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「薬草マーケットの時に、前を通った薬草カフェを覚えてる?」
「っ! 覚えてます……っ!」
とても可愛らしい内装のカフェは、メニューも薬草尽くしで私も気になったので覚えている。こくこく、と首を縦に振るとレオナード様がにこりと笑う。
「一人だと入りにくいから、よかったらアイリーンに付き合ってもらえないかな?」
「そういうことならもちろん! 私も気になっていたので行ってみたいです」
「そうなんだ? 俺たち気が合うね」
まっすぐに見つめられると何だか落ち着かない気持ちになってしまい、手もとの薬草笛をキュッキュッと鳴らす。
「あっ、あの、今の音──っ!」
案内をお願いする鳴き声が出た気がして、レオナード様にパッと顔を向ける。
「──好きだよ」
「え、えっ……すき……?」
優しいまなざしを向けられて、ふわふわただよう甘い雰囲気に心臓がどきどきしてきた。永遠に続くような気がした沈黙の中でレオナード様が口をひらく。
「うん、そう。今の音は、好きって鳴き声だよ」
「あ、あああ、な、な、なきごえ……! そ、そうですよね、ははは、ほんとうにむずかしいですね」
勘違いが恥ずかしくて耳が熱くなる。
「ふふっ、難しいね。でも、あともう一押しかな」
「レオナード様、ごめんなさい。今、なんて言いましたか?」
「なんでもない」
言葉が聞き取れなくて尋ねたけれど、レオナード様は首を傾げて綺麗に微笑む。
「薬草カフェのあとに薬草採取に必要な道具一式も、一緒に買おう。ドワーフの鍛冶屋にドラゴンの鱗を持って行って採取ナイフを作ってもらうのはマストかな。あとはマントとブーツ、採取用カバンをお揃いで買ってもいいけど、ああ、でもアイリーンに俺の装備を選んでもらうのもいいな。アイリーン、選んでくれる?」
レオナード様が目を輝かせて嬉しそうに語るのが、なんだか可愛いと思ってしまう。
「もちろんです! レオナード様とデートするの楽しみです」
「──っ!」
気づけば浮かれてレオナード様の言葉を真似をしていた。驚いて口元を片手で覆ったレオナード様と目が合うと、自身のとんでもない発言に気づいて羞恥に襲われる。穴があったら入りたいし、幻の時魔法で時間を戻したい。
顔から火が吹き出ている私に、レオナード様が近づく。
「アイリーン、今度のデート、楽しみにしててね?」
甘やかな声で耳打ちされて、心臓が大きく跳ねる。
「っ! あ、あの、……お手柔らかにお願いします」
どうしたらいいのか分からず迷った末に出てきた言葉と一緒に頭を下げた。
「っ! 覚えてます……っ!」
とても可愛らしい内装のカフェは、メニューも薬草尽くしで私も気になったので覚えている。こくこく、と首を縦に振るとレオナード様がにこりと笑う。
「一人だと入りにくいから、よかったらアイリーンに付き合ってもらえないかな?」
「そういうことならもちろん! 私も気になっていたので行ってみたいです」
「そうなんだ? 俺たち気が合うね」
まっすぐに見つめられると何だか落ち着かない気持ちになってしまい、手もとの薬草笛をキュッキュッと鳴らす。
「あっ、あの、今の音──っ!」
案内をお願いする鳴き声が出た気がして、レオナード様にパッと顔を向ける。
「──好きだよ」
「え、えっ……すき……?」
優しいまなざしを向けられて、ふわふわただよう甘い雰囲気に心臓がどきどきしてきた。永遠に続くような気がした沈黙の中でレオナード様が口をひらく。
「うん、そう。今の音は、好きって鳴き声だよ」
「あ、あああ、な、な、なきごえ……! そ、そうですよね、ははは、ほんとうにむずかしいですね」
勘違いが恥ずかしくて耳が熱くなる。
「ふふっ、難しいね。でも、あともう一押しかな」
「レオナード様、ごめんなさい。今、なんて言いましたか?」
「なんでもない」
言葉が聞き取れなくて尋ねたけれど、レオナード様は首を傾げて綺麗に微笑む。
「薬草カフェのあとに薬草採取に必要な道具一式も、一緒に買おう。ドワーフの鍛冶屋にドラゴンの鱗を持って行って採取ナイフを作ってもらうのはマストかな。あとはマントとブーツ、採取用カバンをお揃いで買ってもいいけど、ああ、でもアイリーンに俺の装備を選んでもらうのもいいな。アイリーン、選んでくれる?」
レオナード様が目を輝かせて嬉しそうに語るのが、なんだか可愛いと思ってしまう。
「もちろんです! レオナード様とデートするの楽しみです」
「──っ!」
気づけば浮かれてレオナード様の言葉を真似をしていた。驚いて口元を片手で覆ったレオナード様と目が合うと、自身のとんでもない発言に気づいて羞恥に襲われる。穴があったら入りたいし、幻の時魔法で時間を戻したい。
顔から火が吹き出ている私に、レオナード様が近づく。
「アイリーン、今度のデート、楽しみにしててね?」
甘やかな声で耳打ちされて、心臓が大きく跳ねる。
「っ! あ、あの、……お手柔らかにお願いします」
どうしたらいいのか分からず迷った末に出てきた言葉と一緒に頭を下げた。
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