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 ◇


 あれから数年が過ぎて、私もロベルト様も十五歳になった。
 魔術の力を覚醒したロベルト様は、あと数日すると王都の学園に行く。つまり学園編を迎えることになる。魔力なんてこれっぽっちも持たない私は、一緒に付いていけないことが辛い。切ない。悲しい。闇星☆のスチル集めしたかった!

「ぼく、アリアにしか紫の瞳を見せたくない!」

 眼帯を着ける姿を見ることができなくて残念だと思っていたら、トラウマからではなく眼帯を着け始めたロベルト様。推しにそんな嬉しいことを言われて、光の速さで転生の神様に祈りを捧げました。

 ロベルト様にトラウマを植えつけなかった結果、幼馴染の距離より近い距離感で、幼さがどんどん抜けて麗しく成長していくロベルト様を目に焼き付けました。カメラがないのが、残念、無念!

「王都に行きたくない……」

「ロベルトなら大丈夫だよ。きっと魔術が向いてると思うし、素敵な出会いだってあると思うよ」

 天才魔術師のロベルト様になって欲しいし、ヒロインと出会って恋に落ちて、魔王を倒して欲しい。ロベルト様と離れると思うと少し、いや、だいぶ、胸がちくちくするけど。ヒロインも見ることのできなかった幼いロベルト様の成長の思い出を、脳内でエンドレスリピートして生きていくつもりだ。

「アリアがいればなにも要らない……ぼくもアリアと一緒にパン屋で働く……」

 うるうる瞳を向けられると心臓に矢がトスッと刺さる。すでに大好きなのに、これ以上好きにさせないで。やめて、イケメンなのに子犬系なのに眼帯で上目遣い。属性がせめぎ合うのに、邪魔しないで仕事するのは、なあぜなあぜ?

「ロベルトは、お料理向いてないからやめよっか?」

 天才魔術師の卵のロベルト様だけど、生活能力がゼロどころかマイナスに振り切れている。お湯を沸かすだけなのに鍋が爆発するってなんでだろう? それを見て、不器用なのも可愛いって思っちゃうのも、なんでだろう?

 むぎゅうと抱きつかれる。ロベルト様の頭をなでなでしながら諭すと、こくんと頷く。可愛くてどんどん甘やかして愛でた結果、ロベルト様はきゅうんわんこになってしまった。はあ、かわよ。

「ロベルトがかっこよく魔術使うところ見てみたいな?」

「分かった……アリアに魔術を見せるために頑張るから……」

 原作では、王都に行ったロベルト様はヒロインに夢中になって田舎に帰ってこない。こんな田舎に帰ってこない。大切なので二回言いました。
 私はロベルト様のこれからの活躍を祈って送り出す。毎日、枕は涙でびしょ濡れに。悲しすぎる。切なすぎる。あああ、もう推しに会えないなんて。あああ、つらたん。
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