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緑の魔法使い(NL)

嫉妬するほど恋煩い

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「ユアン、サッカーしに行こうぜ!」
「おれ、漫画読んでるからやだ!」
「えー? じゃあルーチーのとこ行ってくる!」
「うん。そーして」
「母ちゃーん! ルーチーんとこ行ってくるー!!」

 そう言って目立つ赤ジャージの姿でセインが外に飛び出していった。セインは俺にその気がなかった時、必ず『ルーチー』のところに行った。魔法学校で出来た友達とかなんだとか言って。

 帰ってきたらいつもルーチーの話で盛り上がってた。

「母ちゃん、あのね、ルーチーがグミくれた!」
「あら、じゃあ今度の遠足実習の時にお菓子分けてあげなさい」
「うん! お菓子交換しようぜって言ってるんだけど、ルーチーお小遣い少ないらしいから、おれがいっぱいあげるんだ!」
「ジェイ、二人の送り迎え頼むよ」
「俺一応受験生なんだけど」
「いいじゃないのさ。どうせあんたなら志望校だって簡単に受かるよ」
「まじで言ってんの? 面倒くせ……」

 ジェイ兄ちゃんは『ルーチー』に会ったことがあるらしいけど、俺は特に興味なかった。学校に友達がいたし、セインにも友達がいるんだなって思う程度だった。

 だから『ルーチー』とセインが良い関係を築けているのは、個人的にも良い事だと思ってた。その後セインは心臓病が見つかって学校を辞めてしまったけど、それでも時々『ルーチー』の話をしてた。

「あいつ今頃何やってんのかな」

 月刊マジック・ディアの新人魔法使い特集を見ながら、セインが呟いてた。切なそうな姿を見ても、俺は『ルーチー』が誰なのかもわからないし、あれから11年経って、捜すにも捜し出せなかった。

 だから、これはきっと良い事なんだ。

 二人が、俺の部屋で、仲良くゲームをしているなんて、きっとすごく良い事のはずなんだ。

「おい~! 邪魔すんなよ~!!」
「くらえ! 甲羅ロケット!」
「うがー! うわっ! おまっ、ちょ、ふーざーけんなやー!」
「あはははは!!」

 胸がもやもやする。怒りに近い感情が頭に上って、制御できなくなりそうだ。

「ちょー! 三位になっちゃってるってばー!」
「よーし! 一位!」
「くらえ! 雷落とし!」
「あっ! な、な、何するの!」

 セインとルーチェが小突き合う背中をクレイジーが冷ややかな目で見ていた。

「あーーー! エンジンが切れたーーー!!」
「いただき!!」
「あっ!!」
「「あーーーーー!!」」

 ルーチェが一位になり、セインがルーチェの肩を叩いた。

「お前、やりやがったな!」
「やったー!」

 同じように笑いながら二人が手を叩き合う。

「次コースど、どうする?」
「あれは? チキチキ」
「あー、チキチキ? いいよ!」
(……ねー。彼女っぴー? 勉強しに来たんだよねー?)

 怒り心頭。逆に冷めていく頭の中で、それでもモヤモヤ黒いものが渦巻く胸を感じながらその背中を見つめる。

(遊ぶためじゃないよねー?)
「俺チキチキ好きでさ、ユアンともよく……」

 セインが振り返ると、クレイジーと目が合った。弟の冷めた目を見て、セインがぶふっ! と吹き出し、それにイラっとしたクレイジーが顔をしかめさせ、セインが笑いを堪えながらルーチェの肩を揺らした。

「これ終わったらやめるべ……」
「ん? どうかした?」
「後ろ見てみろよ……!」
「え?」

 ルーチェが振り返った瞬間――にこにこ笑うクレイジーと目が合って、ルーチェが首を傾げた。

「え? なんかあった?」
「……ルーチェっぴ、勉強する時間なくなるっぴよー?」
「あ、……わー、本当だ。ちょっとだけのつ、つもりだったのに」
「これやったら勉強戻ればいいっしょ!」
「うん。そうする」
「よーし、最終レースだ!」

 最終レースだからこそ本気の盛り上がりを見せる二人。あーあ。楽しそう。いいねえ。いいねえ。兄ちゃんはリハビリ中だけど元気だし、彼女のルーチェは彼氏を放っといて彼氏の兄である親友と楽しそうにしちゃってさ?

