115 / 139
メニー
ドレスの代償
しおりを挟む
(大運動会の続きです。CP上、キッドとテリーは婚約解消してる前提です(*'ω'*))
――――――――――――――――――――
(ああ……、疲れた……)
テリーが体操着のままベッドの上にダイブする。
(お腹すいた……。ステーキ……。ステーキが食べたい……)
テリーがうとうとと瞼を動かす。
(夕飯いつかしら……)
瞼が重くなっていく。
(待つ間、少し休もう……)
瞼が下りれば深呼吸。整った呼吸を繰り返す。テリーが眠る。すやすやと眠りだす。
その中で、トントンと扉がノックされた。
「テリーお姉ちゃん」
扉が開く。メニーがひょこりと顔を覗かせた。
「……あ、寝てる」
すやすや眠るテリーがいるベッドまで近づく。
「おねーちゃーん」
声をひそめて呼んでみる。テリーが起きる気配はない。
「ご飯が出来たよー」
声をひそめて言ってみる。テリーが起きる気配はない。
「……んー」
メニーは考える。
(疲れてるだろうし、起こすのは可哀想な気がする)
メニーが眉をひそめる。
(でも起こさなかったらお母様にどやされるし、お姉ちゃんもなんで起こさなかったのよって文句言ってきそう……)
メニーが唸る。
「うーん!」
よし、こういう時は、ドロシーに相談だ!
「いでよ! ドロシー!」
ドロシーは現れない。
「あれ?」
メニーが辺りを見回す。
「あれー? ドロシー?」
ドロシーの気配はない。
(……キッチンかも)
ドロシーは諦め、メニーはテリーに手を伸ばすことにした。肩をとんとんと軽く叩く。
「お姉ちゃん、ご飯できたって」
「んん……」
テリーが身じろぎ、寝返った。
「……あと五分……」
「はい、過ぎた。お姉ちゃん、起きて」
「んん……」
テリーは起きない。身じろいで、唸って、再び夢の中。
「くかー……」
「お姉ちゃんってば」
「ぐうー……」
「おねーちゃーん」
メニーがテリーを呼ぶ。肩を揺らす。何とかテリーを起こそうとメニーが頑張る一方で、テリーの夢では、メニーは高笑いをしていた。
「おーっほっほっほっほっほっ! テリーのことを死刑にしてやるー!」
「ぎゃーーーーー!!」
「どう? テリー? 逆さづりにされる気分はー!」
「メニーーーーーー!!!」
テリーが必死にもがく中、メニーが運動会の優勝カップを握り締めた。
「優勝は私、メニーだー!」
「なぁぁああああにぃぃぃいいい!!?」
リトルルビィが、ニクスが、キッドが、ソフィアが、リオンが、メニーに拍手をする。
「おめでとう! メニー!」
「さすが皆のプリンセスだね!」
「くくっ。テリーとは大違い。彼女こそプリンセスだ」
「くすす。とても輝いてるよ。メニー」
「僕のハニー!」
リオンがテリーを踏んづけて、手を差し出す。
「ぎゅふ!」
「さあ、ハニー! ニコラなんて放って、僕と一緒にランデブーに出かけよう!」
「リオンてめぇぇえええええ!!」
「きゃ! 素敵!」
メニーがテリーを踏んづけた。
「ふぎゃ!」
「愛してるわ! ダーリン!」
「運動会の優勝カップが似合ってるよ! ハニー!」
「さあ、私をお城まで連れて行って!」
「君のためならどこにだって! さあ、行こう!」
ふみふみふみふみ。
「てめえら! このあたしを踏んづけるなんて! 許さない! この、馬鹿夫婦! この! この、この、この……!!」
テリーが睨みつけた。
「メニー!!!」
メニーがきょとんとした。
「……お姉ちゃん?」
「……めにー……むにゃむにゃ……」
「お姉ちゃん? もしかして、私の夢見てるの?」
メニーが顔を近づける。
「お姉ちゃん、起きて。私、ここだよ」
「メニー……てめえだけは許さない……」
「お姉ちゃんってば、何言ってるの。……まさか、喧嘩した時の夢? ああ、もう……」
メニーがうんざりげに眉を下げた。
「お姉ちゃん、起きてよ」
「この……」
テリーがメニーの手を掴んだ。
「ん?」
引っ張られる。
「ひゃ!?」
ぼふん、とメニーがベッドにダイブした。慌てて起き上がる。
「ちょ、お姉ちゃん!?」
――おーほっほっほっほーーーお。テリーのばーか!
