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メニー
思春期姉妹の春話(2)※
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『は? 熱が出た? 君が熱を出すなんて、どうせ知恵熱だろ? 無駄なことを考えすぎた結果、頭がついていかなくて熱が出たんだ。日ごろの行いだね。どうだい? 今どんな気持ち? 僕を散々こき使った罰が与えられたんだ。ねえ、今どんな気持ち?』
「……どちくしょうが……」
メニーの従姉妹であり、テリーの悪友であるドロシーに連絡したらこれだ。くすくす笑われてばかにされる。
『相談したいことがあるって前に言ってたね。どうしたの? 成績表の隠し場所? 庭はやめておいたほうがいいよ』
「……メニーのことなんだけど……」
『ん? メニー?』
「……最近、何を考えてるかわからなくて……」
『君は過保護だからねぇー! ぷーくすくす!』
「お黙り!」
『あのさー、メニーだって高校生だよ? 思春期突入で、君を頼りに生きてた頃とは違うんだよ』
「……確かに、昔はもっとかわいげがあったわ……」
ぽわんとしてて、
放っておけなくて、
すぐ泣きそうになって、
そのたびに手を引いて、
率先して、テリーがリーダーになる。
――メニー、あたしたちは、トラブルバスターズよ! 強くならないといけないの!
――おねえちゃん……。
――泣いちゃだめ! おんなはね、泣くとなめられるのよ! 強くならないと!
――……うん……!
「……反抗期?」
『何言ってるの? メニーに反抗期なんかくるわけないだろ?』
「あんたね、メニーだって人間なのよ。あたしより質の悪い反抗期だってくるわよ」
『きたとしても、君よりはましだよ』
「そんなことないもん」
『なーに? メニーに八つ当たりされた?』
「……」
八つ当たり。
「……ドロシー」
『ん』
「メニーって、あたしが嫌いなのかしら」
『……んー』
「昔から、そうなのよ。メニーって、あたしが好きになった人と恋人になるの。あたし、偶然だと思ってたんだけど、あいつ、とうとう白状したのよ。わざとだったって」
『……』
「それから、なんか……、……わけ、わかんなくなって……」
だるい。
「これ、知恵熱?」
『知恵熱じゃない?』
「……」
『テリー、あのさ』
「……」
『……うーん……。……メニーに、聞いてみたら?』
「何を?」
『あたしのこと嫌いなの? って』
聞いたら、犯された。
(……でも)
確かに、答えは聞いてない。
『聞いたら、意外とわかることがあるかもよ?』
「……あの子答えるかしら」
『大丈夫だよ』
「……お前はうちにいないからそんなことが言えるのよ……」
『あのさー! 通信制も忙しいんだよ! オンラインで授業をやるって大変なんだから! 体育の時は体育館に登校しなきゃいけない! ああ! めんどうくさい! おかげでゲームができないよ!』
「……具合悪いから切る」
『はいはい! お大事に!』
通話を切る。急に部屋が静かになった気がした。
「……」
途端に、だんだん眠くなってくる。
「……」
瞼を閉じてみる。意外と、簡単に眠れそう。
――……そんなに、あたしが嫌いだったのね……。
情けない顔で涙を流した。そしたらメニーはこう言った。
嫌いじゃないよ。
見つめてきた。
嫌いなわけない。そうじゃない。
青い瞳が、自分から目を逸らさずに。
「お姉ちゃん、私は」
「昔から、ずっと」
「好きなのは……」
だれ?
メニーは誰が好きなの?
誰が好きで、なんであたしが嫌いなの?
どうして嫌がらせをしてくるの?
昔は、あんなに。
「お姉ちゃん、だいすき!」
笑顔で、
「おとなになったらね!」
嬉しそうに笑って、
「お姉ちゃんと結婚するの!」
あたしが、どれだけ、嬉しかったことか。
どれだけ、大切にしようと決めたことか。
好きな人を奪われても、
何度とられても、
偶然だと言い聞かせて、
メニーが幸せになるように祈って、
次の恋愛にと。
また次の恋愛にと。
そのたびに、メニーが、いても、
あたしは、ただ、じっと耐えて、
メニーの幸せを、祈って、
あたしが、ばかだったの?
