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第二章 転生するにしても、これは無いだろ!
第三十四話
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「あ、その……兄上、申し訳ありません、咄嗟に……」
「ジル、ありがとう。ごめんな。こんなどうしようもない悪役で、ごめん」
ジルラッドの腕を取り、光魔法を発動させる。自分でつけた傷だからか、効き目が悪い。それでも、絶対に跡は一つとして残したくなかったから、全力で魔力を振り絞った。
「兄上、教えていただけませんか……? そこまで憔悴なさるまで、兄上を苛むものは、一体……」
「ジルが気にすることじゃない。もう、俺と関わることは無いんだから」
「そんな……! お願いします、僕は……っ」
「ジル」
ただ、首を振る。分かってくれ。もうこんなことたくさんなんだ。
自分がこれ以上この子を傷つけてしまう事に怯え続けるのなんて、耐えられない。
ああ、最初は何が何でも生きたいって思ってたはずなのに。いつしか、この子を傷つけてしまうくらいなら、と思うようになった。多分、今は生きている方が苦しくて、辛いからだろう。
でも、出来るところまで足掻いていたいんだよな。だって、前世もホントはやりたいこととか結構沢山あったんだ。
家族に言っておけばよかった、してやれたらよかった、って思うことばかりで。思いがけず死んじゃったから、全部ありえない話になった。
勿体ないんだ、結局。もしかしたら、に縋ってしまうほど、俺は前世の穏やかな暮らしが恋しくて仕方ない。
やりたいことは大体やらせてもらってたし、なりたいものを否定されたことなんて無かった。
毎日あったかくて安心しかないご飯を食べさせてもらって、心配はそれなりにされたけど、干渉はそこまでしてこなくて。
今と昔を思うと、嗚呼、あの時って本当に幸せだったんだな、と、泣きそうなくらいに思う。
そんな、前世のような穏やかな幸福を、今世で思い出させてくれたのが、ジルラッドだったのだ。たった唯一のやすらぎだった。だから、縋ってしまった。
踏ん切りをつけるために、俺は何とか足腰に喝を入れて立ち上がり、目の前に広げられた画材用具に手を翳して、魔法で全部粉々にした。土に帰ってくれ、俺の未練。
「俺はもう、絵をかくのをやめるよ。今までありがとう、ジルラッド」
無理にでも笑ってやった。それが、今俺が殺した未練への餞別のつもりだった。
ジルラッドがどんな顔してるか知りたくなかったから、めいいっぱい目を細めて。きっと不細工な笑顔だったろう。
踵を返して地獄に戻る。いつか、耐えた先に、望むものがあると信じて。
どんなに絶望的だと分かっていても、無力な俺には、そうする以外にできることなど無いのだから。
「ジル、ありがとう。ごめんな。こんなどうしようもない悪役で、ごめん」
ジルラッドの腕を取り、光魔法を発動させる。自分でつけた傷だからか、効き目が悪い。それでも、絶対に跡は一つとして残したくなかったから、全力で魔力を振り絞った。
「兄上、教えていただけませんか……? そこまで憔悴なさるまで、兄上を苛むものは、一体……」
「ジルが気にすることじゃない。もう、俺と関わることは無いんだから」
「そんな……! お願いします、僕は……っ」
「ジル」
ただ、首を振る。分かってくれ。もうこんなことたくさんなんだ。
自分がこれ以上この子を傷つけてしまう事に怯え続けるのなんて、耐えられない。
ああ、最初は何が何でも生きたいって思ってたはずなのに。いつしか、この子を傷つけてしまうくらいなら、と思うようになった。多分、今は生きている方が苦しくて、辛いからだろう。
でも、出来るところまで足掻いていたいんだよな。だって、前世もホントはやりたいこととか結構沢山あったんだ。
家族に言っておけばよかった、してやれたらよかった、って思うことばかりで。思いがけず死んじゃったから、全部ありえない話になった。
勿体ないんだ、結局。もしかしたら、に縋ってしまうほど、俺は前世の穏やかな暮らしが恋しくて仕方ない。
やりたいことは大体やらせてもらってたし、なりたいものを否定されたことなんて無かった。
毎日あったかくて安心しかないご飯を食べさせてもらって、心配はそれなりにされたけど、干渉はそこまでしてこなくて。
今と昔を思うと、嗚呼、あの時って本当に幸せだったんだな、と、泣きそうなくらいに思う。
そんな、前世のような穏やかな幸福を、今世で思い出させてくれたのが、ジルラッドだったのだ。たった唯一のやすらぎだった。だから、縋ってしまった。
踏ん切りをつけるために、俺は何とか足腰に喝を入れて立ち上がり、目の前に広げられた画材用具に手を翳して、魔法で全部粉々にした。土に帰ってくれ、俺の未練。
「俺はもう、絵をかくのをやめるよ。今までありがとう、ジルラッド」
無理にでも笑ってやった。それが、今俺が殺した未練への餞別のつもりだった。
ジルラッドがどんな顔してるか知りたくなかったから、めいいっぱい目を細めて。きっと不細工な笑顔だったろう。
踵を返して地獄に戻る。いつか、耐えた先に、望むものがあると信じて。
どんなに絶望的だと分かっていても、無力な俺には、そうする以外にできることなど無いのだから。
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