(何? こんなに想ってるの俺だけ? 普通彼氏放っとく?)
「はあー! 今日も走ったぜー!」
「お疲れ様ー」
「おっつー」

 ルーチェがゲームの片づけをし、セインがおもむろに振り返り、のそのそとクレイジーに近付き、隣に座って――声をひそませる。

「わかったって。邪魔者は消えるから」
「別にいいんじゃない?」
「怒るなよー。もー」
「うざいって。何?」
「顔に出てる」
「何が」
「『不快だ』って」

 クレイジーが睨むと、セインが笑い、クレイジーの背中を叩いた。

「ルーチーに当たるなよ」

 小さく囁き、立ち上がる。

「ルーチー、俺も戻って資格の勉強するよ」
「あ、だったら一緒に……」
「は?」
「なーに言ってんだよ! ルーチー! ユアンが構ってほしそうだから構ってやってよ!」

 思わず出たクレイジーの低い声を隠すようにセインが大声で断り、ドアノブを握り締めた。

「じゃね」
「うん。じゃあね」

 ルーチェが手を振って見届け、セインが部屋から出て行った。静かになる部屋。ルーチェがようやく動き出し、クレイジーの隣に座った。

(ふう。勉強途中だった。どこまでやったっけ?)
「……」
(あー、そうだ。ここだ、ここだ。これやろうとした時にセーチーがゲームやりたいって入ってきて……)
「……だる」
「ん?」

 横を見ると、真顔のクレイジーが伸びていた。

「やる気失せた」
「……クレイジー君、まだ勉強する必要あるの?」
「移行期間でもテストはあるから」
「あー、そっか」
「……」
「ちょっと休憩したら?」

 ルーチェが優しい手でクレイジーの背中を撫でた。

「水飲む?」
「いらない」
「あ……うん。わかった」

 ルーチェがクレイジーの背中から手を離そうとすると――手首を掴まれた。

(うん?)
「駄目」

 ルーチェがきょとんと瞬きする。

「撫でてて」
「……あ、うん」

 クレイジーの背中を撫でると、急にうずうずしてきて、我慢できずクレイジーが両手を広げ、勢いのままルーチェに抱き着いてきた。

「わっ」

 そのまま動かなくなる。

「……クレイジー君?」
「喋んないで。今」

 抱き締めてる温もりが憎たらしい。

「なんか、すげーモヤモヤする……」
「……あ、低気圧じゃない? あたしもよくあるんだ」
「好きって言って」
「……なんか嫌なことでもあった?」
「……はーー……」

 クレイジーが大きく溜め息を吐き、ルーチェが顔をしかめる。え、何この子。急に機嫌悪くなって。どうしたの? 抱きつく体を優しく撫でると、クレイジーが腕に力を入れてきた。

「あんさ……」
「うん?」
「勉強しに来たんだよね?」
「え? うん」
「なんでゲームしてんの?」
「……え? クレイジー君もし、してたじゃん」
「や、だからさ、いや、な、つーか、なんか……。……」
「……や、……うーん。……そうだね。ゲームやりすぎたかも。うん。それは、ごめん」
「や、そうじゃなくて」
「え?」
「ゲームするのは良いんだけどさ」
「え!?」
「や、だから、なんか、や、……うーん……」
(……え?)