瞼を上げた。
メニーがいた。
「……ただいま」
窓から見える明かりは、もう夕暮れ時のものだった。
「サリアがね、お姉ちゃんが起きたら、体の汗を拭きたいって言ってたの」
台の上に、水が溜まった桶とタオルが入っている。
「でも、私のほうがお姉ちゃんが恥ずかしくないかと思って」
メニーが優しく微笑んだ。
「起きれる?」
「……ん」
「ゆっくりでいいよ」
ゆっくり、テリーが上体を起こす。
「……サリアは?」
「おかゆ作ってた」
「……そう」
ボタンを外す。
「……」
パジャマを脱ぎ、キャミソールも脱ぐ。
「……」
前をシーツで隠して、メニーに背を向けた。
「お姉ちゃん、シーツ濡れちゃうよ?」
「……いい」
「……もう」
濡れたタオルが背中に優しく触れられた。
「っ」
壊れ物を扱うように、優しく、なでるように、背中が拭かれていく。
「……」
ぎゅっとシーツを抱きしめる。
「メニー」
「ん?」
「あたしのこと、嫌い?」
メニーの手が止まった。
「……どうしてそう思うの?」
「……」
「……嫌いな人の肌を触ると思う?」
「……だって」
何度も嫌だって言ったのに。
「あんた、楽しそうだった」
あたしが怖くておびえる姿を見て、
「すごく笑ってた」
何度も何度も壊されそうになった。
「……リオン先輩だって」
今まで、好きになった人だって、
「みんな、あんたに取られた」
タオルがテリーの背中から離れ、桶に沈んだ。
「なんで、そんな嫌がらせ、したの?」
テリーの目に、涙が溜まっていく。
「あたし、やっぱり、あんたに何かしたんでしょ……」
体が震え始める。
「じゃないと、メニーが、そんなことするわけ……」
涙が落ちていく。
「あたし……」
シーツに染みが出来ていく。
「そんなに、悪いことしたの……?」
――後ろから、メニーに抱きしめられた。
「っ」
息ができなくなる。
「やっ……」
「何もしない」
きつく抱きしめられる。
「何もしないから、お願い。聞いて」
締め付けられる。
「お願いだから」
「……」
その声は、いつものか弱い妹の声。
「……」
テリーが小さく呼吸をすれば、なんとか、呼吸ができた。呼吸が出来れば、大丈夫。
「……聞くから……」
「……」
「……ゆっくりで、いいから……」
「……うん」
抱きしめる力が、優しくなっていく。
「……あのね、お姉ちゃん」
「……ん」
「お姉ちゃんの初恋は、ニクスちゃん、だったでしょう?」
「……それが気に食わなかったの?」
「最後まで聞いて」
「……」
「……ニクスちゃんと結婚するって、言ったの覚えてる?」
「……ええ。何度も言ってた」
「でも、その前にお姉ちゃんは、私と結婚するって言ってくれてたの、覚えてる?」
「……」
「私からしたら、それって、浮気だよ?」
(……ん? どういうこと?)
テリーが眉をひそめた。
「……私は、お姉ちゃんと結婚するつもりだったのに」
お姉ちゃんは、どんどん恋をしていく。ニクスちゃんが女の子だった。じゃあ結婚できないね。私はとても安心した。これでまたお姉ちゃんが私に戻ってきてくれると思った。でもそしたら、今度は新学期のクラスで男の子を好きになった。私はとても焦った。でも、お姉ちゃんは人見知りで、なかなか好きな人に声をかけられない性格だったから、私は言ったの。その男の子はきっと浮気もしないとても素敵な人なんだろうね。お姉ちゃんにお似合いだよ。がんばってね。ねえ、お姉ちゃん、他人が好きな人をほめたら人間ってどうなると思う? 嫌なところを探したがるんだよ。お姉ちゃんはその数日後に、好きな男の子の意外な一面を見て、それが想像以上に嫌なところだと印象が残ったみたいで、やっぱり声をかけなくてよかったわって言ってた。そうして、また私の遊び相手になってくれた。私はね、お姉ちゃん、何度も言ったよ。お姉ちゃんには素敵な人が現れるから、それまで恋はしなくていいんだよ。お姉ちゃんはお嬢様だから、お嬢様らしく、おしとやかに女の子と過ごすのが合ってるよって、私、何度も何度も、お姉ちゃんが寝てる時に耳元で囁いてたの。でもね、お姉ちゃんはまた人を好きになるの。もう、うんざりするほど。それで、私が男の子から、女の子に見られる年齢になって、初めて告白された時、思ったの。お姉ちゃんがわかってくれないなら、心でわからせてあげなきゃって。お姉ちゃん、本当に鈍感なんだから。スマートフォンの鍵、どうして私の誕生日なの? そんなのすぐに開けられちゃうよ? 隠してるファイルのパスワードまで、私の誕生日。そんなの、すぐに見られちゃうよ? 指紋認証にすればよかったのに。お姉ちゃんってそういうところが抜けてるから、すぐに好きな人なんて特定出来ちゃう。出来なくても、お姉ちゃんの視線をたどれば、必ずその人はいる。だから、愛嬌を振りまいて、その人に近づいたら、あっという間に告白されるまでいったの。だめだよ。お姉ちゃん、あんな軽い人達、お姉ちゃんに合わないよ。もっと、お姉ちゃんを大事に、もっと深くまで、心からお姉ちゃんを、テリーを、愛してる人と結ばれないと、テリーがかわいそう。ぼろぼろにされて、ごみみたいに捨てられちゃう。そんなことにはさせない。テリーが本気になって、その人しか見えなくなる前に、私がその縁を切ってしまえば、テリーは、また、
「私の元に帰ってくる」
大人になったら、お姉ちゃんと結婚するの!
