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107 大人のデザート

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「ユイトくん、悪いね。ライアンまで一緒に寝かせてもらって……」

 三人を僕たち兄弟のベッドで寝かしつけ戻ってくると、バージルさんは眉を下げて僕に礼を言った。

「いえいえ! ライアンくんもぐっすりでした! サイラスさんとフレッドさんが付いててくれるそうなので、今夜はあのまま寝かせましょう」
「三人とも寝顔もすごく可愛かったわねぇ~!」
「ほんとですね! あのほっぺが何とも言えませんよね!」

 オリビアさんと僕が三人の寝顔について話していると、バージルさんも見たいと駄々をこね始めたが、イーサンさんに叱られていた。
 エドワードさんとアーロさんたちはビックリしていたけど、ちょっと笑ってしまう。


「皆さん、もうお腹はいっぱいですか? まだ余裕はあります?」

 アーロさんたちも食事を終え、トーマスさんとアーノルドさんが警護を交代し店内に戻ってきた。
 子供たちの分は明日の朝に回して、大人の分のデザートを出そうかな?

「まぁ、まだ余裕はあるが……。何かあるのかい?」
「はい。最後はサッパリしたものがいいかなと思って」

 僕が冷凍庫から準備したものを取り出し、冷えた器にそれを盛り付ける。

「はい、お待たせしました! 赤ワインのシャーベットです」
「「「おぉ~!」」」

 お酒が入っているから味見は出来なかったんだけど、赤ワイン、オレンジオランジュレモンリモーネの果汁を、水と砂糖と一緒に混ぜて冷凍庫に入れ、数回かき混ぜればシャーベットの出来上がり。
 葡萄トラウベの実をそのまま凍らせて皮を剥き、横に添えれば見た目も可愛くなった。
 ミントの葉を添えれば涼し気で、大人のデザートの完成だ。

 お酒の苦手なエドワードさんには、皆さんには内緒でハルトたち用に作ったトラウベの果汁を使ったシャーベットを渡しておいた。


「お酒を凍らせるとは……! 面白いですね!」
「見た目も可愛いわ~! とっても素敵!」

 なかなか好評の様だけど、僕が気になるのはその味の方……!
 お酒はまだ飲めないから、美味しいか分からないんだよなぁ……。

「皆さん、是非感想を訊かせてください! また色々とお酒を使って挑戦したいので!」
「そういう事なら協力しないとな!」
「そうですね、食の発展を目指すには必要な事です」
「いいから早く食おう!」

 僕がドキドキしながら感想を待っていると、皆さん口々に感想を言い始めた。

「これは美味いな! 肉を食べた後にはピッタリじゃないか?」
「そうですね、あまり度数もきつくなさそうですし……。ほのかに香るオランジュとレモンの爽やかな柑橘の香りが、口の中をさっぱりさせてくれますね」
「赤ワインじゃなくても応用が利きそうだな……! ブランデーも美味しそうだ……」
「このトラウベも、一緒に食べるとシャリシャリして美味しいわ! 赤ワインの風味も感じるし、お酒があまり飲めなくてもこれなら食べれそうじゃない?」

 やはりお酒が進むと口が軽くなるのか、皆さん、どんどん意見を出してくれる。
 僕も参考になりそうだ……!

「まぁ、結論としては、これは美味いという事だな!」
「「「「「そうだな(ですね)」」」」」

 好評みたいで一安心! ブランデーかぁ~!
 そう言えば、ブランデーをバニラアイスにかけるって聞いたことあるなぁ~。
 今度はどんなのを作ろうかな?
 ……あ、そうだ!

