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58 宣伝効果は抜群です

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「えぇ~……、なにコレ……。すっごく美味しぃ……。チーズとろけてるぅ~……」
「肉を揚げたのってこんな旨かったっけ……? なんでこんな肉汁出てくんだ……?」
「オレのも美味い……。肉がゴロゴロ入ってる……。口の中しあわせ……」

 ハルトとユウマが宣伝して来てくれた冒険者三人組のお客様は、どうやらメニューがお気に召した様子。
 美味しいって食べてくれると、やる気も出るなぁ~!

「おにぃさん、おいしい、ですか?」
「ゆぅくん、ゆったとぉりれしょ?」

 隣のテーブル席から、ハルトとユウマが覗き込んで質問してる。フローラさんもその様子を見てうふふと笑っていた。

「ほんと! ハルトくんとユウマくんの言った通りだったわ!」
「これは自慢したくなるよな!」
「お兄さんのお料理、すごく美味しいよ!」

 お姉さん達が褒めてくれたので、ハルトもユウマもにこにこ満足そうだ。僕はこの会話を聞きながら、パスタとサンドイッチ、コロッケにオムレツを作っている。

「いやぁ、ユイトくんが一人でやっててびっくりしたよ!」
「すごいわねぇ~! 私あんなに美味しそうなの作れないわ……」
「アイラの料理はいつも美味しいよ」
「やだ、カーターさんったら! 嬉しい……!」
「もうこの席、替えてもらおうかしら……」

 冒険者の方たちの後に来店してくれたのは、お隣のカーターさんとアイラさんのご夫婦。そして肉屋のエリザさん。私も旦那と来ればよかったわ~、と漏らしている。
 カーターさんって、奥さんにはあんな感じなんだね。ビックリしちゃった……!

「お待たせしました! まずはカルボナーラと、ビフカツサンドです!」
「わぁ~! 美味しそう! 卵がぷるぷるしてる~!」
「ウチの店の肉がこうなるんだねぇ、すっごく美味しそう……!」
「ありがとうございます! あとは厚焼き玉子サンドとコロッケですね! どうぞ!」
「え? こんなに厚いの? ボリュームすごいね! 早く食べよう!」
「「「いただきます!」」」


「「「ん~っ! 美味し~!」」」


 どうやらカーターさん達にも好評だったみたいで一安心。

「ふふ、ありがとうございます!」
「ユイトくん、天才じゃない?」
「ほんと、一口で美味しいの分かるわ」
「仕入れに行くとき持って行きたい……!」

 黒パンとか干し肉だけだと飽きそうですもんね……。
 あと、夜番用と遠征用のご飯とかも考えたいなぁ。
 そんな事を考えていたら、寝室からカーティス先生が戻ってきた。オリビアさんもエプロンしてる! トーマスさんの容体、どうだったんだろう……?


「フローラさん、すみません。お待たせしてしまって……」
「いえいえ、可愛い坊やたちがいてくれたから退屈しませんよぅ」
「ハルトくん、ユウマくん、僕ともお話してくれるかい?」
「はい! せんせ、おじぃちゃん、みてくれて、ありがと、ございます!」
「しぇんしぇ、ありぁとござぃまちゅ!」
「はぁ~~~っっ!! 癒されるねぇ~~~!!!」
「ふふ、先生は坊やたちに敵わないわねぇ」

 カーティス先生もまだまだ絶好調の様だ。

 カーティス先生の注文は、オムレツのチーズ入りとビフカツサンド。その後にフルーツサンドも頼むって。先生って結構食べるのかな?


 心配だったトーマスさんの症状は、風邪ではなく“魔力酔い”と言うものらしい。

 自分の魔力の器よりも多い魔力を取り込むと、一時的に体調を崩す事があるんだって。最近魔力の多い場所に行って魔力を吸い込んでしまったか、あとは知らない間に流されたか……。
 後者はないだろうけどね! と笑顔のカーティス先生。
 だけど僕、すっごく心当たりがあるんですけど……? カーティス先生は僕に何も言ってこないから、オリビアさんとトーマスさんはノアたちの事は話してないみたい。

「ごめんね、ユイトくん。遅くなっちゃって……」
「いえ! トーマスさん、診てもらえてよかったですね! ホッとしました!」
「ほんとにね、先生が来てくれて良かったわぁ。さ! バリバリ頑張っちゃうわよ!」
「ムリしないでくださいね?」
「大丈夫! 任せて~!」

 トーマスさんをカーティス先生に診てもらえたおかげで安心したのか、オリビアさんがお店に戻ってきてくれた。
 朝とは表情が全く違う。やっぱり不安だったんだな……。


 お店の扉がチリンと開くと、オリビアさんが対応してくれる。

「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「あ~、俺たち何人だっけ? ……あ、五名です。座れますか?」
「はい! カウンター席になりますがよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。お~い! 座れるってよ!」
「やったぁ~! こんにちは~!」
「あれ? ミランダじゃない! もう来てたの~?」
「あ、モリー! 早く注文して食べて! すっごく美味しいから!」
「そうなの? 早く座ろ~!」

 どうやら先に来ていた冒険者のお姉さん達の知り合いの様だ。最初に入ってきた大きなお兄さんは、何やらいっぱい食べそうな予感がする……!

「あ! おにぃさん! いらっしゃいませ!」
「おにぃしゃん! いらっちゃぃましぇ!」
「おぉ! 約束したからな! ちゃんと来たぞ!」
「私たちもちゃんと来たよ~!」
「はい! ぼく、とっても、うれしいです! ありがと、ございます!」
「ゆぅくんもうれちぃ! ありぁとござぃまちゅ!」
「「「「「かわいぃ……!」」」」」

 さっきも同じ事、言ってた気がするんだけど……? 
 ハルトとユウマ、凄すぎない……?

 そしてここから、僕とオリビアさんの激動の時間が始まった……。
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