 ルーチェがはっと気づく。

(なんで泣いてるの!?)
「……んー……」
「く、クレイジー君!? 大丈夫!? どうしたの!?」
「んー……」
「低気圧だよ! あたしも低気圧になるときぶ、きぶ、気分が、モヤモヤしてくるから、低気圧が全部悪いんだよ!」
「……」
「……大丈夫?」
「……っ」
「よしよし」
「……」
「大丈夫、大丈夫」
「……」
「ゆっくりでいいよ」
「……。……。……」
(……情緒不安定?)

 あ、そういえば男の子も生理みたいな現象があるって聞いたことあるな。情緒が安定したり、不安定になったり。ホルモンバランスのコントロール大変だよね。仕方ない。ここはあたしがお姉さんになるか!

 なんだか誇らしくなったルーチェが更に優しく、まるで子供を撫でるような優しい手付きでクレイジーの頭を撫でた。ふふん。あたしお姉さーん♪ とルーチェが思う頃――クレイジーは自分のふがいなさに呆れていた。

(やっちまったー……)

 感情が溢れ出して止まらなかった。

(情けねー……)

 これではまるで母親の体にしがみつく子供。男らしくない。彼氏っぽくない。

(歴代の彼女にこんなとこ見せた事ないのに……)
(よーしよし。いいんだぞー。全部吐き出していいんだぞー)
(あー、良い匂いする。やばい。エッチしたい)
(大丈夫だぞー。全部、低気圧のせいだからなー。大丈夫だぞー)
「ルーチェっぴ」
「ん?」
「好きって言って……」
「……」
「……」
「……うーん」
「……彼氏なんだけど」
「うーん」
「つーかさ、……いつになったら好きって言ってくれんの?」
「や、それは、……うーん」
「キスしたじゃん」
「……んー……」
「俺は好きだよ。もう大好き。誰が好きって訊かれたらルーチェって答えられる」
「うーん。それは……んー……」
「それはって何?」

 あ、またイライラしてきた。落ちつけ。落ちつけ。冷静に。相手はルーチェだぞ。そうは思っても、セインと笑い合うルーチェがこびりついて頭から離れない。

「想ってるの俺だけ?」
「クレイジー君、い、一回落ち着いて?」
「こんだけ想ってるじゃん。愛してるじゃん」
「う、うん。いつもありがとう」
「や、……だからさ!」
「っ!」

 大きな声にルーチェの体が強張った。それを感じ取り、クレイジーがすぐに後悔し、けれど感情も溢れ、――ただ、黙ってルーチェを抱きしめた。

「……好きって……言って……」
「……ご、ごめん。一回、あの……」

 ルーチェが体を離そうとするが、クレイジーの腕がルーチェを離さない。仕方なく、そのまま会話を続行する。

「大丈夫?」
「……なんで言ってくんないの……?」
「だから、それは……嘘つきたくないから」
「……」
「まだ好きか……わかんないし……」
「エッチしたじゃん」
「や、う、えっと」
「したじゃん」
「うーん」
「何? キープ?」
「き、うん? 何?」
「彼氏じゃなくてキープしてんのかって」
「きーぷ? えっと、……ん? あ、……キープね。ああー。それは違うよ」
「じゃあ何? はっきりしろって。まじで」
「……『好き』だけが恋人なの?」

 その言葉に、クレイジーの腕が緩んだ。少し距離を離せば、お互いの顔を見合う。

「あたしは、その、ごめん。好きとか、その、恋愛面で、よく、わかんないから……まだ、好きとは……言えない、かなって」

 いつも恋しい彼女にイラついてたまらない。いっそのことこのまま犯して傷付けてしまおうか。恋人なら良いよな?

