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第二章 転生するにしても、これは無いだろ!
第二十七話
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作戦3 ジルラッドにはもう近づかないようにしよう?
さて、ここ1カ月蔵書室で調べものやら魔法の練習を繰り返し、色々と分かったことがある。
まずは、基本的な魔法についての知識だ。
これは小説でも描写されていたことだが、魔法は基本4属性(水・火・土・風)で分類され、それぞれに初級から神級まで7段階の等級がある。
特殊属性なるものも存在し、まずジルラッドやウルラッド父さんが使える雷、治癒魔法が使える光(聖職者に多い)、魔獣などを従える事の出来る闇が代表的なもの。
特殊属性は初級から中級が存在せず、上級からの等級付けになるらしい。
そもそも、属性に関わらず、魔法の素質を持つ者は、よほどのことが無い限り、修練によって4属性の中級魔法までは使えるようになるのだという。
因みに、一般魔法技能検定3級の取得条件は、この中級魔法が4属性全て使えるようになることだ。派生魔法についても、4属性の中級魔法が全て使えれば必ず修得できるとされている。
しかし、上級以上の行使になると、その魔力が持つ適性に大きく依存する。つまり、自分の生まれ持った適性でないと、上級・特級・天級・神級の魔法は使えない。同時に、相当の魔力出力量が無ければ、同様に発動が出来ない。
そして、次に魔力量について。生まれ持った魔力量が多ければ多いほど良いのは勿論だが、これは修練によってある程度伸ばすことが出来る分野だ。
厳密に言えば、魔力をため込むことの出来る器については、修練でも変わりようのない所なのだが、魔力を持ちうる量がいくら多いからと言って、同様に出力量が大きいとは限らない。
修練によって伸ばすことが出来るのはこの出力量と、器にため込む魔力を体内で作る事の出来る量。
勿論、魔法の腕が上の段階に行けば行くほど、各人の素質が大きく実力の差を左右することに違いはない。
しかし、元々器が大きいのに、全く修練を積まなかった人間と、前者の10分の一しか器が無いものの、弛まぬ鍛錬を積んできた人間なら、圧倒的に後者が強いというわけだ。
次に、これを踏まえて、俺の魔法の才能について。恐らくなのだが、生まれ持った魔力の器については普通より少しばかり上くらいのものだ。
そして、使える魔法の属性なんだが、これは普通、ガラリア国民が生まれて教会で洗礼を受ける時に、魔法が使える素質の有無と共に判明するらしいんだが、俺はそれについて知らない。
男子高校生だった時の俺が知らないのはともかく、ベルラッドとして生きてきた俺の記憶にも無い。ベルラッドの記憶力の無さを疑うべきか、それとも……といった所なのだが、兎も角。
色々と魔法を自分で試してみて分かったことだが、俺は現時点で4属性の中級魔法が全て使える。
やけに持っている魔法の手数が多いなとは思っていたが、どうやらベルラッド(覚醒前)は、魔法の修練については結構真面目に取り組んできていたらしい。
しかし、それ以上がとんとダメ。4属性全ての上級魔法と雷電魔法を試してみても、魔力については全くの問題が無いのに、うんともすんとも言わない。
ベルラッドがジルラッドをねたんでいた何よりの理由は、おそらく自分が雷電魔法を使えないからだったのだろう。
雷電魔法はガラリア王家一子相伝だ。まあ、雷電魔法が使えたから即ち王太子内定と一概には言えないらしいが。
しかし、俺はもう前の俺ではない。なんて喜ばしい事だろう、俺はもう、薬師資格取得のために必要な要件を一つクリアしているも同然なのだ!
しかも、薬師の調合のために修得が必要な魔法を試してみれば、難なく使えてしまうではないか!
