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番外編 II 『くま好き令嬢は理想のくま騎士に触りたい』
はりねずみの誘惑
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アリーシアが王立エトワル学園を卒業し、アリーシア・オルランドになって数年が経過した。
雨の季節になると、新居のプラムの木は沢山のプラムの実をつける。アリーシアがお酒を飲める年齢になると、プラムのシロップ漬けとプラム酒を漬けるのがアリーシアの、一緒に晩酌するのがガイフレートの楽しみになっていた——。
今日は、ガイ様と去年漬けたプラム酒がちょうど一年経つ日なの。
漬けたばかりのプラム酒は、最初は、透明。そこから氷砂糖がゆっくり溶けていき、数か月すると味わいのある琥珀色へと変わっていくの。その変化する様子を、瓶をゆさゆさと揺らしながら眺めるのが好きなのよね。
「美味しく出来ているかしら?」
「どうだろうな。アリーはソーダ割でいいのか?」
「はい……っ!」
とっても楽しみで、横に座るガイ様を見つめて勢いよく返事をすると、ガイ様が甘く目を細めるの。
「アリーは、元気でかわいいな」
大きな温かな手が髪を撫でると、優しく引き寄せられ、柔らかな感触が頭に落とされる。ちゅ、ちゅ、と甘い音を立てながら、額や耳に甘い感触が降りて来る。サイドにゆるく結わいていた髪のリボンがシュルっと解ける音に我にかえる。
「っ、ガイ様——アリー、プラム酒のソーダ割りが飲みたいです……」
ほんの少し口を尖らせて言うと、そのとんがり口に口づけを落とされてしまう。
結婚してからのガイ様は、いつも口づけを沢山して下さる。嬉しいのだけど、いつも恥ずかしくて顔が熱くなってしまうの。
赤くなった顔を両手で隠していると、ガイ様が笑った気配がしたわ。
指の隙間からガイ様をそっと覗くと、ガイ様はプラム酒のソーダ割りを作って下さるところだったの。
二つの丸みを帯びた薄いグラスに、たっぷりの氷を入れると、琥珀色に色づいたプラム酒をグラスの半分くらい注ぎ、グラスの内側に沿うように炭酸水をそっと注いでいく。
「ガイ様! アリーが混ぜます……っ」
「ああ、これはアリーの仕事だからな」
甘く目を細めるガイ様から慌てて目を逸らして、金色のマドラーを手に持つ。このマドラーは、ガイ様とお祭りの屋台で見つけたお気に入りなの。
くまさんが付いた金色のマドラーをグラスに入れて、くるくる混ぜるとカラカラ鳴る氷の音楽に合わせて、くまさんと泡が一緒に踊る。
氷を持ち上げるようにゆっくりかき混ぜたグラスをガイ様に渡し、二人で乾杯をした。
ひと口こくんと口に含むと、プラムの甘さとソーダの爽快感、そしてほんのりお酒の苦みが、ぱちぱちと口の中で弾ける。
「今年もとっても美味しいですね!」
「そうだな、今年のプラム酒も旨いな」
大きな温かな手が私の金色の髪を撫でる。
爽やかな甘酸っぱさが喉に心地よくて、こくこくと半分くらい飲んだグラスをガイ様が引き抜いた。
ガイ様は少し過保護なところがあるの。アリーはもう立派な大人なのにと思い、じとりとガイ様を見上げる。
「んん、ガイさま、とっちゃ、や、なの……! アリー、よってない、の!」
「今日はいつもよりペースが早かったから酔ったみたいだな……もう寝るか?」
「よってない、の! こども、じゃないから……まだ、ねない、のよ?」
頭をぽんぽんとあやすように撫でるガイ様は、私を酔っていると決めつけているの。
今日やらなくちゃダメなことがあるのに、まだガイ様の切ったばかりの髪の毛に触ってないもの。まだ眠くないし、眠らないの。
むうっと口を尖らせる。
ちゅっと音を立てて、私の尖らせた唇に口付けを落とされる。
丸くした目をぱちぱち瞬かせる。
「アリーはかわいいな」
ちゅっと甘い音を立て、優しく口づけを落とされる。啄ばむような甘い口づけに、慌ててガイ様の口許を両手でむぎゅっと塞ぐ。
「っ、だ、だめ……なの!」
