おとぎ話の悪役令嬢のとある日常(番外編)

石狩なべ

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キッド

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(キッド16歳×テリー13歳。四章目後編、『第10話 仮面で奏でし恋の唄(4)』にて、もしもテリーが断りきれず帰らなかったら、のお話(*'ω'*))




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー















「帰らないで……」

 甘い声で囁かれて、

「泊まって……? 今日だけで、いいから……」

(帰らなきゃ)

 貴族のお嬢様が、お泊りなんてはしたない。

「テリー」

 たとえそれが、第一王子が相手だとしても。

「お願い」

 だけど、その甘えたな顔を見てしまったら。

「今晩、一緒にいて……?」

 目の前にトマト鍋が置かれた。

「余り物で申し訳ないが」
「いっぱい食べてね! テリー!」

(……押しに負けた……)

 帰ったらこっぴどく怒られることだろう。

(だけど、なんというか、キッドの顔を見てたら)

 断れなくなってしまった。

「ほら、テリー、おかわりは?」

 キッドの母親であるスノウ王妃におかわりをもらいながら、トマト鍋を味わっていく。

(……美味……)

 隣ではキッドがパンを咥えている。

(美味……)

「テリー、ご飯を食べたら一緒にお風呂入りましょうよぅ!!」
「テリー殿、気にすることはない。一人で入っておいで」

 ひよこを持って暴れるスノウを押さえるビリーを横目にテリーが風呂場へ行く。

(……ふう)

 安心のひととき。
 そして、その後は――。

「はい、俺の勝ち」

 テリーがむくれた。

「すごろく如きで拗ねるなんて、お子ちゃまだな。テリー」
「もう一回よ!」
「くくっ。何度やっても同じだと思うけどな!」

(くぅ!! むかつく!!)

 昼間に涙目でお泊まりしてテリーたんと言ってた人物には思えない。

(くそ! 勝つまでやってやる!)

 全敗。

「……」
「テリー、枕を殴るな。悪いのはお前の戦略で、枕に罪はない」
「……」
「あー、はいはい。夜は気分がブルーになりやすいんだ。だから」

 時計はもう深夜を差している。

「そろそろ寝よっか」
「……ん」

 寝る部屋がないため、テリーはキッドの部屋の、キッドのベッドで寝ることになる。

(……本当にここで寝るの?)

 ま、相手はキッドだし。

(別にいっか)


 ――好きだよ。テリー。

 ――ねえ、俺を好きになって。


「……」
「おい、早くベッドに入れ」
「……ん」

 テリーがベッドに入ると、キッドが明かりを消した。部屋が暗くなり、テリーがびくっと体を縮こませた。ベッドがきしむ音を響かせ、キッドもベッドに潜り、後ろからテリーを抱きしめた。

「おやすみ、テリー」
「お、……おやすみ」

(何も……されない、わよね……?)

 何もしない、とキッドは言ったが、彼は油断も隙もない。だから今まで警戒してきた。だけど正体がわかった今、怖いものは婚約届以外何もない。

(……寝よう)

 テリーが目を瞑った。

(寝る前だもん。流石に何も起きないでしょ)

 キッドの抱き枕になってればいいんでしょ。
 そう思って、ゆっくりと呼吸をする。このまま意識を手放してしまいそう。シーツが気持ちいい。テリーはどんどん眠くなる。

 ――そんな時に、もぞりと、手が動いたのだ。

(……ん)

 キッドの手が、テリーのお腹をなでた。

「……っ、ちょ、なに」

 足が絡んでくる。

「キッド……? なにして……」

 振り向いたテリーの目の前には、接近したキッド。

(あ、)

 唇が重なった。

「ちゅ」
「んっ!」

 首をすくませ、慌ててテリーがキッドの肩を押した。

「やっ、な、何もしないって、言ったじゃない……!」
「ちゅ」
「んむっ」
「はぁ」
「あぅっ……」 
「……テリーが同じベッドで寝てるのに、本当に何もしないと思った?」

 キッドが深く、息を吸う。

「ばかだな。お前」

 きつく抱きしめられる。

「テリー、こっち向いて」
「あ、い、いや、だめ……」

 強引に引っ張られ、仰向けにされる。

「っ……!」

 キッドがテリーにキスをする。繰り返す。手首を押されられ、抵抗できず、されるがままにキスをされる。足で暴れるが、それもキッドの足によって押さえられる。

(だめっ……)

 堕ちる。

(やだっ……!)

