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 剣だこのあるごつごつした大きな手で花嫁のヴェールを上げられる。


「シャーロット、綺麗だ……」


 私とお揃いの真っ白なモーニングコートを着こなすアーサー様に目を奪われる。赤い瞳にまっすぐ見つめられて、頬に熱が集まっていく。

 ゆっくり顔が近づいて、触れるようなキスを交わす。爽やかな甘い香りに包まれると、あまりに幸せで自然と涙が溢れてしまう。


「アーサー様、私、……幸せです」


 アーサー様の目がやわらかく細められる。私の大好きな表情に胸がときめいていく。


「大好きです、アーサー様」
「シャーロット」


 アーサー様の逞しい腕にすっぽりと閉じ込められる。

 みんなの見ている教会なのにと思う気持ちと、アーサー様の爽やかな甘い匂いに包まれたまま、胸の音をもっと聞いていたい。どうしようもなく幸福で心が満たされていく。


「愛しています、シャーロット。俺の隣で、これからもずっと笑っていてほしい」
「……はい」
 

 見つめあう赤い瞳はとても甘い。
 アーサー様と出会えたことを神様に感謝する。


 それから、愛しい人に吸い寄せられるように顔が近づいて、二回目の誓いのキスをした。



 教会の鐘が祝福の音を鳴らす。


 うららかな春、私はアーサー様の花嫁になった。
 真っ白なウェディングドレスを身に纏い、ハルジオン辺境にある由緒ある教会で永遠を誓う。

 副団長のレオン様、ハンナ、辺境騎士団の騎士たち。沢山の大切な人たちに参列してくれて、笑顔でお祝いの言葉をかけられた。




 野蛮な辺境と呼ばれていたハルジオンの辺境。


 いつしか聖女の土地と呼ばれるように。赤獅子の辺境伯によく似た赤い花が沢山植えられて、今日も爽やかで甘い匂いが領地をやさしく流れていく──…




 おしまい
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