――何をををををををを!!!
「お前のドレスなんて……こうしてくれるー……」
「お姉ちゃん、いだだだだ! 何!? 何!? お姉ちゃんってば!」
メニーの上にテリーが覆いかぶさる。慌てて肩をとんとん叩くと、テリーの手がメニーの胸元を掴んだ。
「えっ」
びりーーーーー!!
「きゃーーーーーー!!!!」
メニーが悲鳴をあげた。
ドレスの胸元がテリーによって破られ、はだけた。
「お、おねーちゃーーーん!!」
「ドレスなんて……こうしてくれるー……」
びりーーー!!
「お姉ちゃん! 寝ぼけてるでしょ! 起きて! おねえちゃ…」
はっ!
「目を瞑ったまま、ドレスを破いてるだと……!?」
「ぐー……」
「お姉ちゃん! 起きて! お姉ちゃん!!」
「メニー……」
びりびりびりーーー!
「きゃーーー! やめてーーー!!」
メニーが逃げようとしても、テリーがメニーを離さない。
夢の中では、メニーとテリーは格闘している。
「テリーはドレスも持ってないんだね! 可哀想! おーっほっほっほっほーお」
「馬鹿野郎! あたしが普段から体操着を着てると思ったら大間違いよ!」
「『てりぃ』だって! ああ、なんてダサい体操着!」
「なにをーーーーーー! お前のドレスなんて!」
テリーの目は開かない。
「こうしてくれるわー」
びりーーーー!
「お姉ちゃん! もう、もう破くところがないよー!」
「ぐかー」
「助けてー! 誰かー!!」
キャミソールとカボチャパンツ姿になったメニーがテリーの下でもがく。
「お姉ちゃん! 起きて! お姉ちゃん!」
「許すものかー」
「理不尽だ! 何この執念! ドレスに恨みでもあるの!?」
「メニー」
「うわぁーーーー! ご勘弁をーーー!!」
伸びた手に、メニーがぎゅっと目を閉じる。体に手が巻き付いてくる。
(むぎゃ!?)
ぎゅっと、抱きしめられる。
「……」
テリーに抱きしめられている。
「……」
メニーがそっと目を開けた。テリーはメニーを抱きしめたまま、眠っている。
「ぐかー……」
夢の中では、メニーを羽交い絞めにして格闘している。
現実では、メニーを抱きしめている。
「……もう……」
メニーがため息混じりに言葉を吐いた。
「お姉ちゃん、妹のドレスを破くなんて貴族令嬢失格だよ」
メニーの手がそっと、テリーを抱きしめ返す。
「お姉ちゃん、いい加減に起きてよ」
「むにゃー……」
「お姉ちゃんってば」
「くかー……」
「……もう……」
メニーがもぞもぞと動くと、テリーの腕の力が強くなった。
(うぼっ!?)
メニーを離さなさい。
メニーがぐっと抜けようと力を入れてみる。
「お姉ちゃん……!」
「……にー……」
「え?」
「メニー……」
メニーを抱きしめて離さない。
メニーを離さないテリー。
テリーがメニーを抱きしめる。
メニーが硬直する。
テリーがメニーの背中に頬をこすりつけた。
「……離さない……」
テリーが呟いた。
「あたしの……もの……」
その瞬間、
メニーの目が、閉じられる。
メニーの目が、しばらく閉じられる。
目が、そっと開けられた。
「……」
青い瞳がゆっくりと動く。自分の背中に乗っかるテリーに振り向く。
「……ぐー……」
青い瞳が振り向き、そのまま、体ごとテリーに振り向いた。
「……」
手が伸びた。テリーの体操着を掴み、そのまま、持ち上げる。
「……ぐー……」
テリーの体操着が脱がされる。
「むにゃ……てめ……くー……」
テリーのハーフパンツが脱がされる。
「……ふがー……」
脱がした手が体操着をベッドの外へ投げた。
「……」
キャミソールとかぼちゃパンツ姿になったテリーを抱きしめ返す。
「……」
抱きしめて、横向きに、向かい合って寝転がる。
「……」
肌と肌がくっつく。
腕と腕がくっつく。
足と足がくっつく。
「……」
青い瞳がテリーから離れない。
「……」
顔が近づく。
「……」
唇が近づく。
「……」
鼻がくっついた。
「……」
止まる。
青い瞳が、
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
「ふふ」
笑い声が漏れる。
「ふふふ」
そっと、テリーの頬に手を添える。
「……」
青い瞳がテリーを見つめる。
口は開かない。
青い瞳がテリーに手を伸ばす。
指で優しくテリーを撫でる。
「……ん」
テリーが眉をひそめる。青い瞳がくすりと笑った。
「……んん……」
触れてみる。
テリーが唸る。
触れてみる。
テリーがピクリと動いた。
触れてみる。
「……うう?」
「しー」
静かに、というように息を出すと、テリーが黙った。
「……ん」