 気持ちいい。

(こんなの、だめ!)

「……だめ……」
「……何がダメなの?」
「だ、だって、こんなの、はしたない……!」

 顔を背けたテリーを、キッドがぎゅっと抱きしめる。

「……じゃあ、秘密ならいいだろ?」
「……秘密?」
「ああ。今夜のことは、俺とテリーだけの秘密。だから、誰にも言っちゃいけないよ」

 顎を優しく掴まれたら、

「目、瞑って」

 まるで魔法にでもかけられたように、体が動かなくなってしまう。

(なに、これ……)

 まるで、支配されていくような感覚。

(こわい……)

 するりと、手が動いた。

「あっ!」
「テリー、……聞こえるよ」
「ど、どこ触って……!」
「母さんが隣の部屋で寝てる。……いや、起きてるかも。起きてたら……聞こえちゃうね」
「……っ」
「バレたら、恥ずかしい思いするのはテリーだよ?」

 キッドが囁いた。

「だから、静かに、ね?」

(そんな……!)

「ちゅ」
「んむっ」

 またキスが繰り返される。声が漏れないように口を塞ぎ合って、手を握りしめあって、テリーの体が震え、それをキッドがなでながら、その細い首筋に唇を押し付ける。

「っ!!」
「大丈夫、怖くないよ」

 キスをするたびに体をびくつかせるテリーに、熱い息で囁く。

「何も怖いことなんてないよ。テリー。相手は、俺なんだから」

 よく知る手が、自分の体に触れている。寝間着のパーカーの中に侵入してきて、上へ上ってきたと思えば、

「ぁ、あ、……あ……!」
「テリー、ここわかる?」
「ふぇっ、んん……!」
「固くなってるね。お前の乳首」
「ん、んん……!」
「大丈夫、恥ずかしいことじゃないから」

 敏感になったそこをこねくり回される。

「……っ、っ」
「テリー、わかる? お前のおっぱい、張ってきてるでしょ? 興奮してる証拠だよ」
「こ、こうふんなんて……」

 つん。

「んんっ!」
「おっと、声が出ちゃうな」

 キッドがテリーの唇を唇で塞いだ。

「んっ、んん……!」

 舌が入ってくる行為は、テリーには刺激が強すぎる。

「んん、んむ、んん……」
「はぁ、テリー、呼吸して」
「はっ、むり……だから、もう、やめ……」
「だーめ」
「キッド、やだ、もう、やなの……」
「テリー、かわいいね。その顔もそそるよ。ちゅっ」
「んっ」
「ここはどうなってるかな?」

(え……?)

 キッドの手が、今度は下へと下りた。

(ちょっと、なに、だめ、そんなとこ……)

 長い指が、ぱんつの中へと入ってくる。

(やっ……!)

 テリーが暴れだす。

「いや! キッド、どこ触って……!」
「しー」
「むがっ!」 

 キッドがテリーの口を押さえた。

「……っ!」
「静かに」

(さ、触るなぁ!)

 指が近づく。

(だめ、やめて……!)

 近づく。

(いやぁ……!)

 ぴちゃりと、音が鳴った。

「ほら、テリー、やっぱり、こうなってた」
「んっ……、ん、んっ……」
「テリーはまだ経験ないもんな。くくっ。……いーい? ここが濡れてたら、すごくえっちな気分になってるって意味なんだ」

 ぴちゃり。

「お前、今すごく、えっちがしたくてたまらないんだよ」
「ち、ちがっ、う……!」
「しー。テリー。お前の恥ずかしい声、聞こえちゃうよ? えっちなことしてるって、母さんにバレていいの?」
「……っ」
「そう、……いい子」 

