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77 ご予約様、ご来店です

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「……!? トーマスさん……!?」
「驚きました……! 今日はなぜ?」
「オリビアに駄々をこねたんだよ」
「駄々こねる年かよ! ……イッテェ!」

「ご予約のイドリス様、来られました」

 そう言ってトーマスさんは、なぜか頭を押さえてるイドリスさんたちをカウンター席へ。体が大きいからこっちの席がいいと前回言っていたから、今回もこの席に。
 料理もすぐに出しやすいし……、ね。

「いらっしゃいませ!」
「いらっちゃぃましぇ!」

 カウンター席の横で、ハルトとユウマがぺこりとお辞儀。
 ブレンダさんともう一人のお連れ様がそれを見て微笑み、お冷とお手拭きを手渡され、ありがとうと礼を言っている。ハルトとユウマも嬉しそう。フローラさんやカーターさんたちも、それを見てにこにこしている。

「この店には、こんなに可愛い店員さんもいらっしゃるのですね。せっかくの休みに無理やり連れてこられましたが、来てよかったです」
「この店は料理がうまい。また来たくなるぞ」
「ブレンダさんがそう仰るのならそうなのでしょう。楽しみにしておきます」

 ユウマに手渡されたお手拭きで手を拭いながらそう言うのは、ギルド職員のコンラッドさん。
 左の髪を後ろに撫でつけて眼鏡をかけた男性で、一見冷たそうに見える……かも。でもハルトとユウマの接し方を見ていると、いい人なんだとすぐに分かる。

「今日はお前らも手伝ってんのか? えれぇなぁ~! それも似合ってるぞ!」

 カウンター席に着いたイドリスさんが、ハルトとユウマの頭をワシワシと撫でながらそう言うと、二人の目がパァッと輝いた。

「えぷろん! おばぁちゃん、つくって、くれました!」
「にあぅ? ありぁと! ゆぅくんうれち!」

 嬉しそうにエプロンを両手で広げて見せる二人に、皆がほっこり。

「イドリス、今日もたくさん食べるんでしょう?」

 オリビアさんがカウンター越しに、たまごサンドを二人前ずつ置いていく。

「あぁ、今日のために朝飯は少しにしたからな……、って、まだ注文してねぇぞ?」
「昨日ブレンダちゃんが今日の足しにしてくれって、食材を山盛り持ってきてくれたのよ~! だからその分のお代はいいかってユイトくんと相談したの」
「ブレンダ~! お前、そんな事してたのか? 言えよ~!」
「そうですよ、水臭い。言ってもらえれば私も用意しましたのに……」
「いや、前回申し訳ない事をしてしまったからな……。今回は他の客人もいるだろうし……」
「「「あぁ~……」」」

 ここでオリビアさん、イドリスさん、コンラッドさんの三人が深く頷いた。噂は本当だったのですね、とコンラッドさんが眼鏡をクイッと上げた。

 ふと、視界の端でトーマスさんが動いたのでそちらを見ると、カーターさんとアイラさんのグラスにお冷を注ぎながら楽しそうに話している。ハルトとユウマは、フローラさんとソフィアさんにおいしいですか? と話しかけに行ってる。
 なかなか楽しそうにやってて安心した。三人とも、接客向いてるんじゃないのかな?

「さ、今日は私たち覚悟を決めてるからね。たくさん食べてちょうだい!」
「作ったらカウンター越しにすぐ手渡せますからね」
「ハハ! じゃあ遠慮なく食えるな!」
「では、まずフルーツサンド三人前を」
「私はビフカツが気になりますので、それを二人前お願いします」
「お前ら、頼むのはえぇな? じゃあ、オレは……、と」


「このメニュー、端から順番にくれ!」


 満面の笑みでメニューを指差すイドリスさん。
 オリビアさんも僕も、覚悟は出来ている。


「「かしこまりました!!」」

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