ふるふると首を左右に動かすと、ガイ様が驚いたように大きく目を見開いたの。
「まだ、ぜんぜん……さわって、ないの!」
「朝も昼も触ってただろう?」
「もっと、さわるの……! ガイさまの、むかしは、もっとずっと、さわってたのに、いまは……アリーのじゃま、するから、ガイさま、いやなのっ!」
ガイ様がぴきっと固まった隙に、膝の上に跨がる。
ひらひらした繊細なレースが透ける夜着がはだけて、太ももが露わになるけど、やっと目の前に映ったガイ様の切りたての髪に触るのに夢中で気付かない。
「……ふふ、ちくちくなのー。ガイさまの、かみ、きもちいい、の。だいすき……」
ちくちくでシャラシャラな手触りにうっとりしていると、ガイ様の腕に力が篭り、きつく抱きしめられる。首筋に口づけや熱い吐息がかかる。
「もうっ、や、なの!」
ガイ様がぴたっと止まると、腕の力が緩むのがわかったの。
「——アリー……?」
困ったように眉毛を下げるガイ様の顔を、ぐい、と引き寄せる。
「けっこんしてから、ガイさま、ぜんぜん、さわらせてくれないから、……めっ、なの! アリーがさわると、ガイさまがアリーを、いっぱいさわって、アリーがね、さわれなくなるの……」
ガイ様にぷうと頬を膨らます。
結婚するまでは、切りたてのちくちくを触りたい放題だったのに、結婚してから寝起きにちくちくを触った日は、午後になるまでベッドから出れなくなるの。
ソファで寛いでいる時に、ちくちくに触った日は、ソファに押し倒され、ベッドに逆戻りするの。
心地よいお庭の木陰でちくちくに触った日は、くたりと力の抜ける甘い口づけを時間を忘れるくらいされてしまうの。
髪を切りたての日は、ずっと触りたいだけなのに。
「その、……俺のことがキライになったわけじゃないんだな?」
「ガイさまのことは、だいだい、だーいすき、よ」
「じゃあ、俺に触られるのが嫌とかはないか?」
「ガイさまに、さわられると、きもちよくて、ふわふわしちゃう、の」
ガイ様の太い首に両手を回して、ぎゅって抱き着いた。透けるような薄布の夜着からは、密着したガイ様の熱い体温が伝わる。
「アリー、ガイさまの、いっぱい……さわりたいの! アリーがいっぱいさわったら、ガイさまも、いっぱい、アリーにさわって、いいの……」
おねがい、と耳元に囁くように話すと、ごくりってガイ様の喉が鳴ったの。
「——約束だぞ」
「もうっ、アリーは、……よっぱらいじゃない、のよ?」
絶対だぞ、と念を押しながら笑みを漏らしたガイ様に、大きく頷いたの。
ガイ様が私の腰に腕をゆるく回して、どうぞというように力を抜いたわ。
「んふふ……、ちくちくで、シャラシャラなのー。だいすき、きもちいっ……」
両手でガイ様の頭を、えいっと胸に抱き寄せる。
まずは、手のひらでそおっとなぞる。それから、ゆっくり下から上に撫でるのを優しく何度もするの。上下に大きく動かした後は、境い目に引っ掛けるようにして細かく上下に動かしたりするの。撫でるように優しく、それから手の動きを一定にして速めてみるの。
「ちっくちく~シャラ、シャラ~んふふ、ちくちっく~」
久しぶりにいっぱい触るのが、嬉しくて楽しくて、止まらない魔法にかかった手で、ガイ様の髪の毛の唄を口ずさむの。
「……んふ、きもち、いい、です……」
ガイ様の瞳をうっとりと見つめて、気持ちよさを伝えるの。
酔っ払っているガイ様の顔も赤くて可愛らしい。
先程、ほどけた髪の毛をかきあげて、ガイ様の赤い額に、ちゅっと音を立てて口付けると、もう一度触りはじめる。
「ん、きもちいいです……、すき、すき……」
夢中で触れていると、左手の薬指の金色に光る『くまさんの指輪』が目に映る。
この指輪は、エトワル学園の卒業式の翌日に朝のベッドで左手の薬指にお引っ越しをしたわ。
思い出した途端に、ガイ様への愛おしさが込み上げて来たの。
ガイ様がいつも私につける、大好きを伝えるための、赤い印を襟足のホクロにつけるのを閃いたの。やったことはないけれど、いつもいっぱい付けてもらうのだから、私から付けてもいいのよね?