再び、夢の中。
青い瞳が微笑んだ。
もっと触れる。
テリーが眠る。
もっと触れる。
テリーが肩を揺らした。
もっと触れる。
テリーが眉をひそめた。
頬に唇をつけてみる。
テリーは気持ちよさそうに眠る。
だから触れる。
「……ん」
触れる。
「……ん、どこ、触って……」
触れる。
「ふふ、……くすぐったい……」
触れる。
「ん……この……メニー……」
触れる。
「てめ……よくも……」
触れる。
「ん、くくっ……そこは、ふふ、だめ……」
触れる。
「……あ……」
唇を寄せる。
「ちゅ」
青い瞳が、目を閉じることなく、テリーを見つめる。
頬に唇をつければ、眠るテリーがいる。
手を握れば、握られるテリーがいる。
足を絡めれば、絡められるテリーがいる。
青い瞳が、テリーを見つめる。
「離さないで」
手を、握り締める。
「離したら、駄目」
見つめる。
「私も、離さない」
青い瞳が、囁く。
「絶対に、離さない」
テリーを見つめる。
(*'ω'*)
――ゆさゆさ。
(……んん?)
体を揺らされ、テリーが眉をひそめ、呻いた。
「あたしの……優勝カップは……渡さない……。これは……あたしのものよ……」
「テリー、起きてください」
(あ……サリアの声……)
テリーがそっと目を覚ます。思った通り、サリアが目の前で自分の顔を覗き込んでいた。
(……夕食が出来たのね……)
ふわあ、とテリーが大きな欠伸をする。
「今夜のご飯……何……?」
「あら、まだお腹空いてるんですか?」
「あたし……お腹はぺこぺこよ……。今日一日、運動会でずっと体動かしてたんだから…」
「でも、テリー、もう食事は済んだのでは?」
「何言ってるのよ……。あたし、寝てたのよ……。どうやって食事するのよ……」
「だって、どう見たってこれは」
サリアが呟く。
「食後では?」
「あ?」
テリーが振り向く。メニーのドレスがボロボロで、キャミソールとかぼちゃパンツ姿で眠っていた。
「……」
頬を赤らめ、しんどそうに眠っていた。
「……」
テリーが自分の手を見る。メニーのドレスの一部を握っていた。
「……」
自分も体操着は着用しておらず、下着姿だ。
「……」
テリーが眉をひそめ、ゆっくりと振り向く。
サリアは真剣な顔で、テリーを見ていた。
「テリー」
肩を、ぽんと叩かれる。
「いいですか。近親相姦はばれないようにしないと」
「誰が近親相姦だーーーーーーーー!!!」
悲鳴のように叫び、テリーが慌ててメニーの肩を揺らす。
「メニー! 起きなさい! 一体何があったの!」
「うーん……テリーお姉ちゃんの……えっち……」
「まっ」
サリアが口を押さえた。テリーが青ざめる。
「ちょ! ちが! サリア! これは誤解よ! メニー! 変なこと言うんじゃないの!」
「うーん……ドレス破くなんて……酷いよぉ……」
「まっ」
サリアが眉を下げる。テリーの血の気がさーーーっと引いていく。
「メニー! 起きて! とりあえず、ドレスを着るのよ!」
「むにゃむにゃ」
「メニー様がこんな風になるまでお戯れを…。やりますね。テリー」
「サリア! わかってるくせに!」
「あら、何をですか?」
サリアのにやにや笑う顔にテリーが顔を引き攣らせる。再びメニーの肩を揺する。
「ちょ! 本当に! メニー! 起きろ! 起きて! 起きて事情を話すのよ!」
「くかー」
「メニーーーーーーーーー!!!!」
その夜、テリーの悲鳴が屋敷中に響き渡ったのだった。
ドレスの代償 END
――――――――――――――――――――
(ああ……、疲れた……)
テリーが体操着のままベッドの上にダイブする。
(お腹すいた……。ステーキ……。ステーキが食べたい……)
テリーがうとうとと瞼を動かす。
(夕飯いつかしら……)
瞼が重くなっていく。
(待つ間、少し休もう……)
瞼が下りれば深呼吸。整った呼吸を繰り返す。テリーが眠る。すやすやと眠りだす。
その中で、トントンと扉がノックされた。
「テリーお姉ちゃん」
扉が開く。メニーがひょこりと顔を覗かせた。
「……あ、寝てる」
すやすや眠るテリーがいるベッドまで近づく。
「おねーちゃーん」
声をひそめて呼んでみる。テリーが起きる気配はない。
「ご飯が出来たよー」
声をひそめて言ってみる。テリーが起きる気配はない。
「……んー」
メニーは考える。
(疲れてるだろうし、起こすのは可哀想な気がする)
メニーが眉をひそめる。
(でも起こさなかったらお母様にどやされるし、お姉ちゃんもなんで起こさなかったのよって文句言ってきそう……)
メニーが唸る。
「うーん!」
よし、こういう時は、ドロシーに相談だ!
