません。それに俺はもういっぱいいっぱいです」
奴らは神のお供だから普通のペットのようには世話が要らないのかもしれない。
それでも自分が何を飼っているのかもわからない、なんてのは嫌なんだよ。
「後から増やすのでも構いません。そなたは助けを受ける星の定めにあるようです」
お師匠様の言葉におおっ! と感心する。
困った時には誰かが俺を助けてくれる。
なんてラッキーな定めだろう。
但し俺自身が超人になれる訳ではなくて、そこはちょっと残念だけれどね。
「え~と、蜂さんたちは呼ぶまで少し離れていてくれる? 耳元でブンブンされるとちょっと他の音が聴こえないからさ。白蛇は――あっ、俺の懐に入ってくるんだ。うん、別にいいけど、くすぐったいからじっとしていてね」
俺は蛇は好きでも嫌いでもない。
毒さえなければ問題は――。
「お師匠様っ、この蛇に毒はありませんよね?」
「ええ、毒など不要です」
「不要?」
毒が無いじゃなくて不要?
「白蛇は祟り神でもあります。害しようとすれば呪われるでしょう」
おおぅ、こんなに小さいのに怖い存在なんだね。
っていうか、神を従者にしちゃっていいの?
「自ら降ってきているので構いません。飽きたら自分から離れるでしょう」
そっか。彼らは俺を助けに来てくれたけど、見限られる事もあるんだね。
それは肝に命じておこう。
「最後は狐だけれど、尻尾が二本あるね? 二股じゃなくて、二尾だよね?」
「ケーン!」
二尾の狐は器用にくるりと回って襟巻きに化けた。
なんか洒落になってない気がしたけど、気にしないフリをして襟巻きを首に巻いてみた。
「うわ、もっふもふ! 暖かい! 君の事を一番気に入ったんだけど」
俺が喜んで頬を擦り付けていたら、背後から忍び寄ったロクが俺のうなじに頭を擦り付けて言った。
「私の毛よりも暖かいのか」
「ちょ、ロクはマフラーじゃないだろっ!」
「お前が望むなら、全身を暖めてやるぞ?」
「今はいいってばぁ!」
ふんふんとロクの鼻息が首筋に当たってくすぐったい。
くすぐったいだけならいいんだけど、妖しい気持ちになってきてしまうので困る。
(ロクってばなんで対抗心を燃やしてんの? モフモフで負けたくないって事?)
俺はロクの態度が不思議でしようがなかったけれど、眠る時はロクだけを側におくと約束してなんとか二尾を巻くのを許して貰った。
でも仕方なくといった感じだったので、後でまた宥めないといけないかもしれない。
こうして俺は、ロクの意外な一面を知ってしまった。
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