「でもね?」

 ルーチェの手がクレイジーの手に触れて、茶色の瞳をクレイジーに向けた途端、憎しみが一気に消え失せた。ルーチェが真剣な顔で自分だけを見つめている。

「こうやって触れ合って、落ち着くなっておも、思うのは、ユアン君とミランダ様だけだよ?」

 ルーチェの言葉が耳に入れば、憎いと思っていた彼女が突然再びとてつもなく愛おしく感じて来る。クレイジーから近付いた。ルーチェはなんとなく察した。瞼をゆっくりと閉じると、唇が触れ合った。クレイジーの心臓が思春期の少年のように速くなった。一度離れる。けれどもう一度したくてまたキスをする。手は握り合ったまま。唇を離す。お互いが息を吸う。そして再びキスをする。唇が動く。その拍子にクレイジーから舌を入れてきた。ルーチェが小さく口を開ければ舌が絡まった。クレイジーの股間が熱くなってきた。舌が交わる。好きな人の舌に触れている。依存してしまいそうな感覚に目眩が起きそうになる。唇を離す。お互い、息を切らしていた。

「……ルーチェ」
(わっ)

 またたくましい腕に抱きしめられる。

「ごめん。……ヤキモチ妬いて、モヤモヤしてた」
「……ヤキモチ?」
「セインと遊んでたから」
「……え? セーチー? なんで?」
「ルーチェはさ、……俺とミランダちゃんが仲良くお喋りしてたらムカつかない?」
「えー……あー……ちょっと……うん。嫌かも」
「でしょ?」
「ミランダ様取られたって思うもん」
「……」
「え? なんか変なこと言った?」
「そこはさー」

 両手で軽くルーチェの両頬をつねる。

「ユアン君が取られたら嫌、って言うところじゃない?」
「ミランダ様の方がやだ」
「……」
「……ヤキモチ……妬いてくれたの?」

 黙ったままクレイジーが頷いた。

「あたしだよ?」

 黙ったままクレイジーが頷いた。

「うへえ。まじ?」
「だから、好きなんだって。本当に」
「……んー。……あたしも、あの、あの、えっと、ほら、アンジェちゃん? が、あの、ミランダ様の弟子って知った時に、すごく嫉妬したけど……でも、恋愛はまた別じゃない?」
「別じゃないし、同じ気持ちだと思うよ」
「でもさ、だって……ミランダ様は、ア、ア、アーンジェちゃんのことも可愛がるから、あたしはすぐヤ、ヤキモチ妬くけど……恋人は、さ? キスしたりとか、その人でないとしないわけでしょ? 嫉妬する意味ある?」
「嫉妬するでしょ。好きな人が自分に見せた事ないくらい笑ってたら」
「……そんなに笑ってた?」
「笑ってた」
「……でも、セーチーは……弟みたいなもんだから……」
「セインは妹みたいなもんだからって言ってた」
「えー? あたしがお姉さんなのに」
「……」
「……妬いてる?」
「妬いてる。むかつく」
「……キスする?」
「……」

 再度唇が重なった。この子は俺のものだと思いながら、クレイジーが口づけしていく。ルーチェはそんなクレイジーを抱きしめ、彼の欲求に応える。手が触れ合う。指が絡み合う。キスが続く。クレイジーが下から熱を感じた。ルーチェが一生懸命彼からのキスに応える。そんなルーチェを見て余計に熱が広がっていく。唇が離れ、クレイジーがルーチェの耳元で訊いた。

「して、いい?」

 ルーチェが黙った。見下ろすと、彼のジーンズから膨らんだ箇所が見える。

「……収まらない……よね?」
「……抱きたい」
「……ゴム、つけてくれる?」
「もちろん」
「……大丈夫だよ。昨日の夜、毛の処理したし」
「……」
「じゃなくて、あの、えーと、……とにかく、あの、……ちょっとだけなら……いいよ」
「……いいの?」
「うん。いいよ」
「イラついてるから酷くしちゃうかも」
「ユアン君ならいいよ」
「……」
「……でも、あの、……あまり、痛いのはやだ、かな……?」
「……ベッド行こ」
「あ……、……うん」

 二人でベッドに移動し、一緒に横になる。クレイジーがルーチェを抱きしめ、ルーチェもクレイジーの腰に手を回す。クレイジーのアソコが当たる。ちらっと見上げると、クレイジーが起き上がり、覆い被さるような形でルーチェを見下ろす。

(……痛くされるのかな?)

