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しおりを挟む結婚式当日。
カッコ良すぎるロベルト様に胸が苦しい。どうしよう、死んじゃうかもしれない。今日は眼帯なしで紫の瞳がキラキラ眩しい。
永遠の愛を誓いあって、キス──しようとした時。
「ちょっと待ったあああああ──!」
振り向いたら目がつぶれた。あっ、比喩の意味で。キラキラ眩しい顔面偏差値が天井突破な皆様。闇星☆の攻略対象者、第二王子(トラウマは女家庭教師の鞭)、宰相の息子(トラウマは姉の言葉責め)、騎士団長の息子(トラウマは義母のあれこれ)、そしてヒロイン。
豪華スチルに目眩がする。よろめく私をロベルト様が支えてくれる。腰に回された手にキュンとしたら、おでこにキス。両手で頬を押さえて悶えた。不意打ちのキス、駄目。
「アリア、少しだけ待っててね」
優しい笑顔で告げられて、こくんと頷いたら耳を塞がれた。なんにも聞こえない。
闇星☆全員集まるなんてぽやあと見惚れてしまう。動いてる、話してる、息してる。本物に会えるなんて感動して、転生の神に祈りを捧げた。
「なに? 今、結婚式の最中なんだけど」
「ロベルト、だよな? えええ、笑うとこはじめて見たから、誰かわからなかったわ! いきなり転移魔術で現れて、魔王を魔術一発で倒しておいて、自分だけ転移魔法で帰るし、帰ってきて文句言おうと思ったら結婚式中だし、どういうことだよ?!」
「脳内彼女だと思ってたのに、本当にいたんだ──!」
「その妖精みたいな子誰ですか……? 紹介してほしいのですが……」
「ロベルト、いくらなんでも紫尽くめで独占欲丸出しすぎない? 古竜のペンダントもイヤリングも指輪も色々魔術式が組み込まれ過ぎてて、内容も才能もやばすぎない? ざっと見ただけで、位置情報感知魔術、感情察知魔術、音声通信魔術、盗聴魔術……」
「全員で話すな、煩い。黙ってて。あと、第二王子はアリアのこと見ないで。本当減る」
闇星☆のメンバーが集まるなんて、どうしてだろう? と考えて気づいてしまった。私が知らないだけで交流や友情が芽生えていてもおかしくない。ロベルト様は、後方支援でも魔王討伐メンバーの一員だった。
ロベルト様のタキシードの裾をくいっと引っ張ると、蕩けるような瞳で見つめられた。はあ、旦那様が素敵すぎる。
「あの、もしかして、ロベルトのお友達が、結婚のお祝いに来てくれたの?」
闇星☆メンバーに見守られて、ロベルト様と夫婦に。こんなに幸せでどうしよう。闇星☆メンバーの皆様は、すごく忙しいみたいでロベルト様の転移魔術で式が終わって直ぐに王都へ戻っていった。
戻る直前、お土産に前世の知識をもとに師匠と開発したメロンパンとカレーパンを渡す。ロベルト様の視線が痛かったけど、でも、もう闇星☆の皆様に会えるなんて奇跡は起きないから、許してほしい。
迎えた初夜。
子犬甘えん坊ぼくっ子のロベルト様が、夜になると狼エンドレスおかわり様に大変身。推しの知らなかった色っぽくて艶やかな一面にきゅんきゅんズキューンで、私はしばらくベッドの住人になった。
私の眠りこけている間に、魔王討伐パレードがあったことをロベルト様にお世話されながら聞いた。最高のスチルを見逃して泣いたら、ヨシヨシされて気分上昇。
「アリア、………もう一回、だめ?」
きゅううん、と子犬わんこ顔でねだられる。だめなんて言えない。悪役令嬢に転生したけど、こんなに幸せでいいのか不安になる。頷いた途端に、甘えん坊子犬わんこが肉食狼に大変身。きゃうんきゃうん子犬みたいに鳴かされた。不安はどこかにさようなら。
闇星☆メンバーが、何度も長閑な田舎に突撃してくるようになったり、メロンパンとカレーパンが王都で大流行したり、ロベルト様が本当は魔王を討伐していたと知って大喧嘩する話は、また別の機会にでも。
おしまい
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