 キッドの指が、濡れていくその小さな蕾をきゅっ! と挟んだ。

「んっ!」
「ほら、ここも固い」

 水の音が恥ずかしいほど聞こえる。

「テリー、えっちしたくて仕方ないんだね。かわいい」
「~~っ! ~~!!」
「ほら、ぴちゃぴちゃって、聞こえるだろ? お前の音だよ?」

 ぴちゃぴちゃ。

「俺に触られて、えっちな気分になって、俺を誘ってるんだ」
「ちが、う……! んっ!!」
「違うならどうしてこんなに濡れてるの? ここだって、すごく気持ち良さそう」 
「いやっ、あっ、……っ、~~っっ!」
「……ふふっ。えっちだね。テリー……。じゃあ、……入れてみる?」

(えっ?)

 何かが中に入ってきた。

(ひゃっ)

 長い何かが、中に入った。

(きゃああっ!)

「くっ……!」
「痛い?」 
「ん、んん……!」
「大丈夫。ゆっくり動かすから」

 長い何かがゆっくりと動き始める。

(なに、これ……)

 感じたことのないもの。

(あっ、あっ、それ、いや、だめ……!)

「あっ、あっ、ああっ……」
「どんどん濡れてきてる。ほら、テリー、わかる?」
「い、言わないでっ……!」
「あ、テリー、その顔可愛い、隠さないで、俺に見せて……」
「あっ……いやっ……あっ……あっ……」
「テリー……やばい、えろすぎ……」

 キッドが唇を舐め、自らの指を挿入し、抜いて、また挿入を繰り返せば、テリーの顔色がどんどん艶っぽく変わっていく。

「はー……、あっ、キッド、な、なんかっ……」
「何?」
「なんか、へん、だから……!」
「へえ、そう」
「あ、やめて、まって!」
「いいね。その声。そそる」
「あっ、あっ、はやっ、い! あっ!」
「いいよ。テリー」
「やっ、やっ、あっ、あっ、あっ、あっ!」
「いって。早く」 
「あ! あ! あ!」
「いっていいよ」 
「~~……っ……、……っ!!」

 びっくぅん! とテリーの腰が痙攣する。ぴくり、ぴくんと、尻が揺れ、またぴくんと、揺れたのを見れば、キッドが自らの指を抜き、ぺろりとなめた。

「うん。最高」 

(……なに……?)

 世界が星でチカチカ点滅している。

(何が、おきたの……?)

 呼吸の荒くなったテリーを、後ろから、強く、愛しく、何よりも強引に、優しく抱きしめて、愛をささやく。

「……好き」

 テリーの肩がピクリと揺れた。

「テリー、愛してる」
「……、……」 
「お前は?」 
「……す」
「ん?」
「……お前なんか、……好きじゃ、ない……」
「……へえ」

 途端に、キッドの目がギラリと光った。

「じゃあ、好きって言うまで、触ろうかな」
「ひゃっ……やだっ……むぐっ!」

 仰向けにされ、キッドの手により口を手で塞がれ、指で再び敏感になってしまったそこをいじり始められてしまう。

「ほらほら、テリー、そんなこと言うなら、いじめちゃうよ?」
「ん、んんぐっ、んんっ! んん……! んっ!」 
「また濡れてきた。そんなに俺とえっちしたいんだ? じゃあ、おっぱいも触ろうね?」
「んんっ!」
「テリー、全部固いじゃないか。仕方ないな。……全部ほぐしてあげるよ」
「ん、んぐ、んん、ぐっ、んん、んんんんんんんんんん!!」

