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「アイリーン、人が多いからよそ見をしているとぶつかるよ」
ばくばくと心臓が鼓動を打って身体が茹だり、慌ててレオナード様から離れた。
「す、す、すみません! 助けてくださって、あ、ありがとうございます……っ!」
薬草笛を鞄にしまうと、レオナード様が手を差し出している。
「危ないから手を繋ごう」
「えっ……?」
あまりにびっくりしてレオナード様を見つめれば、優しい青い瞳のまなざし見つめられている。この先は人も多く迷子になりそうだけど、王太子のレオナード様と手を繋ぐなんて畏れ多いにも程がある。
「ええっと……あの……」
「迷子になったら、とっておきの薬草見れなくなるけど?」
「ええっ?! あっ、あの、手を繋いでもらいたいです!」
「ふふっ、了解。ほら、手を貸して」
手を伸ばしてレオナード様の手のひらに重ねると、指と指を絡めるように繋がれた。驚いたけれど、迷子になったら困ると思ってキュッと握りかえす。
「アイリーン、この次は眼鏡屋に行こう! そのあとに、とっておきの店に連れていくよ」
「お願いしますっ!」
とても幸せそうな笑顔で告げられたから眼鏡屋への期待が膨らんで、大きくうなずいた。
薬草マーケットのわき道を進むとこじんまりした煉瓦造りの店が見え、ガラス張りの窓から店内を覗くと眼鏡が並んでいる。
「いらっしゃいませ」
店内へ入ると眼鏡を掛けたエルフと可愛らしい精霊たちに出迎えられた。
「眼鏡を頼む」
レオナード様の言葉で、棚に並べられた眼鏡の中から精霊が眼鏡を選んで持ってくる。きらきら輝く小さな精霊が眼鏡を選ぶ様子も、眼鏡を抱えて持ってくる姿も見ていると幸せな気持ちになる。
「ここの眼鏡は、特殊な精霊ガラスをエルフが加工しているから薄くて軽い上に、度数も自動で合うんだ。アイリーンも頼んでみるといいよ」
レオナード様の提案に大きくうなずく。こんな可愛らしい精霊に眼鏡を選んでもらえるなら、ぜひお願いしたい。
「精霊さん、私にも眼鏡を選んでもらえるかしら?」
私の言葉で精霊たちが眼鏡の棚に向かい、シルバーフレームの眼鏡を渡される。掛けてみると本当にレンズも薄くて軽いし、度数もぴたりと合っている。
「わあ、凄いです……! 今まで掛けていた眼鏡と全然違います」
「アイリーン、よく似合ってる」
「ありがとうございます。レオナード様もお似合いです」
黒フレームの眼鏡をかけたレオナード様は、元々の美丈夫に知的さが加わってまぶしい。
「本当? 嬉しいな。俺、黒が一番好きなんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、好きだ。アイリーンの黒髪も黒い瞳もすごくきれいだと思ってる」
「…………え?」
レオナード様に相槌を打っていたら、私の黒目黒髪を褒められて間の抜けた声がもれた。
ばくばくと心臓が鼓動を打って身体が茹だり、慌ててレオナード様から離れた。
「す、す、すみません! 助けてくださって、あ、ありがとうございます……っ!」
薬草笛を鞄にしまうと、レオナード様が手を差し出している。
「危ないから手を繋ごう」
「えっ……?」
あまりにびっくりしてレオナード様を見つめれば、優しい青い瞳のまなざし見つめられている。この先は人も多く迷子になりそうだけど、王太子のレオナード様と手を繋ぐなんて畏れ多いにも程がある。
「ええっと……あの……」
「迷子になったら、とっておきの薬草見れなくなるけど?」
「ええっ?! あっ、あの、手を繋いでもらいたいです!」
「ふふっ、了解。ほら、手を貸して」
手を伸ばしてレオナード様の手のひらに重ねると、指と指を絡めるように繋がれた。驚いたけれど、迷子になったら困ると思ってキュッと握りかえす。
「アイリーン、この次は眼鏡屋に行こう! そのあとに、とっておきの店に連れていくよ」
「お願いしますっ!」
とても幸せそうな笑顔で告げられたから眼鏡屋への期待が膨らんで、大きくうなずいた。
薬草マーケットのわき道を進むとこじんまりした煉瓦造りの店が見え、ガラス張りの窓から店内を覗くと眼鏡が並んでいる。
「いらっしゃいませ」
店内へ入ると眼鏡を掛けたエルフと可愛らしい精霊たちに出迎えられた。
「眼鏡を頼む」
レオナード様の言葉で、棚に並べられた眼鏡の中から精霊が眼鏡を選んで持ってくる。きらきら輝く小さな精霊が眼鏡を選ぶ様子も、眼鏡を抱えて持ってくる姿も見ていると幸せな気持ちになる。
「ここの眼鏡は、特殊な精霊ガラスをエルフが加工しているから薄くて軽い上に、度数も自動で合うんだ。アイリーンも頼んでみるといいよ」
レオナード様の提案に大きくうなずく。こんな可愛らしい精霊に眼鏡を選んでもらえるなら、ぜひお願いしたい。
「精霊さん、私にも眼鏡を選んでもらえるかしら?」
私の言葉で精霊たちが眼鏡の棚に向かい、シルバーフレームの眼鏡を渡される。掛けてみると本当にレンズも薄くて軽いし、度数もぴたりと合っている。
「わあ、凄いです……! 今まで掛けていた眼鏡と全然違います」
「アイリーン、よく似合ってる」
「ありがとうございます。レオナード様もお似合いです」
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「本当? 嬉しいな。俺、黒が一番好きなんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、好きだ。アイリーンの黒髪も黒い瞳もすごくきれいだと思ってる」
「…………え?」
レオナード様に相槌を打っていたら、私の黒目黒髪を褒められて間の抜けた声がもれた。
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