「テリー」
約束、したでしょう?
「私と、結婚するって、言った」
抱きしめられる。
「言ったのに」
メニーがテリーの肩に顔を埋めた。
「どうして、浮気ばかりするの……?」
「……。……。……。……。……。……」
テリーが青い顔になった。
(……まさか)
小さい頃に言われた。
――お姉ちゃん、だいすき! おとなになったらね! 私、お姉ちゃんと結婚するの!
――うふふ! いいわよ! メニー。あたしと結婚しましょうね!
――やったー! 約束!
――うふふ。約束ね。指きりげんまん。
――やったぁ! お姉ちゃん、大好き!
――うふふ、メニーったら!
「……。……。……。……。……。……」
――あれか?
(まさか、本気だったの?)
ずっとそれを、引きずってたの?
(いやいや、小さい時の、しかも、出会って間もない時の話よ!? 大体、女同士だし、姉妹だし、そんなの、普通に自然消滅するに決まって……!)
振り向けば、切ない顔で見上げてくるメニーの顔。
(うっっっ!!)
「……リオン先輩、本気で好きになってたでしょ……」
メニーが眉を下げ、見つめてくる。
「交渉するの、すごく大変だったんだから……」
「……こう、しょう?」
「……あの人、乱暴なお姉さんがいて、女の子苦手なんだって。でも、毎日女の子に言い寄られるから困ってて。女除けとして、私が彼女代わりになったの」
「……」
「この情報仕入れるのも、すごく大変だったんだから。何度ドロシーにリオン先輩のパソコンをハッキングしてもらったことか……」
ドロシー、なんてことしてるのよ。
「……私、ちょっと怒ってたんだよ? テリーが私以外に、本気で恋をしてたから……」
メニーがテリーの背中に顔をすりつけた。
「もう、やめてね」
「……」
「私以外、好きになったら、やだ……」
「……」
「もう浮気しないで……」
メニーの声が、鼻声になる。
「愛してるの。テリー……」
「……っ」
最愛の妹が泣きそうになっている。
(メニーは、あたしを一筋に想って……)
この子はとても純粋な子だから、軽率な言葉に惑わされてしまったんだ。
(……なんて、ばかな子……)
テリーが覚悟を決めた。
(あたしが、姉として、目覚めさせないと……!)
メニーの手に、そっと手を重ねた。
「……メニー、泣かないの」
「……だって……」
「……しょうがない子ね」
振り返って、テリーからメニーを抱きしめる。
「っ、おねえちゃ……」
優しく、背中をなでる。
「……テリー……」
メニーがテリーにしがみつくように抱きしめる。
「……」
「メニー、それはね、昔の口約束なのよ。あんたは自由に恋愛しても、誰も文句なんて言わないんだから」
「……私が愛してるのは、テリーだけだよ……?」
「……じゃあ、こうしましょう。あんたが本気で好きな人を見つけるまで、あたしがあんたの恋人になるから」
「テリーは最初から私の恋人だよ……?」
「ああ、そうね。……じゃあ、それを継続しましょう。うん。いい? あんたがちゃんと、本気で好きな人を見つけるまでよ?」
「うん。わかった」
「うん。それでいいわ」
「じゃあ、キスしていい?」
「……」
「……」
メニーが顔を離して、テリーを見上げた。
「お姉ちゃん、キスしていい?」
「っ」
テリーの目がくわっと見開かれ、それはそれはゆっくりと、重くうなずいた。
「わかった。仕方ない。受け入れるわ」
「んちゅ」
キスされる。
「んっ」
「んちゅ」
唇が重なる。
「あっ……」
「んむっ」
舌が絡まる。
「……メニー、……ちょっと、まって……」
「なに? ちゅ」
「んっ。……あたし、熱、出てるから……」
「汗かいたら治るよ」
メニーがにやけた。――だが、テリーには、微笑んだように見えた。メニーはわかってる。テリーが、お姉ちゃんと呼ばれるのが好きで、妹である自分を、溺愛するほど大好きであること。
「お姉ちゃん、いっぱい汗かこうね」
「ひゃっ」
背中を支えながら、ゆっくりとベッドに背中を下ろす。
「め、メニー……」
「大丈夫。熱が出てるテリーに、乱暴なことなんて絶対にしないから」
優しくするから。
「怖がらないで」
さっきから、ぱんつ一枚の姿でいられてムラムラがとまらないの。
「テリー、目、閉じて?」
「……うん……」
二人の心が合わさったように、唇も、重なって、合わさった。
(*'ω'*)
小さくて形の整った手が後ろから伸びて、テリーの胸を握る。
「あっ」
優しく、揉んでいく。
「ん……」
ゆっくりと、じっくりと、揉んでいく。
「っ、メニー、それ……」
「気持ちいい?」
「……なんか、へんな、かんじがする……」
「ふわふわする?」
「うん……」
「それはね、気持ちいいってことなんだよ。テリー」
耳にキスをされたら、テリーの肩がぴくりと揺れた。
「気持ちいい?」
「……うん、きも、ちいい……」
「じゃあ、……これは?」
先端を、つんとつまんでみる。
「あっ……!」
「痛い?」
「ん、んん……!」
「そっか。じゃあ、触れるだけにしよう?」
指の腹で優しく触れると、テリーの体がぴくぴくと震えていく。
「……っ……」
「きもちいい?」
「……きもちいい……」
「テリー、キスして?」
「……ん……」