 ほぐされていく。
 固い部分をこりこりと揉まれて、触られて、押されて、つつかれて、優しくいじられる。

「あっ、ああ、……あんっ!」
「声が漏れてる。テリー、抑えて」
「んなこと……いった……って……」

 キッドの手に触られた肌が、過剰に敏感する。

「っ!」
「またイッた?」

 くくっ。

「あと何回イけるかな?」
「あぁ、ああ……」
「テリー、次、イきそうになったら、イクって言ってね?」

 指が再び入れられる。

「んんっ!」
「テリー、さっきからこれわかってる? 俺の指が入ってるんだよ?」
「へ……?」
「うん。お前の中に、俺の指が入ってるんだ」

 ぬちゃ。

「あっ」
「熱い」

 ぬちゃ、ぬちゃ。

「ん、ぐ……」
「この中に、気持ちいいところがあって」

 指が触れる。

「ここら辺」

 きゅっ。

「っ!」
「ビンゴ」

 きゅっきゅっきゅっ。

「ん、んん! んん!」
「テリー、なんて言うの?」
「んんんんん!」
「言わないと」

 指が止まった。

「あっ……」

 急に、動かなくなる。

「……ん……」

 欲しくなる。

(だめ、ここで、負けるな……)

 こんなの強姦だ。

(負けるな……)

 顔が近づく。

(あっ)

 青い目と目が合う。

「んっ」

 唇が押し付けられる。

「んんっ!」

 途端に、背中がぞくぞくして、とてもほしくなる。

(おく……おくに……)

 自らの手が動く。

(奥に……)

 その手を掴まれる。

「んっ」
「だめだよ」
「いやっ……!」

ほしいのに、届かない。

「テリー、なんて言うの?」
「……っ」
「素直になったら、俺が触ってあげる」

 目がとろけてくる。

「なんていうの?」

 青い目が支配してくる。言えば楽になれる。この欲も引いてくることだろう。
 相手はキッド。知らない相手じゃない。
 相手はキッド。一度胸を高鳴らせた相手。

 ならば、


「いいじゃないか」
「お前も好きで」
「あたくしも好きで」
「これは両想いだ」
「ならば」
「さっさと受け入れてしまえ」

そうすれば、

「気持ちよくなれるぞ?」


頭の中で、声が響いて、それが、全身を包んだ気がした。

そうすれば、なんだか、素直になれる気がして、口を、動かす。


「……指、もっと……」
「もっと、何?」
「……欲しい……」
「俺の指が欲しいの?」

 こくりと頷くと、キッドが満足そうに微笑んだ。

「この淫乱」

 指が動いた。

「あっ」

(そこ)

「あっ♡」

(そこなの)

「あんっ!♡」

(そこがいいの♡)

 指が速くなる。

「あっ、キッド、いい、そこ、そこがいい♡」
「いい時は?」
「イき、そう……」
「うん、可愛い。テリー」

 唇を塞ぐ。

「んふっ♡」

 指が速くなる。

「んっ♡ んっ♡ んっ♡」
「ここ好き?」
「すき♡ はぁっ……! すきっ……!♡」
「俺と付き合ったらこういうこといつだってできるよ?」
「はへっ、はっ、んんっ♡」
「付き合う?」
「ん、んん……♡」

首を振ろうとすれば、また指が止まる。

「あっ♡」

欲しいから、頷く。

「……付き合う……からぁ……♡」
「恋人になる?」
「なる……♡」
「よかった。じゃあなろっか」

 にんまりと微笑む。

「たくさん愛でてあげる。テリー」
「あっ」

 指が動く。

「あっあっあっあっあっだめ、だめ、それ、あっ♡」
「何て言うんだっけ?」
「イク、イクイクイクイクイクぅ! いぐぅ!!」

 叫んだ瞬間、光が見えた。

「あっ!!」

 全身に雷が落ちたような感覚。

(……らめぇ……)

 気持ちいい。

(はぁ……♡)

ずぷんっ。

「あっっん♡♡♡」

ずぷずぷずぷずぷ。

「あんっ! キッド、まだ、あたし、イってるの! まだ、イッてるのぉ!♡♡♡」
「大股広げて何言ってるんだよ」

艷やかに笑い、キッドがテリーの両足を持ち上げ、肩の上に乗せた。

「あぁあん!♡」
「テリーのピンクのここ、まる見えだ」
「だめぇ!♡」
「こら、大声出さない」

キッドが再び唇を塞ぐ。

「んむっ……♡」
「ちゅむ」
「ん♡」

ぐちゅん!

