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325 ゴーレム
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朝食の時間。
皆でテーブルを囲み、いただきますと食べ始める。レティちゃんとユウマは南瓜の煮物を美味しそうに頬張り、ハルトとユランくんはポリポリと大根と胡瓜の漬物を無心で齧っている。どうやらユランくんも漬物と白米が気に入ったらしい。
ここで味噌汁があれば完璧な和食なんだけどな~。
「メフィスト、バナナは後でね?」
「う!」
メフィストも美味しそうにお粥を食べているが、デザートのバナナに視線は釘付けだ。バナナ、美味しいもんね。
《 にもの、おいし~! 》
《 あま~い! 》
ノアたちも五人で美味しそうに食事中。トーマスさんが買ってきてくれた小さな食器は大活躍だ。
「ユイトくん、今日は何人くらい集まるの?」
「確か他の孤児院のシスターも来るって言ってたな?」
王都内にある孤児院と、王都近郊にある他の村の孤児院。そこから数人のシスターと各孤児院から代表の子供たちが馬車に乗って来てくれるらしい。
「僕も人数までは把握してないんですけど、わざわざ習いに来てくれるみたいなんで、失敗できないなって……」
一応いくつかのレシピは用意したけど、気に入ってもらえるかちょっと不安が……。あ、もしかしたら、昨日行ったアレクさんの育った孤児院のシスターさんも来るかも……。
これは責任重大だぞ……!
「にぃに、きょうはおりょうりきょうちちゅ?」
その声に振り向くと、トーマスさんの膝に座るユウマが僕を見上げていた。その口元にはご飯粒が。
「うん。お米の炊き方を教えに行くんだよ」
そっと取ってあげると、ありぁと! と言いながら照れていた。その姿にトーマスさんもオリビアさんも笑みを浮かべている。
「おこめおぃちぃからねぇ、みんなちゅきになっちゃうね!」
「おにぎりも、おむらいすも、みんな、だいすきです!」
「たべたら、むちゅうになっちゃうもんね」
「アハハ! そうだね! 好きになってくれると嬉しいね?」
「ん!」
子供たちに受け入れてもらえるか緊張していたけど、ユウマの美味しそうに頬張る姿を見ていたら悩みが吹っ飛んじゃったな。ハルトとレティちゃんもモリモリ食べてるし、メフィストもお粥大好きだもんね。
「あ、そうだ! オリビアさんにお願いがあるんですけど……。ね、ユランくん」
「あ! そうだね! 出掛ける前にお願いが……!」
「私に? あら、何かしら?」
危ない危ない。肝心な事を忘れていた。
オリビアさんも僕たちに何を言われるのか見当もつかないのか、首を傾げている。トーマスさんだけは面白そうに笑っているけど。
「庭にあるゴーレムなんですけど……」
「ゴーレム? あれがどうかしたの?」
「動いてるところが見たいです!」
「ボクも!」
「あのゴーレムを?」
「「是非!」」
息ピッタリの僕たちに、何を言い出すかと思ったとオリビアさんは笑っている。
「二人にお願いされたらねぇ~。じゃあ、ちょっとだけ動かしてみようかしら?」
「本当ですか!?」
「やった!」
「あ、庭に出ますか?」
「ん~。近いから、このままでいいわよ」
「え? このまま?」
「えぇ」
泥人形を動かすのに庭に出なくていいのかと、ユランくんと二人で顔を見合わせる。
オリビアさんは小さな声で何か呪文のようなものを唱え始めた。
すると、庭の方でズズズ……と、何かが動く気配が……。
そして次の瞬間……。
「「うわっ!?」」
コンコンと音のする方に振り向くと、リビングの大きな窓にこちらを覗くゴーレムの姿が……。
さっきのズズズという響く様な音とコンコンという音は、ゴーレムが動き出し窓をノックした音だった様だ。
こんな事も出来るなんて! と、ユランくんと僕は興奮しきり。
「あ! ごーれむしゃん!」
「うごいてます!」
「おばぁちゃん、すごい……!」
「たぅ!」
そしてその下から、ドラゴンも一緒に尻尾を振りながらこちらを覗いている。どうやら昨日一緒にいたから怖くないらしい。
「オリビアさん、凄い……!」
「カッコいいです……!」
僕とユランくんの言葉に、オリビアさんも満更でもなさそう。
だけど次の瞬間、大きな悲鳴が響き渡った。
「ご……、ゴーレム……!?」
「どうして庭に……!?」
「こ、コールソンさんに報告を……!」
そこには、サンプソンたちの世話をしてくれる使用人さん達の姿が……。そうだよね、馬たちの世話をしに来て、庭先にあんな大きなゴーレムがいたらビックリするよね……?
