【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり

文字の大きさ
上 下
10 / 194

⑤警戒心を忘れずに!−1(R-15)

しおりを挟む
 黒豹の獣人には警戒心が足りないと思う。
 甘い物が嫌いな癖に、奴は簡単に口を差し出す。
 俺がロクの濡れた鼻が可愛いと思っている事とか、長い口の横からぷちゅっと唇を付けるのが好きな事とか、ペロペロと舐められると拒めなくなってしまう事を全く知らない。
 知らないからちょっと口を舐めてやるくらいのつもりで舌を絡めてくる。


(あま……)
 もう何度目か、黒豹の舌で口の中を掻き回されると俺はぼんやりと頭の中が靄んでくる。
 甘くて、美味しくて、時にはハッカのような清涼な香りのするそれは段々と腰の奥が重くなるような饐えた匂いに変わる。
 熟した柿が口内に溢れるような、とろりと蜜が舌に絡みつくような濃厚な甘さは俺に別の感覚を運んでくる。

(マズイマズイ、このままじゃまた擦れるだけでイッてしまう)
 舌が擦れるだけで軽く達した俺を、ロクは気付かずにジュルジュルと啜った。
 ダメダメ啜らないでって腕を突っ張ったけれど、そんなの奴にしてみたらただ手を当てられているだけだ。
 気にせず啜られて俺は意識を飛ばしそうになった。

『チヤ?』
 生きているかと確認するような問い掛けに、俺は瞑っていた目を必死に開けて答える。
『起きてるよ、大丈夫。ありがとう、ご馳走様』
 今日も美味しかったよ、と俺がイケメンぶって笑い掛けてデザートは終了。
 ロクは溜め息を吐いて口を濯ぎにいく。

(あぁ、今日も嫌な事をさせてしまった)
 溜め息なんて吐くならやめときゃいいのに。
 義務みたいにキスをしなければいいのに。
 でも俺は断れないんだよなぁ……。

 俺はロクの態度に傷付きながらも与えられるものを拒めない。
 だってこれまでに味わったことがないくらい美味しくて、甘露みたいなそれに俺はすっかり夢中になっていた。
 こっそりと見つからないように軽くイクのだって背徳的で堪らない。
 まるで悪い遊びに嵌った中学生みたいだ。


「ロクぅ~、たまには別行動をしない?」
 じっと上目遣いにロクの顔を見上げながらそう言ったら、ロクは面食らったような顔をしていた。

「別行動? 何故だ? 護衛が無ければ外を歩けまい」
「そこまで弱っちくはないよ。まあ、短時間なら」
「何かしたいことがあるのか? それとも私がお前の気に障る事をしたか」
「いやぁ、そうじゃなくて。ロクも俺に付きっ切りじゃあ気が休まらないだろ? たまには息抜きをして来いよ」
 こいつの性欲がどうなってんのか知らないけど、幾らなんでもそろそろ発散したいだろう?
 シャワーとかトイレとか着替えとか、一人になった時に処理をしているにしても限界がある。

「息抜き……それは必要か? アレだけじゃ足りないのか?」
「いや俺の話じゃなくて」
 そりゃあ、俺もこいつがいなくなったら抜こうとは思ってたけどさ。
 でも別に足りないからするって訳では……。

「一人でどうやるんだ? 自分の指を舐めるより、俺の舌を啜る方がずっと美味いと言ってたじゃないか」
 言い方! それはそうかもしれないけど言い方をもう少し考えて!

「甘味以外にも楽しみはありますぅ~」
「なんだ?」
 酒も噛み煙草もやらない癖に、と言外に言われて言葉に詰まる。
 ここにはネットもゲームも無いし、俺は賭け事もやらない。

「えーとぉ……」
「私以外の獣人は危険だぞ?」
 ロクは俺がロクとのキスだけでは不足で他でも試したがっているとでも思ったのか、そんな事を言った。

「他の奴としようなんて思ってないよ!」
「なら別行動を取る必要もないな」
 そう言ってロクは俺の提案をあっさりと潰した。
 こういうところだけ強引で狡い。

(ロクの為に言ってんのに……)
 だって俺だけ楽しんじゃってるけど、ロクは溜め息を吐くくらい嫌なんだろう?
 外で気晴らしをしたら、少しは我慢しやすくなるんじゃないかって思ったんだよ。
 でないと……ほら、身体だけこんな事になってる。

 ***

 俺は身動きが取れずに石のように固まっていた。
 それはもう、カチンコチンのオブジェだと思ってくれればいい。

(だって少しでも身動ぎしたら、俺の尻の間に挟まってるアレが、擦れてもっと育ちそうなんだもん!)
 今俺は、ベッドで後ろからロクに抱え込まれている。
 一人部屋を一つしか取れなかったから仕方がないんだけど、同衾することになった流れは覚えていないんだけど、気が付いたら尻の間に固いものが当たっていてちょっとでも動いたら擦れてしまいそう。
 ロクは甘い匂いが嫌いだから俺に反応したんじゃない。でも禁欲生活が続いていたから、弾みでこうなる事もあるんだろう。

(だから外で発散してこいって言ったのに!)
 俺はこの状況が恥ずかしくて、困惑して、胸の中で悪態を吐かずにいられない。
 そうしたらずるりと尻の間をアレが滑って、益々猛ったモノがずくんと脈打った気がした。

(なぁ、本当に寝てるの? これ、どうにかしなくて大丈夫?)
 俺を抱き枕のように腕の中に抱え込んでいる男は、たまに鼻面を後頭部に突っ込んでくるものの大人しい。
 寝た振りをしている訳でも、不埒な事を考えているんでもない。

(あんたに疚しい気持ちはないのかもしれないけど、これじゃあ俺が生殺しだよ……)
 獣人の腕の中はぬくぬくとしてとても温かくて居心地が好い。
 なのに凶器を突き付けられてそこだけ気が気じゃない。
 偶然のようにたまに擦れるのがヒヤヒヤする。

(どうせなら、はっきりと擦ってくれたら俺だって耐えたのに)
 俺で抜いてくれるんなら寝た振りで見逃してやったのに、ロクにそんな気はない。ただ身体が反応してしまっているだけなのだ。

(いっそ俺が抜いてやる?)
 腰を後ろに突き出して、尻を擦り付けたらイクんだろうか?
 でも途中で起きちゃったら? 俺が奴に尻を擦り付けているのを見てどう思うだろう? 痴漢をされていると、淫乱だと思われないだろうか?

(こいつに軽蔑されたら……キツいな。ただでさえ節操なしだと思われているかもしれないのに)
 この上俺からロクに手を出したと思われるのは避けたい。
 どうしよう、とジリジリとしていたら俺を抱き締めていた腕がグッと縮まって、手のひらが身体中を彷徨い出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

処理中です...