「んんんんんん!!♡♡♡」

指が激しいピストン運動をくり返す。

「んっ! んっ! んっ! んっ!」

キッドを抱きしめる。

「キッド、イク! またイクぅ!」
「テリー、ここいいの?」
「いい! すっごくいいのぉ!♡ そこ、すきぃ!♡♡」
「じゃあここ触ろうね」

ごりごりごりごり。

「イクぅ! いっちゃうぅうう!」

くくくくくくくくく!

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ♡ いく!♡」

きゅーん!

「いぐぅうううう!♡♡♡♡」

びっくーーーん!

「あ……っ♡」

テリーの腰が再びいやらしく痙攣し、その乱れた姿を見せる。荒い呼吸を繰り返しながら、自分に触れてくる愛しい人を見た。

「キッド……」

 欲深いその青い瞳を見上げる。

「もっと……」
「くくっ。もう、欲しがりめ……」

 キッドが自らのボタンを外した。

「テリー、俺、言っておかなきゃいけないことあるんだけど」

 耳にひそりと秘密ごと。しかし、テリーはキッドを見つめ、……青い瞳を見つめた。

「……キッドは、キッドでしょ……?」
「……うん」
「……抱きしめて……」

 両手を広げる。

「愛して……」
「テリー」

 キッドが強く抱きしめる。

「愛するよ。今以上にずっと。だってこれからは」

 幸せに満ち溢れた笑顔を浮かべる。

「お前は俺だけのものなんだから」



 キッドのパジャマが、ぱさりと、地面に落ちた。


 いやらしい喘ぎ声が、空気に消えた。




(*'ω'*)


 今日も日は登る。
 暖かな太陽が世界を照らし、ビリーが朝食の準備をしていた。

「おはよう、おこりん坊ー」
「おはようございます。奥様」
「はー。もう爆睡しちゃった……」

 ぐっと伸びをして、脱力する。

「キッドとテリーの笑い声を聞きながら寝たわー。すごろくがね、すごく楽しそうだったの。これだから子供っていいわよね。私も子供に戻りたーい」
「飲み物は何がよろしいですか?」
「えーとねー」

 その時、階段から下に下りてくる音が聞こえた。

「あー、二人ともおはよー」
「おはよう、母さん」
「……ございます……」
「……あら?」

 テリーを抱きかかえるキッドを見て、スノウがきょとんとした。

「あらあら、どうしたの?」
「テリーがベッドから落ちて腰痛いんだって」
「……」
「まあまあ! だから布団用意するって言ったのに!」
「置くところないだろ」
「あんたが落ちればよかったのに」
「はいはい」
「テリー、大丈夫?」
「……大丈夫です……」
「テリー、椅子に座ろうね」

 キッドの腕から椅子に座らされる。しかし、ズキッとする痛みに顔をしかめた。

「んっ」 
「痛い?」
「……ん」
「ごめんね」
「……思ってないでしょ……」
「思ってるよ」
「ばか……」

 見つめあえば、お互い頬を赤く染める。

「テリー」
「ん」
「キスしていい?」
「……みんないるから」
「母さんがキッチンにいるうちに」
「……ん」
「ありがとう」

 ちゅ。

「……」
「……もっとしてほしいって顔」
「……ばか……」
「見てー! ビリーがサラダ作ってくれたってー!」

 スノウが大好きなサラダ。

「テリー、おいしいのよ! 腰もすぐ良くなるわ! はいフォーク!」
「すみません……」
「遠慮しないで! さあ、たーんと召し上がれ!」
「食べさせてあげようか?」
「……」

 ――サラダよりも、唇のほうがいいって顔。

「テリー、今日は昼までいなよ」
「……そうする」

 キッドがテリーの耳にささやいた。

「イチャイチャしよう?」
「……ん」

 お互いの手を握りしめる。

「愛してるよ。テリー」
「……あたしも……」

 テリーが微笑んだ。

「愛してる」

 キッドもうれしそうに微笑む。だってこれでテリーは自分のものだ。自分を愛してくれる。自分だけを愛してくれる。

 大好きなテリーが愛してくれる。

(心から愛してるよ。テリー)



 笑顔のテリーの瞳は、青く染まっていた。






 NOと言える人になろう END
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