ベルラッドも捨てたもんじゃない。そりゃあ、ジルラッドに比べれば、俺の魔法の才能なんて器用貧乏以外の何物でもないだろう。
ベルラッド(覚醒前)が求めていたであろう、かっこよさ、派手さ、威容なんてものは皆無だ。
しかし、だから何だというんだ! 俺は王になんてならないし、ジルラッドと戦うことも無い!
影薄くフェードアウトして、なんかこう、平和で長閑な郊外の村とかで、腰痛やら肩こりやらに悩むおじいちゃんおばあちゃんの相手をしながら絵とかもいっぱい描いて穏やかに暮らす、そんな感じでいいんだよ。最高じゃないか、スローライフ!
今日の俺は、着々と将来設計が固まってきた快感からか、どうにもテンションが最高潮。ここに、優しい涼風が頬を撫でる心地良い快晴が加われば……やるしかないでしょ、お外でお絵かき!!
……とまあ、ここで運動が出ないあたり、いつまでもたっぷり蓄えた贅肉が落ちない理由かも知れないが。
別に構わない。俺が美しくなくても、俺の描く物が美しければ、それでいいのだ。一応間食とか脂っこい食べ物とかやめたから、少しずつ身軽になってはいるんだ。多分。きっと。おそらく……(徐々に弱まる自信)。
痩せる薬とか無いかな……なんて考えつつ、俺は王宮の中庭に陣取ってガゼボのあたりなんかを切り取って絵を描いてみることにした。
誰もいないのはちょっと寂しい。俺は人体が好きなので、風景画にも人がいる方が、気分もノッていいのだが。
俺は丁度二階のバルコニーの影になるところに座り、日向にイーゼルに画板とスケッチブックを立て掛ける。
片目を閉じて鉛筆の先を風景にあてがうなんてベタな絵描き仕草をしてみたり。いやまあ意味のない仕草じゃ決してないんだけど。
俺は一度スケッチブックに向き合うと、全く他の情報を遮断してしまう癖がある。視覚以外の五感がなくなってしまうというか、集中しすぎるというか。俺が欲しい情報以外は全部遮断してしまうのだ。
「え?」
だから、目の前で何が起こったか、俺は一瞬分からなかった。
さて、ここ1カ月蔵書室で調べものやら魔法の練習を繰り返し、色々と分かったことがある。
まずは、基本的な魔法についての知識だ。
これは小説でも描写されていたことだが、魔法は基本4属性(水・火・土・風)で分類され、それぞれに初級から神級まで7段階の等級がある。
特殊属性なるものも存在し、まずジルラッドやウルラッド父さんが使える雷、治癒魔法が使える光(聖職者に多い)、魔獣などを従える事の出来る闇が代表的なもの。
特殊属性は初級から中級が存在せず、上級からの等級付けになるらしい。
そもそも、属性に関わらず、魔法の素質を持つ者は、よほどのことが無い限り、修練によって4属性の中級魔法までは使えるようになるのだという。
因みに、一般魔法技能検定3級の取得条件は、この中級魔法が4属性全て使えるようになることだ。派生魔法についても、4属性の中級魔法が全て使えれば必ず修得できるとされている。
しかし、上級以上の行使になると、その魔力が持つ適性に大きく依存する。つまり、自分の生まれ持った適性でないと、上級・特級・天級・神級の魔法は使えない。同時に、相当の魔力出力量が無ければ、同様に発動が出来ない。
そして、次に魔力量について。生まれ持った魔力量が多ければ多いほど良いのは勿論だが、これは修練によってある程度伸ばすことが出来る分野だ。
厳密に言えば、魔力をため込むことの出来る器については、修練でも変わりようのない所なのだが、魔力を持ちうる量がいくら多いからと言って、同様に出力量が大きいとは限らない。
修練によって伸ばすことが出来るのはこの出力量と、器にため込む魔力を体内で作る事の出来る量。
勿論、魔法の腕が上の段階に行けば行くほど、各人の素質が大きく実力の差を左右することに違いはない。