「皆さん、その残りにアイスをのせてみてもいいですか?」
「「「「「「お願いします」」」」」」

 お酒のデザートは、大人にはなかなか好評の様だ。





*****

「うぅ~……、あたまがいたいわぁ~……」
「私も少し……、飲み過ぎたようだ……」
「オリビアさん、バージルさん、大丈夫ですか? これ飲めますか?」

 昨夜遅くまで飲んでいたせいで、オリビアさんとバージルさんは二日酔い。
 トーマスさんとイーサンさん、アーノルドさんはケロッとしている。
 これは体質にも関係するのかな?
 エドワードさんは泊まらずに夜遅くに帰宅したけど、二日酔いになっていないか心配だ。
 一杯だけだけど、ムリしてたみたいだし。

「これは……?」
「バナナジュースです。二日酔いに効くらしいので……」

 バナナをすり潰して、牛乳と砕いた氷を一緒に瓶に入れて振っただけなんだけど、ハルトとユウマ、ライアンくんには大好評だった。
 僕は一回だけで腕が疲れたので、サイラスさんとアーロさんたちにも協力してもらっちゃったんだけど!
 朝食をたくさん食べてもらったからいいよね!
 あと、子供たち三人には昨日作ったトラウベの凍らせた実も、朝食と一緒に出している。
 シャーベットはエドワードさんに出してしまったから、これは内緒だ。

「ありがとう……! ユイトくん……、うちで働く気はあるかい……?」
「え?」

 二日酔いで弱っているのか、バナナジュースを受け取りながら、僕をバージルさんの所で働かないかと誘ってきた。

「ちょっと~! かんゆうするの、やめてくださる~?」
「何を勝手な事を言ってるんだ……!」
「うぅ……! トーマスとオリビアが虐める……!」

 なんだかんだ言って、この人たちは仲がいいんだろうな。
 毎年遊びに来るくらいだもんね。




「ユイトくん……。今日は、臨時休業にしましょうね……」

 少し復活したのか、オリビアさんはお店の仕込みをしようとする僕を追いかけてきた。

「お休みですか?」
「毎年こうなるから休んでるの……。昨日はユイトくんも忙しかったでしょう? 今日はゆっくりしてちょうだい……。私は少し、休むから……」
「ふふ、分かりました。寝るとき、ちゃんとお水も持って行ってくださいね?」
「えぇ、ありがとう……。ハルトちゃんとユウマちゃんは、ライアンくんと一緒に別荘にお邪魔するみたいよ? ユイトくんも行ってきたら……?」
「う~ん……。今日がお休みなら、ちょっと作ってみたいメニューがあるので今回は遠慮しておきます。トーマスさんも付いてるので安心ですし!」
「そう……? じゃあ伝えておくわね……? 残ってる材料は好きに使っちゃっていいからね……」
「はい、ありがとうございます。オリビアさんもゆっくり休んでくださいね!」
「ありがとう、じゃあちょっと寝てくるわねぇ~……」



 ふむ……。今日もお休みか……。
 最近暑いから、ちょっと甘酸っぱい物が食べたいんだよね……。
 材料はまぁまぁ揃ってるけど、肝心のお酢が切れてるんだよなぁ~。
 バルサミコとワインビネガー……。う~ん……、買いに行くかぁ~!
 あとダニエルくんの所にも行って、ソフィアさんに醤油ソーヤソースのレシピと、バージルさんたちも行商市に付いてくるかもって伝えてもらおっと!

 あ。今日は僕だけだから、あのネックレス着けて行こ……!



 早速ネックレスを身に着け、ソフィアさん用にメモを書き、ちょっとゆっくりめに出掛けると、外はもう夏! ってカンジの真っ青な空が広がっている。
 ジリジリと肌に当たる日差しが痛いくらいだ。
 あぁ~、海行きたい~! 川でもいいな! 川魚とかいないのかなぁ~?


 ダニエルくんのお店に行ってメモを渡し、ソフィアさんへの伝言をお願いする。
 その内容を聞いた途端に、ダニエルくんの意識が一瞬だけ遠のいた気がしてビックリした……!
 ちょっと引き攣った笑顔で、伝えとく! って了承してくれたんだけど……。
 夏バテかな……? ダニエルくん、毎日頑張ってるもんね……。

 今日は足を延ばして、村の外れのお店まで行こうかなぁ~。
 なんて思っていると、村の広場で見知った顔が見えた。
 でもなんか……、落ち込んでるみたい……?

 僕は気になり、ベンチに座る人物に近付き声を掛けた。

「アレクさん、こんにちは! どうしたんですか?」

 僕の声にフッと顔を上げると、アレクさんは驚いた表情を浮かべた。
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