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第一章 死ぬにしたって、これは無いだろ!

第二話

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 とりあえず、ソファに置いてあったクッションを持ってきて、スマセ、スマセ、などと唱えながら頭の下に敷いてみる。

 女性の頭とか触っちゃって、後でセクハラとかで訴えられたりしないだろうか……? え、怖い。とりま離れて正座でもしておこう。ボクハナニモシテマセン。

 てか何? 人の顔見た途端声も出さずに卒倒て。この世界美醜逆転世界とかだったりする? せっかく美形になったと思った矢先の絶望? 

 床にのの字を書きながら色々と悪い想像をしてしまう。もしかして顔じゃなくて俺が部屋の中で変な儀式してると思っちゃったとか? いたって普通の健康体操だよ、怖くないよー、肩こり腰痛にも効きますよ……。

「ハッ……! わ、私は、何を……」

 あ、起きた。目覚め早すぎワロタ。気絶時間1分もあったかな?

「だ、大丈夫ですか……?」

 おずおずと挙手しながら、あまり刺激しないように声をかけてみる。また卒倒されでもしたらなんか永遠に堂々巡りしそうだ。勘弁してほしい。

「あれ……? もしかしてまだ夢の中? おかしいですね……」

 こめかみを押さえながら、俺の顔を見て首をかしげつつそんなことを口走るメイドさん。

 なんでや、どうしてそんな考えに至った? おじさんに教えてくれ。この人インテリそうな見た目してるのに意外とポンだったりするのか。

「多分現実だと思います……いやまあ俺も夢であってくれとは思いますが」

 手の皮とか抓ってみればちゃんと痛いよ。

 因みに俺は左手の皮膚を抓りすぎてハチにでも刺されたんかってくらい腫れてる。そしてちゃんと痛かった。今も痛い。単純に馬鹿です。

「なんて、こと……! お目覚めになられたのですね、ベルラッド様!!」

「ベルラッド? 俺?」

「ええ、ええ! ベルラッド様! こうしちゃいられません、只今、医者を呼んでまいりますので!」

 そういってインテリっぽいメイドさんはシャンと一礼し、スカートを翻しながら颯爽と駆けて行った。

 おお、めちゃくちゃインテリっぽいスタイリッシュな身のこなしだ。なんかマシンガンとかぶっ放しそうなメイドさんだな~! ガーターホルスターにベレッタ忍ばせてたりしないかな(オタク特有の思考・言動)。

 ほんで、今の俺の名前はベルラッドって言うのか~! ついでに様付け! 俺ってばやんごとなき身分の人だったりするのかな?

 ん? ベルラッド? なんか聞き覚えがあるような……。

 え“、ちょっと待って、まさか、まさかそんなこと。いや、ないないないない!!

 えー、でも、ベルラッド……俺が電車にひかれる直前まで読んでいたネット小説の登場人物と同じ名前だ。

 そして、そいつの身分は王子もとい王様だったから、様付けにも納得がいく。

 いや、でも、たまたま、たまたまだろ!!

 それに、その小説におけるベルラッドの外見描写と、今の俺では、だいぶ齟齬がありすぎる。

 きっと思い違いだろう、そうであってくれ。

 でないと、俺は……。
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