振り返ってキスをする。唇を重ねるだけだったのに、メニーに舐められて、口元が緩んでいく。メニーの舌が入ってきて、テリーの舌に絡んでいく。そして、また、先端をなでている指も優しく動き続ける。
(あ……だめ……そんな……)
きもちいい。
(おかしくなる……)
「……テリー、こっち向いて……」
「……ん……」
体をメニーに向ける。こうしてみると、メニーの体はとてもきれいだ。透き通る肌。ほどよく膨らむ胸。男子なら、誰でも触れたくなる。
(メニーの恋人はとんだ幸せ者ね。このきれいな体は早々ないわよ)
「テリーも触って……?」
「……あ、はい」
(えっと……)
そっと、胸を触る。メニーがぴくりと体を跳ねさせる。メニーがやったように、ゆっくりと揉んでいく。
「……」
メニーがテリーに触られ、赤く染まった頬を浮かべた顔でテリーを見つめる。
「……」
テリーもなるべくメニーを見つめる。たぶん、そのほうがいいと思って。
(えっと……)
優しく、優しく、揉む。
「……ふふっ。テリー、下手……」
「……」
「まねして?」
揉まれたら、肩が揺れる。
「んっ」
「まね、して?」
「……こう?」
「あっ……」
目がとろけていく。
「うん。そう、きもちいい……」
「……ん……」
「ちくびも、さわって……?」
「……ん、うん……」
そっと触れる。
「あっ……」
メニーの高い声に驚いて、びくっと体が揺れる。
「うん。テリー、きもちいいよ」
「……本当?」
「うん。本当だよ」
「……」
「テリー、もっとくっついて」
「……うん」
「離さないで」
影は一つになる。
「離しちゃいや」
メニーがテリーを抱きしめる。
「浮気もしないで」
メニーが笑みを浮かべる。
「テリーのことは、私が愛してるから大丈夫」
メニーがテリーの頭を優しくなでたら、テリーがメニーにとろけていく。
「ずっとずっと愛してるから」
何も心配いらないよ。
「もっと、もっと、気持ちよくなろう……?」
深みへ、堕ちていこう。
大丈夫。何も怖くないから。
ただ、テリーは私に愛されてたらいいの。
テリーは、同じくらい私を愛してくれたらいいの。
ただそれだけ。
何も怖くないでしょう?
「愛してるよ。テリー」
「……メニー、あたしも……」
「え?」
「……愛してる、から……」
「……うん」
テリーの一言で、メニーが簡単にとろけていく。
愛情の中に、二人で堕ちていく。
もっと、もっと、愛で埋め尽くされたい。
もっと、もっと、愛で埋め尽くしたい。
こんなんじゃ、足りない。
(*'ω'*)
メニーとテリーが二人でホットミルクを飲む。
「熱、下がってよかったね」
「……ん」
「明日になったら完全に治ってるかもね」
「……ん」
「明日は土曜日だね」
「……ん」
「学校お休みだね」
「……ん」
「明日何しようか?」
「……ん」
「ゲームする?」
「……ん」
「マイクラしようよ。二人の家を作るの」
「……ん」
「アンダーテールのほうがいい?」
「……マイクラ……」
「洞窟発掘しようね」
「……ん」
ホットミルクを飲む。
「……あ、お姉ちゃん」
「ん」
「ついてるよ。ミルク」
「……どこ」
「動かないで」
メニーがそっと近づいて、唇の端を舐めた。
「ちゅ」
テリーがモアイの顔で固まった。
「……」
「はい。取れたよ」
「……」
「お姉ちゃん、明日、熱が下がってたら、一緒に寝ていい?」
「……ん」
「えっちしていい?」
「……」
「……おねえちゃん、だめ?」
「……いいよ……」
「一緒に寝ようね」
「……ん」
「お姉ちゃん、キスしていい?」
「……ん」
「ちゅ」
「……」
「お姉ちゃんはキスしてくれないの?」
「……」
「……おねえちゃん、だめ?」
「……ちゅ」
「……えへへ……」
「……ん」
「お姉ちゃん、ミルク、おかわりいる?」
「……まだあるから……」
「ゆっくり飲んでね」
「……ん」
二人の愛の芽は、まだ出始めたばかりだ。ゆっくりと育てていけばいい。時間はまだたっぷりとある。
(……リオン先輩に、メニーのこと、お世話かけますって、あいさつに行かないと)
波乱が起きそうなことをテリーが思いながら、またごくりと、メニーに見つめられながら、ホットミルクを飲んだ。
(……おかわりしようかな)
……そしたら、もう少しだけメニーといられる気がする。
(……もうちょっとだけ、話してたい、……かも)
テリーがちょっと考えて、また、甘いミルクを飲み込んだ。
思春期姉妹の春話 END
「……どちくしょうが……」
メニーの従姉妹であり、テリーの悪友であるドロシーに連絡したらこれだ。くすくす笑われてばかにされる。
『相談したいことがあるって前に言ってたね。どうしたの? 成績表の隠し場所? 庭はやめておいたほうがいいよ』
「……メニーのことなんだけど……」
『ん? メニー?』
「……最近、何を考えてるかわからなくて……」
『君は過保護だからねぇー! ぷーくすくす!』
「お黙り!」
『あのさー、メニーだって高校生だよ? 思春期突入で、君を頼りに生きてた頃とは違うんだよ』
「……確かに、昔はもっとかわいげがあったわ……」
ぽわんとしてて、
放っておけなくて、
すぐ泣きそうになって、
そのたびに手を引いて、
率先して、テリーがリーダーになる。
――メニー、あたしたちは、トラブルバスターズよ! 強くならないといけないの!