「いでよ! ドロシー!」
ドロシーは現れない。
「あれ?」
メニーが辺りを見回す。
「あれー? ドロシー?」
ドロシーの気配はない。
(……キッチンかも)
ドロシーは諦め、メニーはテリーに手を伸ばすことにした。肩をとんとんと軽く叩く。
「お姉ちゃん、ご飯できたって」
「んん……」
テリーが身じろぎ、寝返った。
「……あと五分……」
「はい、過ぎた。お姉ちゃん、起きて」
「んん……」
テリーは起きない。身じろいで、唸って、再び夢の中。
「くかー……」
「お姉ちゃんってば」
「ぐうー……」
「おねーちゃーん」
メニーがテリーを呼ぶ。肩を揺らす。何とかテリーを起こそうとメニーが頑張る一方で、テリーの夢では、メニーは高笑いをしていた。
「おーっほっほっほっほっほっ! テリーのことを死刑にしてやるー!」
「ぎゃーーーーー!!」
「どう? テリー? 逆さづりにされる気分はー!」
「メニーーーーーー!!!」
テリーが必死にもがく中、メニーが運動会の優勝カップを握り締めた。
「優勝は私、メニーだー!」
「なぁぁああああにぃぃぃいいい!!?」
リトルルビィが、ニクスが、キッドが、ソフィアが、リオンが、メニーに拍手をする。
「おめでとう! メニー!」
「さすが皆のプリンセスだね!」
「くくっ。テリーとは大違い。彼女こそプリンセスだ」
「くすす。とても輝いてるよ。メニー」
「僕のハニー!」
リオンがテリーを踏んづけて、手を差し出す。
「ぎゅふ!」
「さあ、ハニー! ニコラなんて放って、僕と一緒にランデブーに出かけよう!」
「リオンてめぇぇえええええ!!」
「きゃ! 素敵!」
メニーがテリーを踏んづけた。
「ふぎゃ!」
「愛してるわ! ダーリン!」
「運動会の優勝カップが似合ってるよ! ハニー!」
「さあ、私をお城まで連れて行って!」
「君のためならどこにだって! さあ、行こう!」
ふみふみふみふみ。
「てめえら! このあたしを踏んづけるなんて! 許さない! この、馬鹿夫婦! この! この、この、この……!!」
テリーが睨みつけた。
「メニー!!!」
メニーがきょとんとした。
「……お姉ちゃん?」
「……めにー……むにゃむにゃ……」
「お姉ちゃん? もしかして、私の夢見てるの?」
メニーが顔を近づける。
「お姉ちゃん、起きて。私、ここだよ」
「メニー……てめえだけは許さない……」
「お姉ちゃんってば、何言ってるの。……まさか、喧嘩した時の夢? ああ、もう……」
メニーがうんざりげに眉を下げた。
「お姉ちゃん、起きてよ」
「この……」
テリーがメニーの手を掴んだ。
「ん?」
引っ張られる。
「ひゃ!?」
ぼふん、とメニーがベッドにダイブした。慌てて起き上がる。
「ちょ、お姉ちゃん!?」
――おーほっほっほっほーーーお。テリーのばーか!
――何をををををををを!!!
「お前のドレスなんて……こうしてくれるー……」
「お姉ちゃん、いだだだだ! 何!? 何!? お姉ちゃんってば!」
メニーの上にテリーが覆いかぶさる。慌てて肩をとんとん叩くと、テリーの手がメニーの胸元を掴んだ。
「えっ」
びりーーーーー!!