「あらやだ……。怒られちゃうかしら……」
「ん~……。こーるそんさんなら、よろこびそう」
「ぼくも、そう、おもいます!」
「ゆぅくんも~!」
どうやら昨日のコールソンさんの様子を知っているからか、レティちゃんたちは心配してなさそう。レティちゃんがああ言うなんて、よっぽどなんだろうな……。
そしてその後、僕たちはレティちゃんの予想通り、コールソンさんの興奮した姿を目撃する事になるのだった。
◇◆◇◆◇
いつも作品を読んで頂き、ありがとうございます。
他の投稿サイトですが、本日で小説を投稿し始めて丸一年が経ちました。この一年で色々とありましたが、このお話も一年間続けられたんだと思うと感慨深いです。
最近は更新頻度が下がってしまってるんですが、まだまだユイトたちの書きたい話がたくさんあります。
この家族の物語に、もう暫くお付き合い頂けると幸いです。
皆でテーブルを囲み、いただきますと食べ始める。レティちゃんとユウマは南瓜の煮物を美味しそうに頬張り、ハルトとユランくんはポリポリと大根と胡瓜の漬物を無心で齧っている。どうやらユランくんも漬物と白米が気に入ったらしい。
ここで味噌汁があれば完璧な和食なんだけどな~。
「メフィスト、バナナは後でね?」
「う!」
メフィストも美味しそうにお粥を食べているが、デザートのバナナに視線は釘付けだ。バナナ、美味しいもんね。
《 にもの、おいし~! 》
《 あま~い! 》
ノアたちも五人で美味しそうに食事中。トーマスさんが買ってきてくれた小さな食器は大活躍だ。
「ユイトくん、今日は何人くらい集まるの?」
「確か他の孤児院のシスターも来るって言ってたな?」
王都内にある孤児院と、王都近郊にある他の村の孤児院。そこから数人のシスターと各孤児院から代表の子供たちが馬車に乗って来てくれるらしい。
「僕も人数までは把握してないんですけど、わざわざ習いに来てくれるみたいなんで、失敗できないなって……」
一応いくつかのレシピは用意したけど、気に入ってもらえるかちょっと不安が……。あ、もしかしたら、昨日行ったアレクさんの育った孤児院のシスターさんも来るかも……。
これは責任重大だぞ……!
「にぃに、きょうはおりょうりきょうちちゅ?」
その声に振り向くと、トーマスさんの膝に座るユウマが僕を見上げていた。その口元にはご飯粒が。
「うん。お米の炊き方を教えに行くんだよ」
そっと取ってあげると、ありぁと! と言いながら照れていた。その姿にトーマスさんもオリビアさんも笑みを浮かべている。
「おこめおぃちぃからねぇ、みんなちゅきになっちゃうね!」
「おにぎりも、おむらいすも、みんな、だいすきです!」
「たべたら、むちゅうになっちゃうもんね」
「アハハ! そうだね! 好きになってくれると嬉しいね?」
「ん!」
子供たちに受け入れてもらえるか緊張していたけど、ユウマの美味しそうに頬張る姿を見ていたら悩みが吹っ飛んじゃったな。ハルトとレティちゃんもモリモリ食べてるし、メフィストもお粥大好きだもんね。
「あ、そうだ! オリビアさんにお願いがあるんですけど……。ね、ユランくん」
「あ! そうだね! 出掛ける前にお願いが……!」
「私に? あら、何かしら?」
危ない危ない。肝心な事を忘れていた。
オリビアさんも僕たちに何を言われるのか見当もつかないのか、首を傾げている。トーマスさんだけは面白そうに笑っているけど。
「庭にあるゴーレムなんですけど……」
「ゴーレム? あれがどうかしたの?」
「動いてるところが見たいです!」
「ボクも!」
「あのゴーレムを?」
「「是非!」」
息ピッタリの僕たちに、何を言い出すかと思ったとオリビアさんは笑っている。
「二人にお願いされたらねぇ~。じゃあ、ちょっとだけ動かしてみようかしら?」
「本当ですか!?」
「やった!」
「あ、庭に出ますか?」
「ん~。近いから、このままでいいわよ」
「え? このまま?」
「えぇ」
泥人形を動かすのに庭に出なくていいのかと、ユランくんと二人で顔を見合わせる。
オリビアさんは小さな声で何か呪文のようなものを唱え始めた。
すると、庭の方でズズズ……と、何かが動く気配が……。
そして次の瞬間……。
「「うわっ!?」」
コンコンと音のする方に振り向くと、リビングの大きな窓にこちらを覗くゴーレムの姿が……。
さっきのズズズという響く様な音とコンコンという音は、ゴーレムが動き出し窓をノックした音だった様だ。
こんな事も出来るなんて! と、ユランくんと僕は興奮しきり。
「あ! ごーれむしゃん!」
「うごいてます!」
「おばぁちゃん、すごい……!」
「たぅ!」
そしてその下から、ドラゴンも一緒に尻尾を振りながらこちらを覗いている。どうやら昨日一緒にいたから怖くないらしい。
「オリビアさん、凄い……!」
「カッコいいです……!」
僕とユランくんの言葉に、オリビアさんも満更でもなさそう。
だけど次の瞬間、大きな悲鳴が響き渡った。
「ご……、ゴーレム……!?」
「どうして庭に……!?」
「こ、コールソンさんに報告を……!」
そこには、サンプソンたちの世話をしてくれる使用人さん達の姿が……。そうだよね、馬たちの世話をしに来て、庭先にあんな大きなゴーレムがいたらビックリするよね……?
「あらやだ……。怒られちゃうかしら……」
「ん~……。こーるそんさんなら、よろこびそう」
「ぼくも、そう、おもいます!」
「ゆぅくんも~!」
どうやら昨日のコールソンさんの様子を知っているからか、レティちゃんたちは心配してなさそう。レティちゃんがああ言うなんて、よっぽどなんだろうな……。
そしてその後、僕たちはレティちゃんの予想通り、コールソンさんの興奮した姿を目撃する事になるのだった。
◇◆◇◆◇
いつも作品を読んで頂き、ありがとうございます。
他の投稿サイトですが、本日で小説を投稿し始めて丸一年が経ちました。この一年で色々とありましたが、このお話も一年間続けられたんだと思うと感慨深いです。
最近は更新頻度が下がってしまってるんですが、まだまだユイトたちの書きたい話がたくさんあります。
この家族の物語に、もう暫くお付き合い頂けると幸いです。
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