――おねえちゃん……。
――泣いちゃだめ! おんなはね、泣くとなめられるのよ! 強くならないと!
――……うん……!
「……反抗期?」
『何言ってるの? メニーに反抗期なんかくるわけないだろ?』
「あんたね、メニーだって人間なのよ。あたしより質の悪い反抗期だってくるわよ」
『きたとしても、君よりはましだよ』
「そんなことないもん」
『なーに? メニーに八つ当たりされた?』
「……」
八つ当たり。
「……ドロシー」
『ん』
「メニーって、あたしが嫌いなのかしら」
『……んー』
「昔から、そうなのよ。メニーって、あたしが好きになった人と恋人になるの。あたし、偶然だと思ってたんだけど、あいつ、とうとう白状したのよ。わざとだったって」
『……』
「それから、なんか……、……わけ、わかんなくなって……」
だるい。
「これ、知恵熱?」
『知恵熱じゃない?』
「……」
『テリー、あのさ』
「……」
『……うーん……。……メニーに、聞いてみたら?』
「何を?」
『あたしのこと嫌いなの? って』
聞いたら、犯された。
(……でも)
確かに、答えは聞いてない。
『聞いたら、意外とわかることがあるかもよ?』
「……あの子答えるかしら」
『大丈夫だよ』
「……お前はうちにいないからそんなことが言えるのよ……」
『あのさー! 通信制も忙しいんだよ! オンラインで授業をやるって大変なんだから! 体育の時は体育館に登校しなきゃいけない! ああ! めんどうくさい! おかげでゲームができないよ!』
「……具合悪いから切る」
『はいはい! お大事に!』
通話を切る。急に部屋が静かになった気がした。
「……」
途端に、だんだん眠くなってくる。
「……」
瞼を閉じてみる。意外と、簡単に眠れそう。
――……そんなに、あたしが嫌いだったのね……。
情けない顔で涙を流した。そしたらメニーはこう言った。
嫌いじゃないよ。
見つめてきた。
嫌いなわけない。そうじゃない。
青い瞳が、自分から目を逸らさずに。
「お姉ちゃん、私は」
「昔から、ずっと」
「好きなのは……」
だれ?
メニーは誰が好きなの?
誰が好きで、なんであたしが嫌いなの?
どうして嫌がらせをしてくるの?
昔は、あんなに。
「お姉ちゃん、だいすき!」
笑顔で、
「おとなになったらね!」
嬉しそうに笑って、
「お姉ちゃんと結婚するの!」
あたしが、どれだけ、嬉しかったことか。
どれだけ、大切にしようと決めたことか。
好きな人を奪われても、
何度とられても、
偶然だと言い聞かせて、
メニーが幸せになるように祈って、
次の恋愛にと。
また次の恋愛にと。
そのたびに、メニーが、いても、
あたしは、ただ、じっと耐えて、
メニーの幸せを、祈って、
あたしが、ばかだったの?