 ルーチェがクレイジーを見つめる。

(どんな触られ方しても……我慢できるといいけど……)

 クレイジーの手がルーチェの頬に触れる。

(わ、びっくりした)

 優しく添えられるだけ。

(あ)

 クレイジーから唇を重ねてきた。その感触が――何とも優しい。

(……あ……)

 唇が動き出す。ついていく。長いキスが続く。だんだん濃厚になってくる。それでもクレイジーは優しく触れ、優しく、繊細に、割れ物のように、ルーチェに触れ続ける。

(……ぼうっとしてきた……)

 優しすぎる触れ方に体が熱くなってくる。

(機嫌、治ったのかな……)

 ルーチェが瞼を閉じると、再び唇が押し付けられた。


(*'ω'*)

 その体温を刻むように触れられる。優しく、長い時間、撫でられるように、なぞられるように、細かく、優しく、綿のように。そんな触り方をされ続ければ――体が少しの感触だけでも過敏に反応するようになった。

「……っ」

 首筋にクレイジーが優しくキスをしてくる。

「ひっ……ん……!」

 指は既に濡れた陰部に触れている。

「はっ……ぅ……んっ! ……ん……」

 溢れてくる水の量を指で感じ、クレイジーの胸が高速で動き、尚且愛しい彼女の卑猥な姿にズクズクと良くない欲が走り、息が震え、股間に熱が上がっていく。クレイジーにもわからない。ルーチェにもわからない。ただ、体が酷く興奮している。

(今日、やばい)
(なんか、変)
(ルーチェ……)
(うわっ、その触り方、やば……)
(やばい。ルーチェ可愛い。すげ……)
「(あっ、やばい。声、出る……!)……あっ……」
「……ここ?」
「ゃっ、んっ! んんっ!」
「ね、なんか、今日、やばくない?」
「な、ん、はぁ、うん。なんか……うん……んっ……!」

 ルーチェがクレイジーの手に触れた。

「ま、ま……ってぇ……!」

 眉を下げ、体をくねらせ、快楽に耐えるその顔が非常にそそられる。

「イッていいよ」
「はず……かしい……からっ……」
「彼氏だもん。見せて」
「あ、ああ……あ……あっ……あ……、……っ、……っっ、んっっっ!!」

 ルーチェが体を強張らせ、固まった。

「~~っっっ……♡!!」

 中では痙攣を起こし、クレイジーの指を絞めつける。その感覚が嬉しくて、満たされたような気分になって、クレイジーがゆっくり抜こうとして……ひらめいた。

(あ、そうだ)

 クレイジーがルーチェのこめかみにキスをして、おもむろに起き上がる。ルーチェは止まらない痙攣を収めるため一時その場で呼吸を整えることにした。中ではまだ痙攣が続いてる。

(うう……)
(あ、あったー)

 ルーチェに使おうと思って新しく買ったローター。ピンク色可愛いでしょ。

「ルーチェ、これ使っていい?」

 一目見せれば、いつも棚に置いてるルーチェはそれが何なのかすぐにわかる。チラッと目が動き、不安そうに眉を下げた。

「つか……うの……?」
「使ったことある?」
「……いや……」
「じゃあプレイデビューしよ」
(小説の参考程度にエロ漫画とかで見たことあるけど……使うことになるとは思わなかったなぁ……。……クレイジー君、ピンク色持ってたっけ……?)

