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沢山の薬草や鍋など必要なものが用意された。ハンナやレオン様、手の空いているメイドも後ろで控えてくれている。
「それでは、回復薬を作るのをはじめます」
いつも一人で作っていたから、作業を見られるのは落ち着かない。でも、それ以上に回復薬を作ることだけに集中できるのは有り難かった。マローラ子爵家で使っていた壊れかけの鍋や粗雑な薬草ではない、よく磨かれた大鍋と状態のよい薬草を手に取る。
まだハルジオンの辺境に来てわずかな期間しか過ごしていないが、みんなの役に立ちたい。目をつむって、深呼吸をひとつした。
大鍋に注いだ水を魔力水に変化させる。腐った水じゃないから造作もない。綺麗に洗った薬草と刻んだ薬草の実を大鍋に入れて、魔力と練り込む。
いつもは薬草が全然足りないので、薬草の効果を限界を超えるくらい増幅させる魔術をかけていた。今日は薬草が本来持っている力を引き出すように魔術をかけるに留めた。自然に逆らうような魔術のかけ方はよくないから。
あとは、魔力の温度を上げつつ煮込んでいき、水面が私の魔力と同じ翡翠色にキラリと光ったら完成。
「これで完成です。あとは、鑑定して、瓶に詰めていく作業をお願い──」
後ろを振り向いたら、呆気に取られたハンナやレオン様の顔があった。変なところがあったのだろうかと不安で視線が揺れる。
「あの……?」
「すごいですね……! こんな短時間に回復薬ができるなんて、夢だと言われた方が納得する」
「シャーロット様、すごいです! 本当にすごいです! わたくし達は、瓶に詰めていけばいいでしょうか?」
「っ、はい……っ! お願いします。まだまだ回復薬は作れますから、魔力が切れるまで作ります!」
「シャーロット嬢、沢山作ってもらえるのは助かりますが、魔力切れを起こす前にやめてください──団長に殺されかねませんので……」
苦笑いを浮かべるレオン様に告げられた。笑顔のハンナに両手を取られ、ぶんぶん上下に振られる。私まで嬉しくなって微笑んだ。
「鑑定の結果出ました──最上級」
「え?」
起動させていた鑑定の魔道具から結果が通知されて、手を取りあっていたハンナと一緒に固まった。道具と薬草が違うだけで、こんなに回復薬に差が出るなんて……!
レオン様が眼鏡のフレームを押し上げて「もしかして」とつぶやくと、考え込むように目をつむった。
沢山の薬草や鍋など必要なものが用意された。ハンナやレオン様、手の空いているメイドも後ろで控えてくれている。
「それでは、回復薬を作るのをはじめます」
いつも一人で作っていたから、作業を見られるのは落ち着かない。でも、それ以上に回復薬を作ることだけに集中できるのは有り難かった。マローラ子爵家で使っていた壊れかけの鍋や粗雑な薬草ではない、よく磨かれた大鍋と状態のよい薬草を手に取る。
まだハルジオンの辺境に来てわずかな期間しか過ごしていないが、みんなの役に立ちたい。目をつむって、深呼吸をひとつした。
大鍋に注いだ水を魔力水に変化させる。腐った水じゃないから造作もない。綺麗に洗った薬草と刻んだ薬草の実を大鍋に入れて、魔力と練り込む。
いつもは薬草が全然足りないので、薬草の効果を限界を超えるくらい増幅させる魔術をかけていた。今日は薬草が本来持っている力を引き出すように魔術をかけるに留めた。自然に逆らうような魔術のかけ方はよくないから。
あとは、魔力の温度を上げつつ煮込んでいき、水面が私の魔力と同じ翡翠色にキラリと光ったら完成。
「これで完成です。あとは、鑑定して、瓶に詰めていく作業をお願い──」
後ろを振り向いたら、呆気に取られたハンナやレオン様の顔があった。変なところがあったのだろうかと不安で視線が揺れる。
「あの……?」
「すごいですね……! こんな短時間に回復薬ができるなんて、夢だと言われた方が納得する」
「シャーロット様、すごいです! 本当にすごいです! わたくし達は、瓶に詰めていけばいいでしょうか?」
「っ、はい……っ! お願いします。まだまだ回復薬は作れますから、魔力が切れるまで作ります!」
「シャーロット嬢、沢山作ってもらえるのは助かりますが、魔力切れを起こす前にやめてください──団長に殺されかねませんので……」
苦笑いを浮かべるレオン様に告げられた。笑顔のハンナに両手を取られ、ぶんぶん上下に振られる。私まで嬉しくなって微笑んだ。
「鑑定の結果出ました──最上級」
「え?」
起動させていた鑑定の魔道具から結果が通知されて、手を取りあっていたハンナと一緒に固まった。道具と薬草が違うだけで、こんなに回復薬に差が出るなんて……!
レオン様が眼鏡のフレームを押し上げて「もしかして」とつぶやくと、考え込むように目をつむった。
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