瞼を上げた。
メニーがいた。
「……ただいま」
窓から見える明かりは、もう夕暮れ時のものだった。
「サリアがね、お姉ちゃんが起きたら、体の汗を拭きたいって言ってたの」
台の上に、水が溜まった桶とタオルが入っている。
「でも、私のほうがお姉ちゃんが恥ずかしくないかと思って」
メニーが優しく微笑んだ。
「起きれる?」
「……ん」
「ゆっくりでいいよ」
ゆっくり、テリーが上体を起こす。
「……サリアは?」
「おかゆ作ってた」
「……そう」
ボタンを外す。
「……」
パジャマを脱ぎ、キャミソールも脱ぐ。
「……」
前をシーツで隠して、メニーに背を向けた。
「お姉ちゃん、シーツ濡れちゃうよ?」
「……いい」
「……もう」
濡れたタオルが背中に優しく触れられた。
「っ」
壊れ物を扱うように、優しく、なでるように、背中が拭かれていく。
「……」
ぎゅっとシーツを抱きしめる。
「メニー」
「ん?」
「あたしのこと、嫌い?」
メニーの手が止まった。
「……どうしてそう思うの?」
「……」
「……嫌いな人の肌を触ると思う?」
「……だって」
何度も嫌だって言ったのに。
「あんた、楽しそうだった」
あたしが怖くておびえる姿を見て、
「すごく笑ってた」
何度も何度も壊されそうになった。
「……リオン先輩だって」
今まで、好きになった人だって、
「みんな、あんたに取られた」
タオルがテリーの背中から離れ、桶に沈んだ。
「なんで、そんな嫌がらせ、したの?」
テリーの目に、涙が溜まっていく。
「あたし、やっぱり、あんたに何かしたんでしょ……」
体が震え始める。
「じゃないと、メニーが、そんなことするわけ……」
涙が落ちていく。
「あたし……」
シーツに染みが出来ていく。
「そんなに、悪いことしたの……?」
――後ろから、メニーに抱きしめられた。
「っ」
息ができなくなる。
「やっ……」
「何もしない」
きつく抱きしめられる。
「何もしないから、お願い。聞いて」
締め付けられる。
「お願いだから」
「……」
その声は、いつものか弱い妹の声。
「……」
テリーが小さく呼吸をすれば、なんとか、呼吸ができた。呼吸が出来れば、大丈夫。
「……聞くから……」
「……」
「……ゆっくりで、いいから……」
「……うん」
抱きしめる力が、優しくなっていく。
「……あのね、お姉ちゃん」
「……ん」
「お姉ちゃんの初恋は、ニクスちゃん、だったでしょう?」
「……それが気に食わなかったの?」
「最後まで聞いて」
「……」
「……ニクスちゃんと結婚するって、言ったの覚えてる?」
「……ええ。何度も言ってた」
「でも、その前にお姉ちゃんは、私と結婚するって言ってくれてたの、覚えてる?」
「……」
「私からしたら、それって、浮気だよ?」
(……ん? どういうこと?)
テリーが眉をひそめた。
「……私は、お姉ちゃんと結婚するつもりだったのに」
お姉ちゃんは、どんどん恋をしていく。ニクスちゃんが女の子だった。じゃあ結婚できないね。私はとても安心した。これでまたお姉ちゃんが私に戻ってきてくれると思った。でもそしたら、今度は新学期のクラスで男の子を好きになった。私はとても焦った。でも、お姉ちゃんは人見知りで、なかなか好きな人に声をかけられない性格だったから、私は言ったの。その男の子はきっと浮気もしないとても素敵な人なんだろうね。お姉ちゃんにお似合いだよ。がんばってね。ねえ、お姉ちゃん、他人が好きな人をほめたら人間ってどうなると思う? 嫌なところを探したがるんだよ。お姉ちゃんはその数日後に、好きな男の子の意外な一面を見て、それが想像以上に嫌なところだと印象が残ったみたいで、やっぱり声をかけなくてよかったわって言ってた。そうして、また私の遊び相手になってくれた。私はね、お姉ちゃん、何度も言ったよ。お姉ちゃんには素敵な人が現れるから、それまで恋はしなくていいんだよ。お姉ちゃんはお嬢様だから、お嬢様らしく、おしとやかに女の子と過ごすのが合ってるよって、私、何度も何度も、お姉ちゃんが寝てる時に耳元で囁いてたの。でもね、お姉ちゃんはまた人を好きになるの。もう、うんざりするほど。それで、私が男の子から、女の子に見られる年齢になって、初めて告白された時、思ったの。お姉ちゃんがわかってくれないなら、心でわからせてあげなきゃって。お姉ちゃん、本当に鈍感なんだから。スマートフォンの鍵、どうして私の誕生日なの? そんなのすぐに開けられちゃうよ? 隠してるファイルのパスワードまで、私の誕生日。そんなの、すぐに見られちゃうよ? 指紋認証にすればよかったのに。お姉ちゃんってそういうところが抜けてるから、すぐに好きな人なんて特定出来ちゃう。出来なくても、お姉ちゃんの視線をたどれば、必ずその人はいる。だから、愛嬌を振りまいて、その人に近づいたら、あっという間に告白されるまでいったの。だめだよ。お姉ちゃん、あんな軽い人達、お姉ちゃんに合わないよ。もっと、お姉ちゃんを大事に、もっと深くまで、心からお姉ちゃんを、テリーを、愛してる人と結ばれないと、テリーがかわいそう。ぼろぼろにされて、ごみみたいに捨てられちゃう。そんなことにはさせない。テリーが本気になって、その人しか見えなくなる前に、私がその縁を切ってしまえば、テリーは、また、
「私の元に帰ってくる」
大人になったら、お姉ちゃんと結婚するの!
「テリー」
約束、したでしょう?