ガイ様がいつもするみたいに、ちゅ、と優しく口づけをして、その次は舌でぺろっと舐めたの。
「っ、ん、……アリー?」
「んん、いつもガイさまに、つけてもらう、だいすきなしるし、……アリーもガイさまに、つけたいの」
そう伝えると、口をすぼめて吸う。
ガイ様が、ん、と喉の奥で息を呑む音が伝わり、私の髪を褒めるように梳き撫でるのが、ふわふわと心地いい。ん、と私からも甘い声が抜けていく。
唇を離さないで吸い上げた後に、ゆっくり唇を離すと、大好きなしるしが薄く赤色についていたの。
もうひとつのホクロにも大好きな赤いしるしをつけ終わると、ガイ様が軽く顎を上げた。
「ここにも、出来るか?」
「んふふ、アリー……じょうずに、できます、よ?」
ガイ様が指差した場所に、吸いつく。またガイ様が、ん、と喉の奥で息を呑む。ガイ様の熱い指が髪に差し込まれ、私の甘い声が抜けていく。
ゆっくり唇を離すと、ちゃんと大好きなしるしを上手につけれたの。
「ガイさま、じょうずにできた、の。……んふふ、アリー、ガイさまのこと、だいだい、だーいすき、です……」
「俺もだ……」
アリー、と甘く掠れた声で私を呼ぶガイ様の瞳が、熱でゆらめくのが見える。
ガイ様の纏う色気に、頬が上気し、身体が熱くなる。
ガイ様が愛おしくてたまらなくて、甘く見つめる。
息が止まるような、甘くて深い口付けからはじまる二人の夜は、とてもとても長かったとか——。
おしまい
これで『くま好き令嬢は理想のくま騎士に触りたい』編はおしまいです♪
あとは、『てへぺろ妖精』と『くまさんのはちみつ』という結婚した後のふたつのおはなしを予定しています。
あと少し、あまあまなアリーとガイを楽しんでいただけたら嬉しいです……!
雨の季節になると、新居のプラムの木は沢山のプラムの実をつける。アリーシアがお酒を飲める年齢になると、プラムのシロップ漬けとプラム酒を漬けるのがアリーシアの、一緒に晩酌するのがガイフレートの楽しみになっていた——。
今日は、ガイ様と去年漬けたプラム酒がちょうど一年経つ日なの。
漬けたばかりのプラム酒は、最初は、透明。そこから氷砂糖がゆっくり溶けていき、数か月すると味わいのある琥珀色へと変わっていくの。その変化する様子を、瓶をゆさゆさと揺らしながら眺めるのが好きなのよね。
「美味しく出来ているかしら?」
「どうだろうな。アリーはソーダ割でいいのか?」
「はい……っ!」
とっても楽しみで、横に座るガイ様を見つめて勢いよく返事をすると、ガイ様が甘く目を細めるの。
「アリーは、元気でかわいいな」
大きな温かな手が髪を撫でると、優しく引き寄せられ、柔らかな感触が頭に落とされる。ちゅ、ちゅ、と甘い音を立てながら、額や耳に甘い感触が降りて来る。サイドにゆるく結わいていた髪のリボンがシュルっと解ける音に我にかえる。
「っ、ガイ様——アリー、プラム酒のソーダ割りが飲みたいです……」
ほんの少し口を尖らせて言うと、そのとんがり口に口づけを落とされてしまう。
結婚してからのガイ様は、いつも口づけを沢山して下さる。嬉しいのだけど、いつも恥ずかしくて顔が熱くなってしまうの。
赤くなった顔を両手で隠していると、ガイ様が笑った気配がしたわ。
指の隙間からガイ様をそっと覗くと、ガイ様はプラム酒のソーダ割りを作って下さるところだったの。
二つの丸みを帯びた薄いグラスに、たっぷりの氷を入れると、琥珀色に色づいたプラム酒をグラスの半分くらい注ぎ、グラスの内側に沿うように炭酸水をそっと注いでいく。
「ガイ様! アリーが混ぜます……っ」
「ああ、これはアリーの仕事だからな」
甘く目を細めるガイ様から慌てて目を逸らして、金色のマドラーを手に持つ。このマドラーは、ガイ様とお祭りの屋台で見つけたお気に入りなの。