しかし、元々器が大きいのに、全く修練を積まなかった人間と、前者の10分の一しか器が無いものの、弛まぬ鍛錬を積んできた人間なら、圧倒的に後者が強いというわけだ。
次に、これを踏まえて、俺の魔法の才能について。恐らくなのだが、生まれ持った魔力の器については普通より少しばかり上くらいのものだ。
そして、使える魔法の属性なんだが、これは普通、ガラリア国民が生まれて教会で洗礼を受ける時に、魔法が使える素質の有無と共に判明するらしいんだが、俺はそれについて知らない。
男子高校生だった時の俺が知らないのはともかく、ベルラッドとして生きてきた俺の記憶にも無い。ベルラッドの記憶力の無さを疑うべきか、それとも……といった所なのだが、兎も角。
色々と魔法を自分で試してみて分かったことだが、俺は現時点で4属性の中級魔法が全て使える。
やけに持っている魔法の手数が多いなとは思っていたが、どうやらベルラッド(覚醒前)は、魔法の修練については結構真面目に取り組んできていたらしい。
しかし、それ以上がとんとダメ。4属性全ての上級魔法と雷電魔法を試してみても、魔力については全くの問題が無いのに、うんともすんとも言わない。
ベルラッドがジルラッドをねたんでいた何よりの理由は、おそらく自分が雷電魔法を使えないからだったのだろう。
雷電魔法はガラリア王家一子相伝だ。まあ、雷電魔法が使えたから即ち王太子内定と一概には言えないらしいが。
しかし、俺はもう前の俺ではない。なんて喜ばしい事だろう、俺はもう、薬師資格取得のために必要な要件を一つクリアしているも同然なのだ!
しかも、薬師の調合のために修得が必要な魔法を試してみれば、難なく使えてしまうではないか!
ベルラッドも捨てたもんじゃない。そりゃあ、ジルラッドに比べれば、俺の魔法の才能なんて器用貧乏以外の何物でもないだろう。
ベルラッド(覚醒前)が求めていたであろう、かっこよさ、派手さ、威容なんてものは皆無だ。
しかし、だから何だというんだ! 俺は王になんてならないし、ジルラッドと戦うことも無い!
影薄くフェードアウトして、なんかこう、平和で長閑な郊外の村とかで、腰痛やら肩こりやらに悩むおじいちゃんおばあちゃんの相手をしながら絵とかもいっぱい描いて穏やかに暮らす、そんな感じでいいんだよ。最高じゃないか、スローライフ!
今日の俺は、着々と将来設計が固まってきた快感からか、どうにもテンションが最高潮。ここに、優しい涼風が頬を撫でる心地良い快晴が加われば……やるしかないでしょ、お外でお絵かき!!
……とまあ、ここで運動が出ないあたり、いつまでもたっぷり蓄えた贅肉が落ちない理由かも知れないが。
別に構わない。俺が美しくなくても、俺の描く物が美しければ、それでいいのだ。一応間食とか脂っこい食べ物とかやめたから、少しずつ身軽になってはいるんだ。多分。きっと。おそらく……(徐々に弱まる自信)。
痩せる薬とか無いかな……なんて考えつつ、俺は王宮の中庭に陣取ってガゼボのあたりなんかを切り取って絵を描いてみることにした。
誰もいないのはちょっと寂しい。俺は人体が好きなので、風景画にも人がいる方が、気分もノッていいのだが。
俺は丁度二階のバルコニーの影になるところに座り、日向にイーゼルに画板とスケッチブックを立て掛ける。
片目を閉じて鉛筆の先を風景にあてがうなんてベタな絵描き仕草をしてみたり。いやまあ意味のない仕草じゃ決してないんだけど。
俺は一度スケッチブックに向き合うと、全く他の情報を遮断してしまう癖がある。視覚以外の五感がなくなってしまうというか、集中しすぎるというか。俺が欲しい情報以外は全部遮断してしまうのだ。
「え?」
だから、目の前で何が起こったか、俺は一瞬分からなかった。
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