「きゃーーーーーー!!!!」
メニーが悲鳴をあげた。
ドレスの胸元がテリーによって破られ、はだけた。
「お、おねーちゃーーーん!!」
「ドレスなんて……こうしてくれるー……」
びりーーー!!
「お姉ちゃん! 寝ぼけてるでしょ! 起きて! おねえちゃ…」
はっ!
「目を瞑ったまま、ドレスを破いてるだと……!?」
「ぐー……」
「お姉ちゃん! 起きて! お姉ちゃん!!」
「メニー……」
びりびりびりーーー!
「きゃーーー! やめてーーー!!」
メニーが逃げようとしても、テリーがメニーを離さない。
夢の中では、メニーとテリーは格闘している。
「テリーはドレスも持ってないんだね! 可哀想! おーっほっほっほっほーお」
「馬鹿野郎! あたしが普段から体操着を着てると思ったら大間違いよ!」
「『てりぃ』だって! ああ、なんてダサい体操着!」
「なにをーーーーーー! お前のドレスなんて!」
テリーの目は開かない。
「こうしてくれるわー」
びりーーーー!
「お姉ちゃん! もう、もう破くところがないよー!」
「ぐかー」
「助けてー! 誰かー!!」
キャミソールとカボチャパンツ姿になったメニーがテリーの下でもがく。
「お姉ちゃん! 起きて! お姉ちゃん!」
「許すものかー」
「理不尽だ! 何この執念! ドレスに恨みでもあるの!?」
「メニー」
「うわぁーーーー! ご勘弁をーーー!!」
伸びた手に、メニーがぎゅっと目を閉じる。体に手が巻き付いてくる。
(むぎゃ!?)
ぎゅっと、抱きしめられる。
「……」
テリーに抱きしめられている。
「……」
メニーがそっと目を開けた。テリーはメニーを抱きしめたまま、眠っている。
「ぐかー……」
夢の中では、メニーを羽交い絞めにして格闘している。
現実では、メニーを抱きしめている。
「……もう……」
メニーがため息混じりに言葉を吐いた。
「お姉ちゃん、妹のドレスを破くなんて貴族令嬢失格だよ」
メニーの手がそっと、テリーを抱きしめ返す。
「お姉ちゃん、いい加減に起きてよ」
「むにゃー……」
「お姉ちゃんってば」
「くかー……」
「……もう……」
メニーがもぞもぞと動くと、テリーの腕の力が強くなった。
(うぼっ!?)
メニーを離さなさい。
メニーがぐっと抜けようと力を入れてみる。
「お姉ちゃん……!」
「……にー……」
「え?」
「メニー……」
メニーを抱きしめて離さない。
メニーを離さないテリー。
テリーがメニーを抱きしめる。
メニーが硬直する。
テリーがメニーの背中に頬をこすりつけた。
「……離さない……」
テリーが呟いた。
「あたしの……もの……」
その瞬間、
メニーの目が、閉じられる。
メニーの目が、しばらく閉じられる。
目が、そっと開けられた。
「……」
青い瞳がゆっくりと動く。自分の背中に乗っかるテリーに振り向く。
「……ぐー……」
青い瞳が振り向き、そのまま、体ごとテリーに振り向いた。
「……」
手が伸びた。テリーの体操着を掴み、そのまま、持ち上げる。
「……ぐー……」
テリーの体操着が脱がされる。
「むにゃ……てめ……くー……」
テリーのハーフパンツが脱がされる。
「……ふがー……」
脱がした手が体操着をベッドの外へ投げた。
「……」
キャミソールとかぼちゃパンツ姿になったテリーを抱きしめ返す。
「……」
抱きしめて、横向きに、向かい合って寝転がる。
「……」
肌と肌がくっつく。
腕と腕がくっつく。
足と足がくっつく。
「……」
青い瞳がテリーから離れない。
「……」
顔が近づく。
「……」
唇が近づく。
「……」
鼻がくっついた。
「……」
止まる。
青い瞳が、
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
テリーを見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
見つめる。
「ふふ」
笑い声が漏れる。
「ふふふ」
そっと、テリーの頬に手を添える。
「……」
青い瞳がテリーを見つめる。
口は開かない。
青い瞳がテリーに手を伸ばす。
指で優しくテリーを撫でる。
「……ん」
テリーが眉をひそめる。青い瞳がくすりと笑った。
「……んん……」
触れてみる。
