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第一章 死ぬにしたって、これは無いだろ!

第一話

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 知らない天井だ……なーんて、言うと思ったか!! どうも、ついさっきまで平凡な男子高校生だった者です。因みに電車にひかれて死にたてホヤホヤです。

 死人がよくしゃべるなって? 黙って土に還っとけ? どうしてそんなひどいこと言うの?

 俺だって好きで喚き散らしてるわけじゃないんだよ!

 そう! 駅のホームで並んでたら背後から押されたかなんかして、線路に飛び出し電車の鼻先と体がごっつんこしてフライアウェイ! したとたん、なんか知らない部屋のフカフカのベッドで目覚めたんですよね。

 まあ、普通に。は? ですよね。

 奇跡的生還を果たして病院のベッドの上にいるのかと一度は希望的観測をしてみたものの、まあありえないなって結論に至った。

 俺さ、はねられてから数秒間くらい、意識があったんよ。

 自分の身体がどうなったかもしっかりこの目で見ちゃって。

 まあ、察してくれ。

 思い出しても仕方のない事なんてひとまず置いておいて、鏡でも見てみるかな。

 はい、自分の顔に見覚えがなさすぎるとかいう意味不現象。

 悲しいけど、ついさっきまでの俺は、平凡な高校生の身の丈に合った感じの、所謂可もなく不可もないフツメンだった。

 こんな、ちょっと不健康そうな顔色とこけた頬が玉に瑕だけど、目鼻立ちもくっきりしてて結構整った、なんというか、華のある顔面はしてなかった!!

 うん、自分で言っててなんか恥ずかしくなってきた。

 ともかく、平凡な男子高校生だった俺との共通点はボサボサの黒髪くらいしかない、それなりの美形な、全く知らない顔をしているのだ、鏡の向こうにいる今の俺は!! 

 てかこれ完全に日本人の顔立ちじゃねぇんだよな。目の色もやや白っぽいグレーだし。

 鼻たっか、掘りふっか。誰だよ俺。

 どういうこと? この事態を招いた何がしかの存在がいるなら説明責任を果たすべきでは。

 わけわからんまま電車にひかれてわけわからんまま知らん人になってた俺が可哀そうだと思わないのか? 

 まあ「あの時電車にはねられて死んじゃったけど前世よりイケメンに転生させてもらってラッキーだろ? 感謝しろよ」とか言われたら普通にひっぱたくけど。余計なお世話にも程があるんだよね。

 嫌だなー、俺不測の事態とか理解の及ばない状況とかめちゃくちゃ嫌いなんだよなー。事なかれ主義の日本人なので。結局平穏無事しか勝たんのよ。

 今の状況なんて平穏無事からかけ離れたもんだけど。転生させるにしてももっとイイカンジの人材いなかった?

 例えば……そう、多分、大〇洋とか。そっちの方が絶対に面白いよ。母さぁ~ん!! 僕は今、異世界にいまぁ~す!!

「いやー、意味が分からんにも程があるってばよ。流石に勘弁してください。電車にはねられたってだけでも度し難いのに、その直後にこんな不可解をぶつけてこないで欲しいですね。不可解には不可解をって? 俺はメソポタミア人じゃねえよ!! 法治国家が来い!」

 めちゃくちゃ独り言うるさいですね、すみません。どこにでもいる孤独なライトオタなもんで。はい、黙ります。

 でもな、そうでもしないと、こんな状況下では正気なんて保てたもんじゃねえんだ許せ。

 てか関節と言う関節全部ギシギシなんだが。体滅茶苦茶重いし。この体骨と皮しか無くね? 筋肉とか言う概念のない世界? もしかして。それ何てディストピアです? 力こそパワーっつってんだろがい。

 なんか知らんけどこの部屋外に通じてそうなの天窓くらいで、俺が内部から外に出ようと思ってもどこが扉か分かんないんだよね。密室も密室。

 幽閉って文言が一番しっくりくるけど、怖いからそれ以上考えないことにした。

 室内の設えとかは牢獄って感じじゃなくて、寧ろなんというか、清潔だし、豪華だ。

 今の俺が罪人ってことはないだろう。多分。そうだといいな……。いやだって罪人の牢屋にこんな高級ホテルのスイートみたいな部屋用意するか? 

 高級ホテルのスイートなんか入ったこと無いけど多分こんな感じだろって思うくらいには広いしベッドもプールみたいに広いしフカフカで他の調度品も高級そうだ。

 分からんなぁ、と首をかしげながら、取り敢えずギシギシに凝った身体を解すため、ラジオ体操でもやってみることにする。

 うわ待って人間の身体ってこんなに固くなることある!?!? 一周回って面白くなってきた。前屈で指先が床につかないとかそういう次元じゃないぞ、指先が脛にも届かない。ウケる。

 ウヒヒ、ヘヘ……とキショイ笑い声を上げながらラジオ体操をするとかいう不審者感丸出しの惨状を繰り広げている俺だが、部屋に一人でいる時の人間なんてこんなもんだろうと思う。

 寝起きだし、常識ではありえない出来事アンビリバボーの連続で頭の何かしらのタガが外れてたし。

 だから、この部屋に誰かが入ってきた時の想定なんてしているはずがなかった。

 ちょうど体をねじる運動の最中で、下手な仮面ラ〇ダーのポーズみたいな感じでキメていたところに、どこからともなく現れた自動扉の、その向こう側から入ってきたクラシックなメイド服を着た女性と目が合って。

「ヒッ」

 どうしよう。この人、卒倒しちゃった。

 ええ……?
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