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短期遠征
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短期遠征の当日の早朝を迎え、チャコールグレーの隊服に身を包んだパトリシアは馬に跨った。
目的地は王都からそう離れていないところだが、時間短縮のために近くまでは馬での移動をすることになっていた。
今回はパトリシアを入れて10人の第一部隊のメンバーが遠征に赴く。郊外の森に頻繁に現れるモンスターの討伐と調査が任務だ。
暗くなる前に王都を抜けた先の最初の町の宿屋で休憩をし、また早朝に出発して目的の森の入口まで向かう。
到着した一行は馬を置いて森の探索を始めた。
「第3部隊が討伐に入ったのって何回でしたっけ?」
「4回だ。それもひと月おきにな」
部隊長であるシャルルを先頭に鬱蒼とした森を進む。
普段は軽薄な態度をとっていることのほうが多いが、任務中の彼は普段の態度が嘘のように真面目になる。
ひと月おきに討伐の以来があるのは確かに気になるわね。あまり深刻な原因でなければいいのだけれど。
隊員とシャルルの会話を聞いていたパトリシアは周囲への警戒を強めた。
この森にはそれほど強いモンスターは出現しないのだが、大抵のモンスターであれば一度討伐すれば最低でも1年は出現を抑えることができるため、今回のことは異常事態といえる。そのため第一部隊に声がかかったのだ。
その日は森の東側の探索をしたが異常は見られず、第一部隊は拠点の宿屋まで引き返した。
次の日も、また次の日も探索をしたが、モンスターに遭遇することはあっても異常を見つけることはできなかった。
「残すところは北側のみか」
宿屋の1階の食堂で木製の杯を傾けながらシャルルが零す。
「北側は1番奥なのであまり調査はされていないんですよね」
第一部隊のメンバーで食卓を囲みながらの話し合いは少しだけ緊張が感じられたが、それこそ死線を潜り抜けてきた猛者の集まりなので、メンバーの表情は穏やかだ。
「なにか掴めればいいんですけどね」
「そうだな。明日は目的地まで時間がかかるから、出発を1時間はやめるとするか」
シャルルの提案にメンバーは全員頷いた。
そうして迎えた翌日、まだ陽が登りきっていないうちから出発した一行は到着するなりすぐに探索を始めた。
既に探索を終えている東側から最短で北側の森を目指す。
あまり人が立ち入らない深部はそれまでよりもモンスターとの遭遇率が高かった。
「雑魚相手だからと気を抜くなよ!」
シャルルの鋭い声が響く。
障害物の多い森の中は視界が悪いため弱いモンスター相手でも予想外の怪我を負ってしまうことはよくあることだ。
怪我は魔法で治癒できるが、余計な魔力は使わないに越したことはない。
最深部に到達した一行はその手前で一度休憩をとることにした。
「大丈夫かいパトリシア、疲れてないか?」
休憩中、隣に来て声をかけてきたシャルルを見上げると優しいアイスブルーの瞳と目が合った。
「はい、大丈夫ですわ団長」
微笑み返すとにこりと笑みを深め、シャルルはパトリシアの隣に腰を下ろした。
「なにかあるとすればこの先だが、念の為俺の後ろを歩くように」
「わかりましたわ」
優しい笑みから表情を改め真剣な顔つきになったシャルルにパトリシアは頷いた。
滅多に入ることのない最深部内を探索ついでに周囲の浄化をしながら進むことになっているのだ。
浄化の役目は勿論パトリシアだ。魔法の行使中はどうしても注意力が散漫になってしまうので周りのサポートが必要不可欠になる。
目的地は王都からそう離れていないところだが、時間短縮のために近くまでは馬での移動をすることになっていた。
今回はパトリシアを入れて10人の第一部隊のメンバーが遠征に赴く。郊外の森に頻繁に現れるモンスターの討伐と調査が任務だ。
暗くなる前に王都を抜けた先の最初の町の宿屋で休憩をし、また早朝に出発して目的の森の入口まで向かう。
到着した一行は馬を置いて森の探索を始めた。
「第3部隊が討伐に入ったのって何回でしたっけ?」
「4回だ。それもひと月おきにな」
部隊長であるシャルルを先頭に鬱蒼とした森を進む。
普段は軽薄な態度をとっていることのほうが多いが、任務中の彼は普段の態度が嘘のように真面目になる。
ひと月おきに討伐の以来があるのは確かに気になるわね。あまり深刻な原因でなければいいのだけれど。
隊員とシャルルの会話を聞いていたパトリシアは周囲への警戒を強めた。
この森にはそれほど強いモンスターは出現しないのだが、大抵のモンスターであれば一度討伐すれば最低でも1年は出現を抑えることができるため、今回のことは異常事態といえる。そのため第一部隊に声がかかったのだ。
その日は森の東側の探索をしたが異常は見られず、第一部隊は拠点の宿屋まで引き返した。
次の日も、また次の日も探索をしたが、モンスターに遭遇することはあっても異常を見つけることはできなかった。
「残すところは北側のみか」
宿屋の1階の食堂で木製の杯を傾けながらシャルルが零す。
「北側は1番奥なのであまり調査はされていないんですよね」
第一部隊のメンバーで食卓を囲みながらの話し合いは少しだけ緊張が感じられたが、それこそ死線を潜り抜けてきた猛者の集まりなので、メンバーの表情は穏やかだ。
「なにか掴めればいいんですけどね」
「そうだな。明日は目的地まで時間がかかるから、出発を1時間はやめるとするか」
シャルルの提案にメンバーは全員頷いた。
そうして迎えた翌日、まだ陽が登りきっていないうちから出発した一行は到着するなりすぐに探索を始めた。
既に探索を終えている東側から最短で北側の森を目指す。
あまり人が立ち入らない深部はそれまでよりもモンスターとの遭遇率が高かった。
「雑魚相手だからと気を抜くなよ!」
シャルルの鋭い声が響く。
障害物の多い森の中は視界が悪いため弱いモンスター相手でも予想外の怪我を負ってしまうことはよくあることだ。
怪我は魔法で治癒できるが、余計な魔力は使わないに越したことはない。
最深部に到達した一行はその手前で一度休憩をとることにした。
「大丈夫かいパトリシア、疲れてないか?」
休憩中、隣に来て声をかけてきたシャルルを見上げると優しいアイスブルーの瞳と目が合った。
「はい、大丈夫ですわ団長」
微笑み返すとにこりと笑みを深め、シャルルはパトリシアの隣に腰を下ろした。
「なにかあるとすればこの先だが、念の為俺の後ろを歩くように」
「わかりましたわ」
優しい笑みから表情を改め真剣な顔つきになったシャルルにパトリシアは頷いた。
滅多に入ることのない最深部内を探索ついでに周囲の浄化をしながら進むことになっているのだ。
浄化の役目は勿論パトリシアだ。魔法の行使中はどうしても注意力が散漫になってしまうので周りのサポートが必要不可欠になる。
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