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329 ユイトのお料理教室

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「お~! イイ感じ!」
「まぁ~! 真っ白ですね……!」
「いい匂いです!」
「美味そうだ……!」

 ローレンス商会に用意してもらった鍋の確認の為、一足先にお米を炊いてみる事に。
 いつもより少し大きめの鍋を使ったからちゃんと炊けるか心配だったけど、蓋を開けるとそこにはふっくらツヤツヤの美味しそうな白米が。
 一粒一粒が立っていて、見た目は問題なさそうだ。場所を提供してくれている教会の修道女シスターさんも初めて見るお米に興味津々。
 それよりも……。

「どうしてユイトさんが炊いたコメはこんなにふっくらと……?」
「私達が試した物と全く違いますね……」
「やはり先程の手順では……?」

 そうブツブツ呟きながら、ローレンス商会の会長ネヴィルさんと一緒に来ていた商会の人達が集まって炊き上がったお米を凝視していた。集まっている人達はどの人も荷物を運んでくれている他の人達より上の役職みたい。

「皆さん、味見してみますか?」
「いいんですか?」
「「「是非!」」」

 にこにこしているシスターさんと、お米を見つめ唸っているネヴィルさん達にも味見をお願いし、皆で熱々の白米をパクリと一口。
 肝心の味は~……?

「……うん! 美味しい!」
「あら……! 噛むと甘味を感じますね?」
「それに粒がふっくらしてますね……。こんなに違うとは……」

 芯も残ってないし、これなら大丈夫! ネヴィルさん達はどうしてと言いながらずっとお米と睨めっこしている。シスターさんもその様子に苦笑いだ。後は蒸らして試食用に置いておこう。

「他の皆さんより先に試食してしまいましたけど、もっちりしてこれならお腹が膨れそうですね」
「あ、本当ですか? 食感や味に抵抗は?」
「いえ、全く!」
「よかった~! 味も子供たちに受け入れてもらいやすい様に弟たちが好きなレシピを中心にお教えしますので!」
「弟さん達の? それは楽しみです!」

 シスターさんも抵抗もなく食べやすいと言ってくれて一安心。
 これで少し気持ちがラクになった。





*****

「よ~し……。これくらいで大丈夫かな?」

 各テーブル毎に必要なレシピと食材、調理器具を揃えていく。早めに来た甲斐があり、教える準備は万端。後は各教会の代表者さんが来るのを待つだけだ。

「ユイトさん、準備はどうでしょうか?」
「はい! こちらはいつでも大丈夫です!」

 ネヴィルさんと一緒に来ていた商会の職員さんが僕の返事を聞き、既に集まっていた参加者の人達を呼びに行ってくれたみたいだ。もうすぐ始まると思うとまた緊張してきちゃったな……。

《 ゆいと~! きょうはいっぱいだね? 》

 すると、僕の肩で大人しくしていたノアの声が響いてくる。

「うん。料理を教わりにわざわざここまで来てくれてるからね」
《 みんな、すきになってくれるといいね! 》
「そうだね! そうなったら嬉しいな!」

 小さな声でノアと話していると、扉の向こうから複数の足音と声が聞こえてきた。僕もノアも慌てて口を閉じ、その瞬間を今か今かと待っている。

「皆さん、こちらです」
「ありがとうございます」

 扉が開き、最初に入って来たのは……。

「……あれ!? ユイトさんだ!」
「えっ!? あ、ホントだ!」

 そこには、昨日ミサンガの作り方を教えてくれた羊の角が可愛いダレスくんと、そばかすの可愛いシェリーちゃんの二人。
 どうして!? と驚いている二人に、シスターさんが笑いながら説明してくれている。そして、その後ろからも続々と各教会のシスターさんと代表の子供たちが入って来た。
 あっという間に部屋はいっぱいに。想像していたよりも子供たちが大きくてビックリしてしまった。

「皆さん、お揃いの様ですね。では、これから孤児院への支援物資に加わるコメの活用方法をこちらのユイトさんに教わって頂きます」

 ネヴィルさんの声が響き、集まった人達の視線が一気に僕に集中する。

「皆さん、初めまして。今回こちらの米の炊き方と料理を教える事になりました、ユイトです。不慣れな部分もあると思いますが、どうぞよろしくお願い致します」

 自己紹介とともに頭を下げると、集まった人達からもお願いしますと言う声と拍手が返ってくる。ダレスくんとシェリーちゃんも一際大きな声で返事をしてくれた。
 そして次は各教会のシスターさんと代表の子供たちの自己紹介。
 王都内外含め、近郊の五つの孤児院からわざわざここまで足を運んでくれている。皆さん、王宮から突然知らせが来たと驚いたそうだ。
 支援物資が、しかも食料が増えるという事で、子供たちに多く食べさせられるとシスターさん達は喜んだそう。
 ……フレッドさん、仕事が早いなと感心してしまった。 
 これは期待に応えないと……!

「よ~し! では、早速始めましょうか!」
「「「は~い!」」」

 子供たちの返事を合図に、僕のお料理教室が開始した。

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