「私と、結婚するって、言った」
抱きしめられる。
「言ったのに」
メニーがテリーの肩に顔を埋めた。
「どうして、浮気ばかりするの……?」
「……。……。……。……。……。……」
テリーが青い顔になった。
(……まさか)
小さい頃に言われた。
――お姉ちゃん、だいすき! おとなになったらね! 私、お姉ちゃんと結婚するの!
――うふふ! いいわよ! メニー。あたしと結婚しましょうね!
――やったー! 約束!
――うふふ。約束ね。指きりげんまん。
――やったぁ! お姉ちゃん、大好き!
――うふふ、メニーったら!
「……。……。……。……。……。……」
――あれか?
(まさか、本気だったの?)
ずっとそれを、引きずってたの?
(いやいや、小さい時の、しかも、出会って間もない時の話よ!? 大体、女同士だし、姉妹だし、そんなの、普通に自然消滅するに決まって……!)
振り向けば、切ない顔で見上げてくるメニーの顔。
(うっっっ!!)
「……リオン先輩、本気で好きになってたでしょ……」
メニーが眉を下げ、見つめてくる。
「交渉するの、すごく大変だったんだから……」
「……こう、しょう?」
「……あの人、乱暴なお姉さんがいて、女の子苦手なんだって。でも、毎日女の子に言い寄られるから困ってて。女除けとして、私が彼女代わりになったの」
「……」
「この情報仕入れるのも、すごく大変だったんだから。何度ドロシーにリオン先輩のパソコンをハッキングしてもらったことか……」
ドロシー、なんてことしてるのよ。
「……私、ちょっと怒ってたんだよ? テリーが私以外に、本気で恋をしてたから……」
メニーがテリーの背中に顔をすりつけた。
「もう、やめてね」
「……」
「私以外、好きになったら、やだ……」
「……」
「もう浮気しないで……」
メニーの声が、鼻声になる。
「愛してるの。テリー……」
「……っ」
最愛の妹が泣きそうになっている。
(メニーは、あたしを一筋に想って……)
この子はとても純粋な子だから、軽率な言葉に惑わされてしまったんだ。
(……なんて、ばかな子……)
テリーが覚悟を決めた。
(あたしが、姉として、目覚めさせないと……!)
メニーの手に、そっと手を重ねた。
「……メニー、泣かないの」
「……だって……」
「……しょうがない子ね」
振り返って、テリーからメニーを抱きしめる。
「っ、おねえちゃ……」
優しく、背中をなでる。
「……テリー……」
メニーがテリーにしがみつくように抱きしめる。
「……」
「メニー、それはね、昔の口約束なのよ。あんたは自由に恋愛しても、誰も文句なんて言わないんだから」
「……私が愛してるのは、テリーだけだよ……?」
「……じゃあ、こうしましょう。あんたが本気で好きな人を見つけるまで、あたしがあんたの恋人になるから」
「テリーは最初から私の恋人だよ……?」
「ああ、そうね。……じゃあ、それを継続しましょう。うん。いい? あんたがちゃんと、本気で好きな人を見つけるまでよ?」
「うん。わかった」
「うん。それでいいわ」
「じゃあ、キスしていい?」
「……」
「……」
メニーが顔を離して、テリーを見上げた。
「お姉ちゃん、キスしていい?」
「っ」
テリーの目がくわっと見開かれ、それはそれはゆっくりと、重くうなずいた。
「わかった。仕方ない。受け入れるわ」
「んちゅ」
キスされる。
「んっ」
「んちゅ」
唇が重なる。
「あっ……」
「んむっ」
舌が絡まる。
「……メニー、……ちょっと、まって……」
「なに? ちゅ」
「んっ。……あたし、熱、出てるから……」
「汗かいたら治るよ」
メニーがにやけた。――だが、テリーには、微笑んだように見えた。メニーはわかってる。テリーが、お姉ちゃんと呼ばれるのが好きで、妹である自分を、溺愛するほど大好きであること。
「お姉ちゃん、いっぱい汗かこうね」
「ひゃっ」
背中を支えながら、ゆっくりとベッドに背中を下ろす。
「め、メニー……」
「大丈夫。熱が出てるテリーに、乱暴なことなんて絶対にしないから」
優しくするから。
「怖がらないで」
さっきから、ぱんつ一枚の姿でいられてムラムラがとまらないの。
「テリー、目、閉じて?」
「……うん……」
二人の心が合わさったように、唇も、重なって、合わさった。
(*'ω'*)
小さくて形の整った手が後ろから伸びて、テリーの胸を握る。
「あっ」
優しく、揉んでいく。
「ん……」
ゆっくりと、じっくりと、揉んでいく。
「っ、メニー、それ……」
「気持ちいい?」
「……なんか、へんな、かんじがする……」
「ふわふわする?」
「うん……」
「それはね、気持ちいいってことなんだよ。テリー」
耳にキスをされたら、テリーの肩がぴくりと揺れた。
「気持ちいい?」
「……うん、きも、ちいい……」
「じゃあ、……これは?」
先端を、つんとつまんでみる。
「あっ……!」