くまさんが付いた金色のマドラーをグラスに入れて、くるくる混ぜるとカラカラ鳴る氷の音楽に合わせて、くまさんと泡が一緒に踊る。
氷を持ち上げるようにゆっくりかき混ぜたグラスをガイ様に渡し、二人で乾杯をした。
ひと口こくんと口に含むと、プラムの甘さとソーダの爽快感、そしてほんのりお酒の苦みが、ぱちぱちと口の中で弾ける。
「今年もとっても美味しいですね!」
「そうだな、今年のプラム酒も旨いな」
大きな温かな手が私の金色の髪を撫でる。
爽やかな甘酸っぱさが喉に心地よくて、こくこくと半分くらい飲んだグラスをガイ様が引き抜いた。
ガイ様は少し過保護なところがあるの。アリーはもう立派な大人なのにと思い、じとりとガイ様を見上げる。
「んん、ガイさま、とっちゃ、や、なの……! アリー、よってない、の!」
「今日はいつもよりペースが早かったから酔ったみたいだな……もう寝るか?」
「よってない、の! こども、じゃないから……まだ、ねない、のよ?」
頭をぽんぽんとあやすように撫でるガイ様は、私を酔っていると決めつけているの。
今日やらなくちゃダメなことがあるのに、まだガイ様の切ったばかりの髪の毛に触ってないもの。まだ眠くないし、眠らないの。
むうっと口を尖らせる。
ちゅっと音を立てて、私の尖らせた唇に口付けを落とされる。
丸くした目をぱちぱち瞬かせる。
「アリーはかわいいな」
ちゅっと甘い音を立て、優しく口づけを落とされる。啄ばむような甘い口づけに、慌ててガイ様の口許を両手でむぎゅっと塞ぐ。
「っ、だ、だめ……なの!」
ふるふると首を左右に動かすと、ガイ様が驚いたように大きく目を見開いたの。
「まだ、ぜんぜん……さわって、ないの!」
「朝も昼も触ってただろう?」
「もっと、さわるの……! ガイさまの、むかしは、もっとずっと、さわってたのに、いまは……アリーのじゃま、するから、ガイさま、いやなのっ!」
ガイ様がぴきっと固まった隙に、膝の上に跨がる。
ひらひらした繊細なレースが透ける夜着がはだけて、太ももが露わになるけど、やっと目の前に映ったガイ様の切りたての髪に触るのに夢中で気付かない。
「……ふふ、ちくちくなのー。ガイさまの、かみ、きもちいい、の。だいすき……」
ちくちくでシャラシャラな手触りにうっとりしていると、ガイ様の腕に力が篭り、きつく抱きしめられる。首筋に口づけや熱い吐息がかかる。
「もうっ、や、なの!」
ガイ様がぴたっと止まると、腕の力が緩むのがわかったの。
「——アリー……?」
困ったように眉毛を下げるガイ様の顔を、ぐい、と引き寄せる。
「けっこんしてから、ガイさま、ぜんぜん、さわらせてくれないから、……めっ、なの! アリーがさわると、ガイさまがアリーを、いっぱいさわって、アリーがね、さわれなくなるの……」
ガイ様にぷうと頬を膨らます。
結婚するまでは、切りたてのちくちくを触りたい放題だったのに、結婚してから寝起きにちくちくを触った日は、午後になるまでベッドから出れなくなるの。
ソファで寛いでいる時に、ちくちくに触った日は、ソファに押し倒され、ベッドに逆戻りするの。
心地よいお庭の木陰でちくちくに触った日は、くたりと力の抜ける甘い口づけを時間を忘れるくらいされてしまうの。
髪を切りたての日は、ずっと触りたいだけなのに。
「その、……俺のことがキライになったわけじゃないんだな?」
「ガイさまのことは、だいだい、だーいすき、よ」
「じゃあ、俺に触られるのが嫌とかはないか?」
「ガイさまに、さわられると、きもちよくて、ふわふわしちゃう、の」
ガイ様の太い首に両手を回して、ぎゅって抱き着いた。透けるような薄布の夜着からは、密着したガイ様の熱い体温が伝わる。