テリーが唸る。
触れてみる。
テリーがピクリと動いた。
触れてみる。
「……うう?」
「しー」
静かに、というように息を出すと、テリーが黙った。
「……ん」
再び、夢の中。
青い瞳が微笑んだ。
もっと触れる。
テリーが眠る。
もっと触れる。
テリーが肩を揺らした。
もっと触れる。
テリーが眉をひそめた。
頬に唇をつけてみる。
テリーは気持ちよさそうに眠る。
だから触れる。
「……ん」
触れる。
「……ん、どこ、触って……」
触れる。
「ふふ、……くすぐったい……」
触れる。
「ん……この……メニー……」
触れる。
「てめ……よくも……」
触れる。
「ん、くくっ……そこは、ふふ、だめ……」
触れる。
「……あ……」
唇を寄せる。
「ちゅ」
青い瞳が、目を閉じることなく、テリーを見つめる。
頬に唇をつければ、眠るテリーがいる。
手を握れば、握られるテリーがいる。
足を絡めれば、絡められるテリーがいる。
青い瞳が、テリーを見つめる。
「離さないで」
手を、握り締める。
「離したら、駄目」
見つめる。
「私も、離さない」
青い瞳が、囁く。
「絶対に、離さない」
テリーを見つめる。
(*'ω'*)
――ゆさゆさ。
(……んん?)
体を揺らされ、テリーが眉をひそめ、呻いた。
「あたしの……優勝カップは……渡さない……。これは……あたしのものよ……」
「テリー、起きてください」
(あ……サリアの声……)
テリーがそっと目を覚ます。思った通り、サリアが目の前で自分の顔を覗き込んでいた。
(……夕食が出来たのね……)
ふわあ、とテリーが大きな欠伸をする。
「今夜のご飯……何……?」
「あら、まだお腹空いてるんですか?」
「あたし……お腹はぺこぺこよ……。今日一日、運動会でずっと体動かしてたんだから…」
「でも、テリー、もう食事は済んだのでは?」
「何言ってるのよ……。あたし、寝てたのよ……。どうやって食事するのよ……」
「だって、どう見たってこれは」
サリアが呟く。
「食後では?」
「あ?」
テリーが振り向く。メニーのドレスがボロボロで、キャミソールとかぼちゃパンツ姿で眠っていた。
「……」
頬を赤らめ、しんどそうに眠っていた。
「……」
テリーが自分の手を見る。メニーのドレスの一部を握っていた。
「……」
自分も体操着は着用しておらず、下着姿だ。
「……」
テリーが眉をひそめ、ゆっくりと振り向く。
サリアは真剣な顔で、テリーを見ていた。
「テリー」
肩を、ぽんと叩かれる。
「いいですか。近親相姦はばれないようにしないと」
「誰が近親相姦だーーーーーーーー!!!」
悲鳴のように叫び、テリーが慌ててメニーの肩を揺らす。
「メニー! 起きなさい! 一体何があったの!」
「うーん……テリーお姉ちゃんの……えっち……」
「まっ」
サリアが口を押さえた。テリーが青ざめる。
「ちょ! ちが! サリア! これは誤解よ! メニー! 変なこと言うんじゃないの!」
「うーん……ドレス破くなんて……酷いよぉ……」
「まっ」
サリアが眉を下げる。テリーの血の気がさーーーっと引いていく。
「メニー! 起きて! とりあえず、ドレスを着るのよ!」
「むにゃむにゃ」
「メニー様がこんな風になるまでお戯れを…。やりますね。テリー」
「サリア! わかってるくせに!」
「あら、何をですか?」
サリアのにやにや笑う顔にテリーが顔を引き攣らせる。再びメニーの肩を揺する。
「ちょ! 本当に! メニー! 起きろ! 起きて! 起きて事情を話すのよ!」
「くかー」
「メニーーーーーーーーー!!!!」
その夜、テリーの悲鳴が屋敷中に響き渡ったのだった。
ドレスの代償 END
1
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
君は今日から美少女だ
藤
恋愛
高校一年生の恵也は友人たちと過ごす時間がずっと続くと思っていた。しかし日常は一瞬にして恵也の考えもしない形で変わることになった。女性になってしまった恵也は戸惑いながらもそのまま過ごすと覚悟を決める。しかしその覚悟の裏で友人たちの今までにない側面が見えてきて……
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる