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序章

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 私はとある小説をネット上で連載していたが、人生何が起こるか分からないものだ。当時私が連載していた話の流れはWeb小説の定番になりつつあるが、まあそれはどうでもいいことなので一旦横に置いておく。
 私が言いたいのはその小説が出版社の目に留まり、書籍化されたうえに映画化にまで漕ぎ着けたという、それは宝くじで三億円当てたかのような、死に際の友人が夢に現れてお別れを告げてきたかのような、一週間連続で夜空に輝く流れ星を目撃したかのような、とりあえずまずあり得ない奇跡が私の身に起こったという事。

 語彙力もほとんどない私を、時代と運が小説家にしたのだ。

 はっきり言おう。私はどちらかといえば児童向けの本を出したいところだったが、どんなストーリーにしても白々しさが抜けないので早々に諦めた。読者はきっと求めていないだろうことは安易に予想できたし、向き不向きがあるだろうと納得したのだ。

 そこまでは良かった。
 そこまでは良かったのだ。
 酷いことに問題は後からやってきた。

 私が何をしたというのだろう。これはあんまりだと思う。仏の手には指と指の間に水掻きが存在していて、人々を一人も取りこぼさずに救い上げるらしいが私は人じゃないから救う対象じゃないということだろうか。南無阿弥陀仏と唱えたことだってあるのに、軽く裏切られたかのような心地だ。

 過去の私にいくら言っても無駄なのは分かっているが、それでも過去の私に会えるのなら私は暴れながら声を大にして私に訴えるだろう。




「その話は書くな。世に出すな」







 私はずっと後悔している。




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