 クレイジーがスイッチを入れた。ぶるぶる震え始める。スイッチを切った。止まる。

「……」

 ルーチェがシーツで前を隠しながら起き上がり、リモコンに触れた。スイッチを入れた。震えた。スイッチを切った。止まった。

(うわぁー! 見本盤で弄ったことあるけど、実際目の前にしたらすげーーー!!)
(新しいおもちゃ見つけたみたいな顔してる。何この子。すげえ可愛い)
「えい」
「わっ、ちょっ」
「ふふふっ!」
「こらこら。遊ばない」
「これか、か、買ったの? なかったよね?」
「買った。使いたくて」
「すごーい」

 ぶるぶる震えたローターをクレイジーの肩につけた。

「あ、いい。これ」
「ここ?」
「あ、そこそこ」
「ふふふっ!」
「違うって。ルーチェに使うやつだから。これ」
「……これどうやって洗うんだろう」
「ぬるま湯と石鹸」
「……やってるの?」
「もちろん」
「……病気怖いもんね」
「こういうのはデリケートだから、ちゃんとしないと」
(こういうところこの子しっかりしてるんだよな……)
「ルーチェ、足開いて」
「……するの?」

 身体を隠すシーツを抱きしめ、上目遣いで見られる。クレイジーは時々――ルーチェがわかってやってるんじゃないかと思うのだが――それはそれで燃えるからいいと納得し、口角を上げる。

「やだ?」
「……ちょっと怖い」
「痛かったらやめよ?」
「……ん。わかった。……どうしたらいい?」
「じゃー……座ったままこっち向いて」
「……うん」
「で、ぱんつ穿いて」
「……穿くの?」
「うん」
「ふーん? ……わかった」

 ルーチェがショーツを穿き直し、クレイジーに背中を向けた。クレイジーは後ろからルーチェを抱きしめ、頬にキスをする。

(はあー。やわらかー)
(……この子女の子抱きしめるの絶対好きだよな。……落ちつく……)
(ルーチェ好き)
(クレイジー君の体温、落ちつく……)
(……やばい。すげー好き。ほんとに好き。離したくない)
(やば。寝ちゃいそう……)
(……ちょっと触った方がいいか)
「……あっ……」

 突然の刺激にルーチェの声が漏れた。

「……んっ……」
(痛くしないように少しだけね)
「ん……んっ……」
(やー、エロい声出しちゃってさー)

 セインには聞かせられないね。

(……そろそろいいかな)

 ショーツの中にローターを入れると、冷えた物体にルーチェの腰がびくっと揺れた。ルーチェの胸が緊張で騒ぎ出す。クレイジーが唇を舐め、スイッチを押した。

(あっ)

 感じたことのない震えを感じる。弱。

(あ……こ、こんな、感じ……なんだ……)

 不思議な感覚に、ルーチェが深呼吸する。

(変な感じ……)
「……痛くない?」
「ん……へい……き……」
(……わー。顔エロー……)

 クレイジーが生唾を呑んだ。

(じゃあ……)

 中。

「あっ……」
「あ、可愛い声」
「ん、ちょ、ひっ、ちょっと、あはは、つよ、つよく、なった、ね……んっ」
「気持ちいい?」
「な、なんか、よく、わかんな……」
「これ、足閉じると気持ちくなるって」
「あっ」

 足を閉じさせると、ルーチェが焦りだした。

「あ、やっ、クレ、あっ、まっ、あっ、うそ、まっ、あっ、あっっ!!」
(あ)

 簡単にイッてしまった。ルーチェの体が痙攣して震えるが、まだスイッチは切ってない。ローターは震え続ける。

「あっ……い、イッて……る……から……」
「うん。すげー可愛い。もう今すぐ挿れたいくらい」
「や、やば……これ……も……やめ……」
「上げるね」
「あ、まっ」

 強。

「あ、ま、まって、まって、これ、あっ、や、あっ!!」

 またイッてしまう。ルーチェの体全体が震え、脱力しきった手でローターを抜こうとすれば、後ろからクレイジーの優しい手がルーチェの両手を押さえた。

「やっ! なっ、ちょっ……クレイジーくっ……!」
「その顔すげー可愛い。めちゃくちゃ良い」
「やっ、ちがっ、震え、あっ!」
「気持ちいい? ほら、足開いてる。閉じて」
「あっ、あぁああぁっ! あっ! ああっ! きゃあっ!」
「すげー。またイッた。気持ちいいんだね。ルーチェ。良かった」
「あ、あう……あ……あ……」
「中入れたらもっと気持ちいいから」
「あっ、まっ、まっ……!」