「アリー、ガイさまの、いっぱい……さわりたいの! アリーがいっぱいさわったら、ガイさまも、いっぱい、アリーにさわって、いいの……」
おねがい、と耳元に囁くように話すと、ごくりってガイ様の喉が鳴ったの。
「——約束だぞ」
「もうっ、アリーは、……よっぱらいじゃない、のよ?」
絶対だぞ、と念を押しながら笑みを漏らしたガイ様に、大きく頷いたの。
ガイ様が私の腰に腕をゆるく回して、どうぞというように力を抜いたわ。
「んふふ……、ちくちくで、シャラシャラなのー。だいすき、きもちいっ……」
両手でガイ様の頭を、えいっと胸に抱き寄せる。
まずは、手のひらでそおっとなぞる。それから、ゆっくり下から上に撫でるのを優しく何度もするの。上下に大きく動かした後は、境い目に引っ掛けるようにして細かく上下に動かしたりするの。撫でるように優しく、それから手の動きを一定にして速めてみるの。
「ちっくちく~シャラ、シャラ~んふふ、ちくちっく~」
久しぶりにいっぱい触るのが、嬉しくて楽しくて、止まらない魔法にかかった手で、ガイ様の髪の毛の唄を口ずさむの。
「……んふ、きもち、いい、です……」
ガイ様の瞳をうっとりと見つめて、気持ちよさを伝えるの。
酔っ払っているガイ様の顔も赤くて可愛らしい。
先程、ほどけた髪の毛をかきあげて、ガイ様の赤い額に、ちゅっと音を立てて口付けると、もう一度触りはじめる。
「ん、きもちいいです……、すき、すき……」
夢中で触れていると、左手の薬指の金色に光る『くまさんの指輪』が目に映る。
この指輪は、エトワル学園の卒業式の翌日に朝のベッドで左手の薬指にお引っ越しをしたわ。
思い出した途端に、ガイ様への愛おしさが込み上げて来たの。
ガイ様がいつも私につける、大好きを伝えるための、赤い印を襟足のホクロにつけるのを閃いたの。やったことはないけれど、いつもいっぱい付けてもらうのだから、私から付けてもいいのよね?
ガイ様がいつもするみたいに、ちゅ、と優しく口づけをして、その次は舌でぺろっと舐めたの。
「っ、ん、……アリー?」
「んん、いつもガイさまに、つけてもらう、だいすきなしるし、……アリーもガイさまに、つけたいの」
そう伝えると、口をすぼめて吸う。
ガイ様が、ん、と喉の奥で息を呑む音が伝わり、私の髪を褒めるように梳き撫でるのが、ふわふわと心地いい。ん、と私からも甘い声が抜けていく。
唇を離さないで吸い上げた後に、ゆっくり唇を離すと、大好きなしるしが薄く赤色についていたの。
もうひとつのホクロにも大好きな赤いしるしをつけ終わると、ガイ様が軽く顎を上げた。
「ここにも、出来るか?」
「んふふ、アリー……じょうずに、できます、よ?」
ガイ様が指差した場所に、吸いつく。またガイ様が、ん、と喉の奥で息を呑む。ガイ様の熱い指が髪に差し込まれ、私の甘い声が抜けていく。
ゆっくり唇を離すと、ちゃんと大好きなしるしを上手につけれたの。
「ガイさま、じょうずにできた、の。……んふふ、アリー、ガイさまのこと、だいだい、だーいすき、です……」
「俺もだ……」
アリー、と甘く掠れた声で私を呼ぶガイ様の瞳が、熱でゆらめくのが見える。
ガイ様の纏う色気に、頬が上気し、身体が熱くなる。
ガイ様が愛おしくてたまらなくて、甘く見つめる。
息が止まるような、甘くて深い口付けからはじまる二人の夜は、とてもとても長かったとか——。
おしまい
これで『くま好き令嬢は理想のくま騎士に触りたい』編はおしまいです♪
あとは、『てへぺろ妖精』と『くまさんのはちみつ』という結婚した後のふたつのおはなしを予定しています。
あと少し、あまあまなアリーとガイを楽しんでいただけたら嬉しいです……!
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