「痛い?」
「ん、んん……!」
「そっか。じゃあ、触れるだけにしよう?」
指の腹で優しく触れると、テリーの体がぴくぴくと震えていく。
「……っ……」
「きもちいい?」
「……きもちいい……」
「テリー、キスして?」
「……ん……」
振り返ってキスをする。唇を重ねるだけだったのに、メニーに舐められて、口元が緩んでいく。メニーの舌が入ってきて、テリーの舌に絡んでいく。そして、また、先端をなでている指も優しく動き続ける。
(あ……だめ……そんな……)
きもちいい。
(おかしくなる……)
「……テリー、こっち向いて……」
「……ん……」
体をメニーに向ける。こうしてみると、メニーの体はとてもきれいだ。透き通る肌。ほどよく膨らむ胸。男子なら、誰でも触れたくなる。
(メニーの恋人はとんだ幸せ者ね。このきれいな体は早々ないわよ)
「テリーも触って……?」
「……あ、はい」
(えっと……)
そっと、胸を触る。メニーがぴくりと体を跳ねさせる。メニーがやったように、ゆっくりと揉んでいく。
「……」
メニーがテリーに触られ、赤く染まった頬を浮かべた顔でテリーを見つめる。
「……」
テリーもなるべくメニーを見つめる。たぶん、そのほうがいいと思って。
(えっと……)
優しく、優しく、揉む。
「……ふふっ。テリー、下手……」
「……」
「まねして?」
揉まれたら、肩が揺れる。
「んっ」
「まね、して?」
「……こう?」
「あっ……」
目がとろけていく。
「うん。そう、きもちいい……」
「……ん……」
「ちくびも、さわって……?」
「……ん、うん……」
そっと触れる。
「あっ……」
メニーの高い声に驚いて、びくっと体が揺れる。
「うん。テリー、きもちいいよ」
「……本当?」
「うん。本当だよ」
「……」
「テリー、もっとくっついて」
「……うん」
「離さないで」
影は一つになる。
「離しちゃいや」
メニーがテリーを抱きしめる。
「浮気もしないで」
メニーが笑みを浮かべる。
「テリーのことは、私が愛してるから大丈夫」
メニーがテリーの頭を優しくなでたら、テリーがメニーにとろけていく。
「ずっとずっと愛してるから」
何も心配いらないよ。
「もっと、もっと、気持ちよくなろう……?」
深みへ、堕ちていこう。
大丈夫。何も怖くないから。
ただ、テリーは私に愛されてたらいいの。
テリーは、同じくらい私を愛してくれたらいいの。
ただそれだけ。
何も怖くないでしょう?
「愛してるよ。テリー」
「……メニー、あたしも……」
「え?」
「……愛してる、から……」
「……うん」
テリーの一言で、メニーが簡単にとろけていく。
愛情の中に、二人で堕ちていく。
もっと、もっと、愛で埋め尽くされたい。
もっと、もっと、愛で埋め尽くしたい。
こんなんじゃ、足りない。
(*'ω'*)
メニーとテリーが二人でホットミルクを飲む。
「熱、下がってよかったね」
「……ん」
「明日になったら完全に治ってるかもね」
「……ん」
「明日は土曜日だね」
「……ん」
「学校お休みだね」
「……ん」
「明日何しようか?」
「……ん」
「ゲームする?」
「……ん」
「マイクラしようよ。二人の家を作るの」
「……ん」
「アンダーテールのほうがいい?」
「……マイクラ……」
「洞窟発掘しようね」
「……ん」
ホットミルクを飲む。
「……あ、お姉ちゃん」
「ん」
「ついてるよ。ミルク」
「……どこ」
「動かないで」
メニーがそっと近づいて、唇の端を舐めた。
「ちゅ」
テリーがモアイの顔で固まった。
「……」
「はい。取れたよ」
「……」
「お姉ちゃん、明日、熱が下がってたら、一緒に寝ていい?」
「……ん」
「えっちしていい?」
「……」
「……おねえちゃん、だめ?」
「……いいよ……」
「一緒に寝ようね」
「……ん」
「お姉ちゃん、キスしていい?」
「……ん」
「ちゅ」
「……」
「お姉ちゃんはキスしてくれないの?」
「……」
「……おねえちゃん、だめ?」
「……ちゅ」
「……えへへ……」
「……ん」
「お姉ちゃん、ミルク、おかわりいる?」
「……まだあるから……」
「ゆっくり飲んでね」
「……ん」
二人の愛の芽は、まだ出始めたばかりだ。ゆっくりと育てていけばいい。時間はまだたっぷりとある。
(……リオン先輩に、メニーのこと、お世話かけますって、あいさつに行かないと)
波乱が起きそうなことをテリーが思いながら、またごくりと、メニーに見つめられながら、ホットミルクを飲んだ。
(……おかわりしようかな)
……そしたら、もう少しだけメニーといられる気がする。
(……もうちょっとだけ、話してたい、……かも)
テリーがちょっと考えて、また、甘いミルクを飲み込んだ。
思春期姉妹の春話 END
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