 クレイジーの指がショーツの中へ入り、液が溢れ沸く中へと押し込んだ。

「まっ、待って! い、一回、いっか……!」
「うん。イクとこ見せて」
「んんっ! んんんっ! んぐっ! んんっ!!」
「あ、またイッた?」
「あ……あっ……いっ、イッてる……からぁ……! も……もぉ……」
「……。だね」

 スイッチを切った。

「俺ももう挿れたい」

 ゴムで覆ったそれは既に上を向いてる。ローターを抜き、再びショーツを脱がせ、ルーチェを振り向かせる。

「ルーチェ」
「……ん……」
「おいで」

 ルーチェを抱きしめ、キスをして、少しだけ呼吸を整えさせてから……ルーチェを膝立ちさせた。

「上乗って」
「……重いよ……」
「大丈夫」

 割れ目に性器を当てる。助走をつけるため、その場で当てながら少し擦らせてみる。ルーチェが息を吐いた。クレイジーの手がルーチェの腰を下ろさせた。――入っていく。

「んっ……!」
(あっ、やっぱ、……やべえ……)

 挿れるだけでイきそうになる。

(やば……気持ちいい……)
「はっ……ふっ……はっ……」
「ルーチェ……力……抜いて……」
「ん……んぅ……!」
(はぁ……やば……もう少し……もう少し……)

 ルーチェの尻がクレイジーに乗った。お互い息を大きく吐く。

 クレイジーがゆっくり横になり、ルーチェの腰を両手で掴み、そのまま揺らし始める。

「あぁっ……」

 また感じたことのない感覚にルーチェの肌に鳥肌が立っていく。腰が揺れると入ってるものが自分を刺激してくる。刺激されたら、もう、我を失いそうになる。

「あ……あ……あ……」
「ルーチェ……すごく……いい……」
「ん……んん……」

 刺激され過ぎて、ルーチェの目から生理的な涙が出て来た。それを見てクレイジーがより興奮する。ルーチェが驚いたように目を見開いた。

「やっ!」

 そこで今まで読んできた数々の小説の意味が理解出来た。

(なんか……大きくなってる……)
「……痛い?」
「……だい……じょうぶ……」
「……ルーチェ、うご……」
「え?」
「……(いてって言ったらダメかなあ。……また今度でいっか)じっとしてて」
「あっ」

 下から突けば、ルーチェの顔色が変わって来る。

「あ……あ……あ……あ……♡」
(あーやべえー……。下から見上げてもすげー可愛い……)
「や……♡ あ……♡ ああ……♡」
(あー……イキそう……うわー……やべー……)
「……イキそ?」
「……♡」
「……ん。俺も……イキそう……」
「……ユアン、くん」
「うん、一緒に」
「んっ」
「あっ、やべ」
「んっ♡!」
「うあっ――」




 ――ルーチェがふらりと、クレイジーの上に倒れた。

「「……」」

 中では自分を絞めつけている。

(……やべえ。気持ちいい……)

 ゴムの中は精子だらけだ。

(抜かないと……)
「……」
「……ルーチェっぴ、抜くよ」
「……ちょっと……待って……」

 クレイジーの目に赤面したルーチェが映る。

「う、う、動けない……」
「……」
「はあ……ふう……」
「……。……。……」
「んっ……ひゃっ!」
「……あ、ごめん」
「……え、なんで、お、大きく、なったの?」
「え、ルーチェにときめいたからじゃない?」
「……え? なんで?」
「……キスしよ」
「あ……」

