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144 やっぱり、オリビアさんは最強?

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「ただいまー!」
「あっ! じぃじ~っ!!」
「おじぃちゃんだぁ~っ!!」

 夕食を食べて皆でのんびりしていると、玄関からトーマスさんの声が。
 ユウマとハルトはスゴイ速さで玄関まで走って行く。

「「おかえりなさ~い!!」」
「ただいま! 会いたかったよ!」
「ぼくも!」
「ゆぅくんも~!」

 トーマスさんは二人を大事そうに抱え、ダイニングへやって来た。
 僕は忘れないうちにと、部屋へ走る。

「トーマス、お帰りなさい。夕食は?」
「少し貰おうかな。ん? ユイトは?」
「あら、さっきまでいたんだけど……?」

 僕は部屋に戻ると、鞄の中からプレゼントを取り出し、またダイニングへ急いだ。

「トーマスさん! おかえりなさい!」

 僕がトーマスさんに抱き着くと、普段そんな事をしないからか、驚きながらも喜んでくれた。
 ハルトとユウマも僕の真似をして、トーマスさんの足にぎゅ~っとしがみ付く。

「あら、トーマス! 顔が凄い事になってるわよ…!」
「トーマス様もあんな風になるのですね……」

 抱き着いてる僕からは見えないけど、トーマスさんはそんなに凄い顔をしているのかな?
 いつも通りにこにこしているだけだと思うけど……。
 気になって、ふとトーマスさんの顔を見てみると、

「うわ! どうしたんですか、トーマスさん!」

 嬉しいというより、眉間に皺を寄せて唇を嚙み締め、必死に耐えていると言った方がいいかも知れない……。

「オレは今、幸せだ……!」
「えぇ~……?」

 そんなに家に帰って来れないのが辛かったのかな?
 やっぱり警護の仕事って大変だよね……。

「トーマスさん、あの、これ……」
「ん?」

 僕が包みをおずおずと差し出すと、トーマスさんは何だろうと首を傾げている。
 ハルトとユウマはにこにこと嬉しそうだ。

「これ、ハルトとユウマと一緒に選んで買ったんです! 僕たちから、トーマスさんにプレゼント……!」
「え……!? 本当に……?」

 トーマスさんは両手でそっと受け取ると、オリビアさんと同じ様に大事そうに眺めている。

「おじぃちゃん! はやく、あけてください!」
「じぃじ! はやく~!」
「ハハ、ちょっと待ってくれ。胸がいっぱいで……」

 トーマスさんはゆっくりと息を吐くと、包みをそっと開けていく。
 そして包みの中からは、月をイメージした指輪が。

「ほぅ……、これは綺麗だな……!」
「この指輪、オリビアさんのネックレスと対になってるんです。店主さんが、このペリドットっていう石を夫婦で持つと、ずっと仲良くいられるって言ってたので……」

 オリビアさんの太陽と、トーマスさんの月。
 どちらにもペリドットという石が嵌め込まれている。

「そうか……。ハァ……。すまん、最近涙脆くなって……」

 トーマスさんは涙を堪えながら、僕たちをぎゅっと抱き寄せた。
 その腕は力強いけど、とっても優しい。

「ふふ、トーマス。やっぱり泣いちゃったわ」
「そう言うオリビアも泣いたんだろう?」
「えぇ! もちろん!」

 オリビアさんは首に掛けたネックレスをトーマスさんに見せながら、ふふんと胸を張っている。

「大事な物が増えるって、幸せよね?」
「そうだな。これは外さずに着けておこう……。サイズ的に……、ここかな?」

 トーマスさんはいそいそと指輪を取り出すと、左手の中指に嵌めた。

「……あ! トーマスさん、剣を振るとき邪魔になったりしませんか?」

 そう言えば、アレクさんは剣を使うから指輪は着けないって言ってたし……。

「オレか? オレは剣も振るうが、得意なのは魔法だからな。問題ないよ」
「トーマスさんも魔法……? ですか……?」

 初めて聞いた……! ずっと剣で戦うとばかり思っていたのに、魔法で戦うの……?
 ハルトとユウマも初めて聞いたのか、珍しく静かに興奮している……。

「ん? 話してなかったか?」
「はい、今初めて聞きました……!」
「じぃじもばぁばも、まほぅちゅかぃ……?」
「すごいです……!」

 僕たちが興味津々なのが伝わったのか、トーマスさんはにこにことしながら順番に頭を撫でてくれた。

「ハハ! オリビアのはスゴいぞ~! 容赦なく止めを刺すからな!」
「「「えっ!?」」」
「あっ!」
「ん? 何だ?」

 トーマスさんは気付いていないが、後ろでオリビアさんが凄い顔をしている……。

「やっぱり、おばぁちゃん、すごいです……」
「ばぁば、しゅごぃねぇ……」
「やだ! おばあちゃんそんな事してないわよ!? 信じて!?」

 トーマスさんからも聞かされ余程衝撃だったのか、ハルトとユウマはオリビアさんの顔を見ながら唖然としている。
 オリビアさんの必死の弁解は聞こえていない様だ。


「あぁ~! もう! せっかく忘れてたのにぃ~~っ! トーマスのせいよぉ~~っ!!」


 その日、オリビアさんの悲痛な叫びが家中に響いたのだった。
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