 唇を合わせる。裸の彼女は非常に艶やかで非常に綺麗で世界で一番美しい。

(……俺のもの)

 大切な兄にも渡さない。

(俺のルーチェ)

 華奢な体を強く抱きしめた。


(*'ω'*)


「エリスちゃん、ごめんね。ご、ご飯、一緒にしちゃって」
「全然! ルーチェちゃんはもう家族同然なんだから!」
「や、その、あ、あははは……」
「おら! お前達! さっさと運びな!! なんでルーチェちゃんばっかり動いてんのさ! ふざけんじゃないよ!!」
「セイン兄ちゃんぱすー」
「ジェイ兄ちゃんぱすー」
「めんどくせー」

 テーブルにカレーが並んでいく。

「リベルは夜勤だしコリスも残業みたいだから、ルーチェちゃん、ゆっくりしてってね! 帰りはジェイに車走らせてもらうから!」
「めんどくせー……」
「ルーチェっぴ、こっちおいで」
「あ、うん」

 クレイジーの隣にルーチェが座る。

「いただきまーす」
「どうぞー」
「……あ、美味しい。エリスちゃん流石だね」
「今日はルーチェちゃんが手伝ってくれたからいつも以上に美味しいのよ! うふっっ!」
「え、いつもと変わんなくね? セインわかる?」
「俺もよくわかんない」
「じゃあ食べるんじゃないよ!!」
「「すいませーん」」
(いつもとコクが違う。煮込んだ時間が長いんじゃね?)
「……あれ、お米ついてるよ」
「ん、どこ?」
「あ、こっちだよ。ユアンく……」
「「っ」」

 クレイジーとルーチェが一瞬固まった。その空気を三人が感じ取った。テレビから笑い声が聞こえた。

「……あ、ここね」
「……あ、うん。そうそう」
「取れた?」
「あ、うん。……取れた」
「そっか」
「うん」
「……」
「……」
「「……」」
「……。……。……ジェイ兄ちゃん、ナン取って!」
「うわ、びっくりした」
「俺、なんかすげーナンが食べたい気分ナンだよね! なんつって! あははははは!」

 セインがすぐさま大声を張り上げ、ジェイがナンを取る。エリスが優しい目で見守り、クレイジーとルーチェが真っ直ぐカレーだけを見つめる。

(いや、間違えてない。だってユアン君だもん)
(ユアンって呼ばれた……。名前で呼んでくれた……)
(違う。恥ずかしくない。何も恥ずかしくない。だって間違ってないもん。ユアン君だもん)
(もうこの際クレイジーって名乗るのやめようかな……。いや、でも、名前はルーチェだけに呼ばれたい……)
(カレーだけに集中しよう。美味しい美味しい)
「……ルーチェっぴ、ナンは?」
「あ、……食べる」
「はい」
「あ、ありがとう。あ……ユ……クレイジー君はた、た、食べないの?」
「あ、(クレイジーか……)俺っちは、大丈夫だから」
「あ、そっか。……ありがとう。……はむ」
「(あ、可愛い)口ついてるよ」
「んぐっ」
「あ、大丈夫。食べてて」
「ん……ありがとう……」
「あ、ここも」
「ん」
「俺っちよりついてるじゃん」
「ん……」
「食べ方よw」
「ん……」
(もー……ルーチェは俺がいないと駄目だなあ……)
「ごめん……」
「全然いいよー」
「ありがとう……」
「全然いいよー」

 でれんと頬が緩む弟を見て、セインが顔を引き攣らせ、思わず呟く。

「キモ……」
「ルーチェっぴ、トマトは? あーん」
「あ、あー……」
(うわあー……何この子、可愛いー……)

 プチトマトを食べるルーチェを見て、クレイジーがより頬を緩ませるのだった。






 嫉妬するほど恋煩い END
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